日本人のピロリ菌感染率は加齢とともに増加し、60歳以上では約70%が保有するといわれています。
(参考書籍:これでわかる ピロリ除菌療法と保険適用 改訂版5版)
それだけ多いピロリ菌ですが、胃がんをはじめとする、様々な関連疾患をともなう可能性があります。
そのため未然に疾患を予防することが重要で、それには除菌が効果的とされています。
そこで今回は、ピロリ菌(H.pyloro)について
- 症状
- 検査
- 除菌方法
- 薬の副作用
という順で徹底的にまとめましたので、参考にされてください。
ピロリ菌とは?
ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリ(英語表記で「Helicobacter pylori」)が正式名称です。
グラム陰性微好気性の細菌に分類され、胃の粘膜に生息しているらせん形をした菌です。
胃の中に入ってきた細菌は胃酸によって殺菌されますが、ピロリ菌は持っている酵素により、胃の中にある尿素をアンモニアに変え、アルカリ性のアンモニアで胃酸を中和して胃酸の殺菌作用を逃れることが出来る手強い菌です。
ピロリ菌は、ロビン・ウォレン(John Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry James Marshall)によって発見され、2005年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
ピロリ菌になるとどんな症状があらわれる?
子供の頃(5歳頃まで)に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲み続けます。
しかし、子供の頃にかからなけらば生涯感染することは無いとされます。
ピロリ菌に感染すると炎症が起こりますが、この時点では痛みなどの症状はほとんどありません。
だからといって安心はできず、ピロリ菌が原因となり、様々な疾患につながると強い症状があらわれます。
関連記事)ピロリ菌の症状は?胃がんの原因になる?
ピロリ菌が原因となり起こりうる疾患
- 胃がん
- 十二指腸潰瘍
- 胃潰瘍
- 萎縮性胃炎
- 胃MALTリンパ腫
- 胃過形成性ポリープ
- 機能性ディプペプシア
- 胃食道逆流症
- 免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病
- 鉄欠乏性貧血・・・など
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ピロリ菌の検査は?
2013年2月にピロリ菌感染胃炎が保険適用となりました。
保険が適用される場合と、保険適用外の場合では、検査の方法が異なります。
保険適用の場合
まず胃カメラ検査で、慢性胃炎を確認する必要があります。
慢性胃炎が確認されたら、ピロリ菌感染の検査をします。
保険適用外の場合
胃カメラ検査をせずに、ピロリ菌の検査のみしたい場合は、保険適用外の自費診療となります。
ピロリ菌の除菌方法は?
上記で挙げたような関連疾患を予防する上でも、ピロリ菌陽性の方は除去治療をオススメします。
内服薬による治療が一般的です。
胃酸の分泌をおさえる薬として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)またはボノプラザンが、それに加え、2種類の抗生物質が一緒に処方されます。
これらを朝夕2回、7日間服用することで除菌できます。
しかし、中には除菌が失敗することもあります。
その場合、さらに追加して薬を服用することになります。
ピロリ菌除去による注意点
ピロリ菌の除去治療によりピロリ菌は消えますが、残念ながら未感染の状態になるわけではありません。
除菌していた方が胃がんになる可能性は低くなりすが、あくまでも低くなるだけで100%除去治療の効果が出るわけではありません。
実際、除菌後に胃がんが発見される事も稀ではありません。
ですが、それ以外のピロリ菌関連疾患はある程度予防することが可能です。
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ピロリ菌の除菌による副作用はあるの?
除去治療には、2種類の抗生物質(アモキシシリン・クラリスロマイシン)が使用されます。
しかし、中にはそれに伴う副作用が出ることもあります。
- 下痢や軟便
- 味覚障害
- 血液検査異常
- ペニシリンアレルギー
一度除菌してしまえば、再度感染することはまずなく、除菌後に菌が再出現する確率は年間2%以下と推測されています。
治療に当たり大切な点は、薬の飲み合わせに気をつけることで、治療を開始される前に主治医に現在飲んでいる薬の種類を明確に伝える事が重要です。
関連記事)ピロリ菌の除菌の副作用は?
(参考書籍:病気が見える 消化器vol.1)
まとめ
- ピロリ菌は、胃の強い酸の中でも生きることができる悪い菌
- 一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲み続けるが、子供の頃にかからなけらば生涯感染することは無い
- ピロリ菌に感染すると炎症が起こるが、この時点では痛みなどの症状はほとんどない
- 保険適用で治療をする場合は、まず胃カメラ検査で慢性胃炎を確認する必要がある
- 保険適用外で治療をする場合は、胃カメラ検査をする必要はない
- ピロリ菌の除去治療により、ピロリ菌は消えるが、未感染の状態になるわけではない
- ピロリ菌の除去治療による副作用として、下痢や血液検査異常、ペニシリンアレルギーなどがある
ピロリ菌は、保有しているだけで様々な病気の原因となります。
保険も適用となるので、まずは検査を受けてみることをオススメします。