頭の後ろ部分、後頭部に位置する後頭葉は、転倒や事故等によっても衝撃を受けやすい部位でもあります。
では、そんな後頭葉にはどんな働きがあり、衝撃を受けた際どんな症状があらわれるのでしょう?
今回は、後頭葉について
- 部位
- 働き
- 障害を受けた際に起こりうる症状
など、詳しくお話ししていきたいと思います。
後頭葉とは?
脳は、
の4つの葉(領域)に分かれています。
後頭葉は、下の図のように、その最も後下方に位置する部分で、後頭後頭溝の境界は不明瞭です。
後頭葉は、一次視覚野(V1)から五次視覚野(V5)に分類されます。
V2~V5はV1の前方にあり、合わせて視覚前野とも呼ばれます。
後頭葉の働きとは?
後頭葉には、一次視覚野と視覚前野(視覚連合野)があり、色や形情報など、視覚とその認識に関与します。
視覚情報として、網膜から入った情報は視神経へ伝わり、外側膝状体から視放線へ、そしてV1、V2へ伝わった後、「Where(奥行き・位置など)」と「What(色・形など)」に分かれます。
「Where」では、背側視覚路にて、V3領域にて奥行きや位置など、V5領域にて動きとして、頭頂連合野にその情報が伝わり、遠くにいるな(距離感)、右から左へ向かっているなという理解につながります。
「What」では、腹側視覚路にて、V4領域にて色や形など、側頭連合野へ伝わり、赤い車だなという理解につながります。
一次視覚野
視覚情報から色や形、動きなどの情報を抽出し、高次の視覚野へと送る働きがあります。
視覚前野
一次視覚野からの情報を処理し、それらを統合し、物体の認識や空間認知を行う働きがあります。
後頭葉に障害を受けた際に起こりうる症状とは?
- 見えていないのに「見えてる」と主張するAnton症候群(アントン症候群)
- 見えているのに認識できない視覚前野の障害で起こる症状
とに分けられます。
Anton症候群(アントン症候群)
見えていないのにもかかわらず、「見えている」かのような錯覚をし、そう主張するような現象が出ることもあり、それをAnton症候群といいます。
しかし、両側の一次視覚野が広汎に障害されると、完全な盲(皮質盲)となります。
極めて稀ではありますが、見えていないのに見えると同様に、両側の今日は障害により皮質聾(ひしつろう)担った患者が、ろうを否認することがあり、これも同様にAnton症候群に含まれます。
視覚前野の障害
視覚前野の障害によって、
- 物体認識
- 相貌失認
- 色彩失認
- 視覚性運動盲症状
があらわれます。
これらは、側頭連合野や頭頂連合野の障害によっても見られます。
物体認識
見ただけでは、それが何であるのか分からないが、視覚以外の感覚を使えば分かる。
相貌失認
身近な人や、よく知っている人であるにも関わらず、顔を識別できなくなる症状があらわれます。
しかし、声を聞けば分かることもあります。
色彩失認
色を識別できず、全てモノクロ状態でしか見ることが出来なくなります。
これは主にV4の障害で生じます。
視覚性運動盲
動いているものを認識出来ず、見えているものが静止画として見えます。
紙芝居のようなコマ送りのように見え、主にV5領域が障害されたことによって生じます。
もっと遠くにいると思っていたものが、突然目の前に現れたように見えてしまう症状です。
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P24・25
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P42
最後に
- 後頭葉は、最も大脳の後下方に位置する部分
- V1~V5領域に分けられる
- 視覚とその認識に関与する
- Anton症候群や視覚前野の障害症状が現れる
眼球に直接の損傷がなくても発生する視覚形成の症状、まずは眼の障害を疑うことも多く、鑑別には視覚だけでなく、認識機能の異変を感じるかどうかです。