骨密度は、骨の密度(骨量)が低下しているかどうか、その程度を調べる検査です。
人間ドックや健康診断でも受けることができますが、実際この骨密度検査について詳しくご存知ない方も多いと思います。
そこで今回は、骨密度検査(英語表記で「bone mineral density」略語でBMD)について
- 骨密度の検査方法
- 正常値
- わかること
- 受けるべき人
- 検査料金
など、詳しくご説明したいと思います。
骨密度の検査の方法は?
骨密度とは、骨の強さを判定するため1つの目安となるもので、検査の方法としては、主に以下の3つが行われています。
- DEXA法
- MD法
- 超音波法
DEXA法(Dual-energy X-ray Absorptiometry:デキサ法)
もっとも標準的な骨密度の検査方法が、このDEXA法です。
エネルギーの低い2種類のX線を骨に照射し、骨と他の組織との吸収率の差で骨密度を計算する方法です。
一般には代謝が盛んな脊椎の一部や腰椎(腰の骨)で骨量の変化を測定しますが、大腿骨近位部(太ももの付け根)、手の骨など、ほぼ全身の骨密度を正確に測定することが可能です。
- 腰椎
- 大腿骨近位部
の両方を用いて評価することが望ましいとされています。
これらの部位での測定が困難である場合は、前腕の骨である橈骨骨幹部(1/3遠位部)の骨密度を用います。
橈骨骨幹部(1/3遠位部)の骨密度を測定する動画はこちら。
ただし、この方法は、治療反応が遅いため、治療後のモニタリングとしては不適といわれます。
MD法
X線を使って、手の第2中指(甲側)の根元の骨と厚さの異なるアルミニウム板を同時に撮影して、骨とアルミニウムの濃度を比べる方法です。
上記のDEXA法に比べて簡単かつ安価な測定法ですが、正確性に欠けるという難点があります。
超音波法(QUS)
かかとの骨で調べます。
測定部位は主に踵を対象としており、超音波の伝播速度と減衰率により骨を評価する方法であり、骨密度を測定しているわけではありません。
しかし、自治体が実施している骨粗鬆症検診では、
- 特殊な施設が不要なこと
- 簡単に検査が行えること
に加え、
- X線を使用しないので、放射線被爆の心配がなく妊娠中の人も受診が可能
などの理由でこの方法が多く行われています。
骨密度検査の正常値は?
日本骨代謝学会の診断基準では、DEXA法により測定した骨量がYMAの何%に相当するかによって以下のように判定されます。
- YAMの80%以上 正常
- YAMの70以上80%未満 骨量減少
- YAMの70%未満 骨粗しょう症
YAMとは?
20~44歳の健康な女性の骨密度を100%として、現在の自分の骨密度が何%であるかを比較した数値のことです。
ちなみに、YAMは「Young Adult Mean」の略で「若年成人平均値」を意味します。
骨は成人に近づくほど丈夫になり、20代をピークに密度が減少しはじめますので、最も骨密度が高い年齢層を基準に用いています。
上の図は60歳代の女性の橈骨遠位で測定したDEXA法の結果です。
20~44歳の健康な女性の骨密度を100%として、62%であることがわかります。
70%未満で骨粗鬆症と診断され、治療開始となります。
骨密度の検査で何がわかる?
検査することで、骨量(骨の中身としての組織が十分あるか、組織に隙間がないか)が低下していないかを調べることが出来ます。
骨を構成しているカルシウムなどの量を測り、骨の強度を調べる検査ですが、骨の強度には、骨密度だけでなく骨質(骨の質)も重要となります。
カルシウムが骨質の高い骨をつくことは知られていますが、骨中のコラーゲンの量や質も大切です。
加齢に伴って骨密度が低下すると、骨粗しょう症という骨の中がスカスカな状態になり、骨質が低下することで、骨折しやすくなりますので、骨密度を定期的に測定することが大切です。
骨密度の検査は何歳から?
骨粗鬆症は、男性に比べ、女性に多い特徴があります。
女性は40歳を過ぎたら定期的に検診を受けるのがオススメです。
自治体では、40歳以降の女性を対象に5年ごとに骨密度の検診を行う例が多くなっていますし、閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいとされています。
とくに、50歳を過ぎたら女性は定期的に骨密度測定を受けるのは大切です。
骨密度の検査はどんな人が受けるべき?
また、以下に該当する方も、骨粗鬆症のリスクが高いとされていますので検査を受けられることをオススメします。
- 閉経後の方、または治療により生理を止めている方
- 若年期生理不順であった方
- 運動不足、または若年期に過度の運動をされていた方
- 常習喫煙、過度のアルコール摂取をされている方
- 甲状腺機能亢進症と診断された方
女性は50歳を過ぎ閉経を迎えると、丈夫な骨をつくり、それを保持する役割を担っている女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に低下し、それに伴って骨の量が急激に減少してしまい、骨粗しょう症になりやすいとされています。
この骨粗しょう症は、自覚症状が無く知らないうちに進行することがほとんどです。
自分の骨がもろくなっているかどうかは、外見からでは判断できませんし、進行すると軽い転倒でも骨折する危険性が出てきます。
骨折を起こし、寝たきりになってからでは遅いので、定期的に骨密度測定を受けて、自分の骨の状態を常に意識しておくのは重要です。
骨密度検査の料金は?
- DEXA法・・・3,600円
- MD法・・・1,400円
- 超音波法・・・800円
全額負担で、上記ほどの価格になりますが、精度の高い検査方法として、DEXA法がオススメです。
骨粗しょう症の疑いがあれば保険適応(3割負担)で検査を受けることが可能です。
DEXA法の料金〈保険適用〉
腰椎のみ
- 自費総額=3,600円
- 1割負担=360円
- 3割負担=1,080円
腰椎+大腿
- 自費総額=4,500円
- 1割負担=450円
- 3割負担=1,350円
前腕
- 自費総額=1,400円
- 1割負担=140円
- 3割負担=420円
※初診の場合、その他使用する薬剤や機器により料金は多少変わります。
最新情報を施設までお問い合わせください。
また、市町村の健康診断で受ける場合は、女性のみ対象年齢(市町村が定めたもので、40・45・45・50・55・60・65・70歳)の場合、無料で受けることもできます。
骨折のリスクは骨密度だけ?
骨密度が低いことは骨折のリスクであることはお分りいただけたと思います。
実は骨密度以外にも骨折のリスクは以下のものがあります。
該当する場合は、そうでない方に比べて骨折のリスクが高いことを認識して、予防に努めたいものです。
- 加齢
- 女性
- 骨折の既往がある人
- 両親に大腿骨近位部の骨折歴がある人
- 低体重
- 喫煙している人
- 過度なアルコール摂取をしている人
- ステロイド薬を使用している人
- 関節リウマチの人
- 続発性骨粗鬆症
- 身体活動が少ない人
※続発性骨粗鬆症とはベースに別の疾患があり、それが原因で骨粗鬆症になるものです。
ベースにある疾患は甲状腺機能亢進症・性腺機能不全・摂食障害・原発性副甲状腺機能亢進症などがあります。
便利な骨折のリスク評価ツールFRAX
WHOが発表した骨折リスク評価ツールがFRAX(Fracture risk assessment tool)です。
- 性別
- 体重
- 身長
- 骨折歴
- 両親の大腿骨近位部骨折歴
- 現在の喫煙
- 糖質コルチコイド(ステロイド薬の使用)
- 関節リウマチ
- 続発性骨粗鬆症
- アルコール
- 骨密度
を入力すると、個人の今後10年間の骨粗鬆症性骨折と大腿骨近位部骨折の骨折確率を計算することができます。
骨密度の値がわからなくても、リスク因子のみで推定してくれます。
骨折高リスクのスクリーニングに有効と言われており、治療をするかどうかを決める指標として利用されています。
ぜひ一度お試しください。
参考文献:四訂版 病院で受ける検査がわかる本P148・149
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP216・217
参考文献:検査のしくみ 検査値の読み方P134
参考文献:きょうの健康 検査でわかることP139
参考文献:新 検査のすべてがわかる本P199
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P182・183
最後に
骨密度が低下することで、骨粗しょう症になり、場合によっては尻もちをついたぐらいで寝たきりになるほどの骨折をする可能性が高くなります。
上記でも述べましたとおり、女性は閉経による女性ホルモン分泌の低下に伴って、骨の量が急激に減少することから、男性より2~3倍多くの人が骨粗しょう症になっています。
骨折をする事で、場合によっては歩けなくなる事もあるため、そのまま寝たきりになることもあるので注意が必要です。
その様な事にならないためにも早期に発見して、治療を始めることが重要になり、その意味でも骨密度を検査されるのは大切です。