多くの芸能人が患ったことでも有名な食道がん、医学の進化にともない、早期発見・早期治療を行えば生存率が上がるといわれるようになってきました。
ですが、早期発見できなければ進行が早いため、予後不良となります。
今回は早期治療の鍵ともなる検査方法や治療、手術について徹底的に調べましたので詳しくお話ししていきます。
食道がんとは?
食道に発生する上皮性悪性腫瘍です。
食道の中でも中心に位置する胸部中部食道に最もよく発生し、60歳以上の男性に特に多いといわれています。
食道がんの症状やステージ、原因についてこちらをご覧ください。→食道がんの症状やステージは?徹底的にまとめました
食道がんの検査とは?
まずは問診・内視鏡検査・食道造影を行い、疑わしい所見を確認出来れば、さらなる検査を行い確定診断を行います。
- 内視鏡
- 超音波内視鏡
- 病理検査
- 食道造影
- CT
- PET
食道がんの場合、早期だと無症状なことが多い為、早期発見のためには定期的な人間ドックが有用です。
がんの診断には進行度を判断することも重要となります。
内視鏡検査
胃カメラで直接消化管粘膜を観察する方法です。
潰瘍や隆起、狭窄(間が狭くなっている場所)や数、大きさやある程度の浸潤の深さを確認できます。
症例 60歳代男性
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)では下部食道に壁不整を認めており、食道癌を疑います。
食道造影検査
バリウムを飲み、造影剤の通過をX線で確認します。
食道がんの場所、大きさ、食道内腔の狭さなどがこの検査で分かります。
上部消化管造影(バリウム検査)で下部食道〜腹部食道に壁の不整を認めています。
超音波内視鏡検査
腹部と頸部(首)のエコー検査を行います。
がんの壁深達度診断(浸潤の度合い)やリンパ節転移の検索に用いられ、がんの進行度の判断に有用です。
病理検査
内視鏡検査の際に採取した組織にがんが存在するかどうかを調べます。
また、どのような種類のがん細胞かを詳しく顕微鏡で確認しますが、食道では日本では扁平上皮がんが最も多くなっています。
CT検査
気管・気管支・大動脈・肺・肝臓・心臓などが食道の周囲にはあり、がんの転移や浸潤を輪切り画像で細かく確認します。
腹部造影CTでは下部食道に全周性の壁肥厚を認めていることがわかります。隣接しているのは胸部大動脈ですが、明らかな浸潤を疑う所見は認めません。
PET検査
全身のがんを調べる検査です。
食道がんの周辺臓器への浸潤や遠隔転移を調べる際には、CTとPETを融合したPET/CTが有用です。
FDG-PET検査(上の画像右側)では、腹部造影CT検査で指摘された下部食道の壁肥厚にほぼ一致して異常な集積を認めています。
※ちなみに、胃壁への集積は生理的にも認められるため、これだけで胃にも腫瘍があるとは言えません。
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食道がんの治療は?
- 内視鏡的治療
- 外科的治療
- 化学放射線療法
の3つの治療方法に分けられます。
この治療方法は、進行度・年齢・パフォーマンスステータスなどの全身状態・合併症の有無・患者の希望などによって決まります。
パフォーマンスステータスとは?
患者の全身の状態を日常生活で行える動きのレベルによって5段階で決められています。
グレード0 | 無症状で、行動に制限もない状態。 |
グレード1 | 肉体労働を行うと軽度の制限が出るが、日常生活には差し支えない状態。 |
グレード2 | 歩行や簡単な動作はできるが、介助を必要とする時もあり、日常の50%は横になることなく生活できている。 |
グレード3 | 身の回りのことはある程度できるものの、介助を必要とすることもあり、50%は就床している。 |
グレード4 | 常に何をするでも介助がいる状態で、寝たきりの状態。 |
内視鏡的治療
早期の食道がんに対して有用で、がん組織を切除し食道そのものを残すことができるというメリットがあり、予後の回復も早く入院期間も短くて済みます。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
- 内視鏡的粘膜剥離切開術(ESD)
という方法があります。
内視鏡的粘膜切除術
英語表記でEndoscopic Mucosal Resection、略語でEMRといいます。
10〜15mm以下の一括で切除可能な病巣や、多発する小さな病巣などに有用です。
内視鏡的粘膜剥離切開術
英語表記でEndoscopic Submucosal Dissection、略語でESDといいます。
消化管の内腔から粘膜層を含めた粘膜下層までを内視鏡を使い剥離し、病巣を一括切除する方法です。
関連記事)胃がんの内視鏡手術の適応は?
外科的治療(手術)
最も一般的な食道がんの治療方法は手術で、ステージⅠ〜Ⅲまでが適応となります。
- 病変部位を含めた食道切除
- リンパ節を含めた周辺組織も同時に切除(3領域リンパ節郭清)
- 他の消化管を使用し、食道再建
が行われますが、食道がんがどの部位にできたかによって術式がことななります。
また手術には、5-FU+シスプラチン(抗がん剤)による術前化学療法の併用が標準的治療となっています。
化学放射線療法
- 手術を望まない場合
- 高齢者
- 遠隔転移
- 周辺臓器への直接浸潤
- 食道気管瘻(しょくどうきかんろう)
など、手術による切除が不可能な場合、化学放射線療法をおこないます。
またそれ以外に、患者の前身の状態や希望に合わせ、放射線療法・ステント治療・栄養療法・ベストサポーティブケアを選択します。
食道と気管支の間に瘻孔(読みは「ろうこう」意味は「粘膜や臓器の組織に、炎症などによって生じた管状の穴」)が形成されてしまったことにより、唾液や胃液が肺へと流れてしまう疾患です。
食事が詰まって飲み込みにくいといった嚥下障害や、胸痛、発熱などの肺炎症状が現れます。
副作用の強い治療を行わず、症状を緩和する治療のことをいう。
best supportive careの頭文字をとって、BSCと略されることもあります。
最後に
- 食道がんとは、食道に発生する上皮性悪性腫瘍
- 内視鏡・超音波内視鏡・病理検査・食道造影・CT・PETなどの検査方法がある
- 内視鏡的治療・外科的治療・化学放射線療法という治療方法があり、患者の状態や希望に合わせて選択する
早期発見のためには日頃から自分自身の体に注意をし、定期的に人間ドック等の健康診断を行うことが大切です。
また日々の生活の中でも、食道がんのリスクを少しでも減らすため、飲酒や喫煙、食事内容にも気をつけたいですね。