人間ドックや健康診断で受けた胃のバリウム検査や胃カメラでポリープが見つかることはよくあります。
- 「胃底腺(いていせん)ポリープがたくさんあると言われた。」
- 「穹窿部(きゅうりゅうぶ)にポリープが多発していると言われた。」
- 「胃体上部、胃体下部にたくさんのポリープがあると言われた」
- 「バリウムで多発胃ポリープを指摘された。」
- 「経過観察でいいと言われけど・・・」
- 「経過観察も必要ないと言われたけど・・・」
もしかしたら放置しておいたらがんになる(癌化する)のではないか?
そんな心配をしておられる方もおられるでしょう。
今回は、胃のポリープについて
- 画像
- 種類
- 治療の必要性
などをまとめました。
バリウム検査でポリープが多発の画像!
胃体部を中心に、多数のポリープを認めています。
2011年放射線科診断専門医試験問題46より引用。
このポリープから癌になることもあるのでは?
胃のポリープには2種類ある!
- 胃底腺ポリープ
- 胃過形成性ポリープ
の2種類です。
胃底腺ポリープとは?
このうち胃底腺ポリープ(FGP:fundic gland polyp)は、上のイラストの胃の体部から穹窿部のいわゆる胃底腺領域と呼ばれるところに見られる立ち上がりの明瞭な5mm前後のポリープです。
胃底腺ポリープは、胃底腺の過形成(過誤腫とも考えられている)といわれています。
背景の胃の粘膜は綺麗であり、萎縮性変化や腸上皮化生を認めず、ピロリ菌感染もありません。
がん化することがなく、内視鏡などで生検して精査したり、フォローの必要もないといわれています。
この胃底腺ポリープは、圧倒的に女性に多く見られます。
症例 30歳代女性 健診 胃底腺ポリープ
胃X線造影検査
健診の胃X線造影検査(胃バリウム検査)で、胃底部から胃体部を中心に多数の胃底腺ポリープを指摘されました。
上部消化管内視鏡検査
内視鏡検査においても同様の所見を認めました。
典型的な胃底腺ポリープの所見であり、治療はされませんでした。
胃過形成性ポリープとは?
一方で、胃過形成性ポリープは、背景の胃の粘膜に、ピロリ菌感染があり、萎縮性胃炎があります。
ピロリ菌感染に伴う腺窩上皮の過形成です。
こちらはサイズが大きくなり、2cm以上のサイズでは、時にがん化することがあります。
原則経過観察を必要とし、サイズが1cmを超えるものは切除することを考えます。
また、背景にあるピロリ菌を除菌する治療を行います。
つまり
- ピロリ菌感染を示唆する萎縮性胃炎がある胃でのポリープなのか
- ピロリ菌感染がない綺麗な粘膜の持つ胃でのポリープなのか
で方針が大きく変わるということです。
胃底腺ポリープと過形成性ポリープの違いは?
臨床画像Vol29,No.2,2013 P155図13を引用改変
胃底腺ポリープと過形成性ポリープの違いはイラストのように、
- 胃底腺ポリープ:胃底腺の過形成
- 過形成性ポリープ:表層である、胃腺窩上皮の過形成
です。
大事なのはピロリ菌感染の有無
がん化する胃過形成性ポリープは、ピロリ菌感染があり、結果萎縮性胃炎を起こし、そこに生じます。
ですので、ピロリ菌感染の有無を見極めることが、この両者のポリープを区別する上で重要となります。
ピロリ菌感染の有無は、複数の検査で調べることができます。
バリウム検査の画像からピロリ菌感染の有無はわかる?
ピロリ菌に感染していないバリウム検査の画像は、上にあげた画像のように、簡単にいうと
- 胃の壁が細く、なめらかで直線的であること
- 均一に造影剤が付着していること
という特徴があります。
臨床画像Vol29,No.2,2013 P155より引用。
また胃がんのABC検診の中で、ピロリ菌感染がない胃と考えられるものはA群の頻度が多いので、A群であることもピロリ菌感染がないことを示唆する一つの指標になると言われています。
最後に
ポリープがたくさんあると言われるとびっくりするかもしれませんが、ピロリ菌感染がない胃底腺ポリープでは、精査やフォローの必要さえないといわれています。
またこれらのポリープの場合、あってもわざわざポリープありと書かないこともあります。
腎臓や肝臓などにできる嚢胞などと同じように、基本的にフォローの必要もないものなのです。