尿に含まれる糖を尿糖といいますが、尿検査で糖が出ると何か病気などの問題があるのか心配になる方多いですよね?

実際、尿糖の基準値はどれくらいで、異常値となるとどんな病気の可能性があるのでしょうか?
尿糖は糖尿病を知る上での重要な検査でもありますが、それ以外にもわかる病気があります。

今回は、尿検査でわかるについて

  • 陽性の場合考えられる病気
  • 基準値
  • 尿糖測定での注意点

などを解説したいと思います。


尿糖とは?

上で述べたように尿糖とは、尿中に含まれる糖のことであり、ブドウ糖(グルコース)が主体となります。

そして、尿中に排泄される糖を測定する検査は尿糖測定と呼ばれ、前回の排尿から今回の排尿までの血液状態がわかる検査となります。

つまり、血糖値を直接測定しなくても、尿糖を測定することで食後に高血糖状態があったかどうかを間接的に知ることが可能となります。

ですので、尿糖測定は基本的に、糖尿病のスクリーニングとして行われます。

検査では、尿糖の有無を調べるいわゆる尿検査である定性検査(試験紙法)、その他、尿糖の量を調べる定量検査(ブドウ糖酸化酵素法)が行なわれます。

    尿糖が陽性となる原因は?

    尿糖が陽性になる原因として、病的な場合と、病的でない場合があります。

    尿糖が陽性となりうる病的でない場合の原因は?

    病気ではないのに尿糖が陽性となるケースとして以下の場合があります。

    • 妊娠
    • 検査前に食事をした

    尿糖が陽性となりうる病的な原因は?

    尿糖が陽性となる原因には以下の病気があります。

    などが考えられます。

    つまり、尿糖=糖尿病というわけではないのです。

    (※糖尿病の診断には、血糖・HbA1cなどの血液検査も必要となります。)

    血液の中に糖が増えすぎたために尿細管での再吸収が鈍って起こる真性糖尿病、腎臓機能の低下により血液の中の糖が正常値以下になって起こる腎性糖尿病が考えられます。

    尿糖の基準値は?

    そもそも、基準値はどれくらいなのかも気になりますよね?

    尿糖を測る検査として、定性検査と定量検査がありますので、分けて説明します。

    定性検査

    いわゆる尿検査である試験紙法において尿糖は、

    −(陰性)

    であれば正常です。

    健康な人は100ml中に2~30mg程しか検査しても出てきませんので、この程度の数値なら試験紙法では検出されず、陰性で正常値となります。

    陽性ならば、尿に糖が基準値より多く含まれていることがわかりますが、その程度により

    • 尿糖1+
    • 尿糖2+
    • 尿糖3+
    • 尿糖4+
    • 尿糖5+

    と5段階に判定されます。

    定量検査

    • 20〜30mg/dL
    • 40〜80mg/day

    が基準値となるのです1)

    なお、最近では定性・定量の双方をみる判定量法が普及してきました。

    尿糖測定で注意すべき点は?

    尿糖を測定する上での注意点としては、

    • 偽陰性がある
    • 妊娠により尿糖が出ることもある
    • 採取後直ちに検査する必要がある

    という点が挙げられます。

    それぞれについて、説明しますね。

    偽陰性がある

    実際は尿糖があるのに、検査では正常のように出てしまうことを偽陰性(ぎいんせい)といいます。

    尿試験法において、

    • アスコルビン酸を含む尿
    • ケトン体(40mg/dl以上)を含む尿
    • 高比重の尿

    これらの場合、偽陰性が起こることもあるので注意が必要です。

    また、これ以外でも、食後2時間尿が最も尿糖は出やすく、空腹時尿では軽い糖尿病の場合見逃されることもあります。

    妊娠により尿糖が出ることもある

    妊娠中の定期検診では、毎回検査があり、重要なものというのも感じますよね?

    妊娠により一過性に尿糖が陽性となることがあります。

    ここで注意するのは、妊娠中に見つかった尿糖が

    • 妊娠を契機に一過性に出ているだけ
    • 妊娠前から糖尿病があった

    このいずれであるかを見極める必要があるということです。

    妊娠中の糖尿病は、妊婦だけでなく胎児にまで影響するので、注意が必要となります。

    採取後直ちに検査する必要がある

    糖尿病患者の場合、

    • 尿路感染を合併しやすい
    • 尿ケトン体が陽性になりやすい

    という傾向があります。

    ところが、尿中の細菌は尿糖をエネルギーとして利用するため、時間が経つにつれ尿中のブドウ糖は少なくなります。

    また、ケトン体は揮発性が高い性質もあるので、時間が経つとこの場合、尿中のブドウ糖もケトン体も正しい検査結果が出ないことにもなるのです。

    4℃で保存しても細菌は増殖しますので、生化学免疫項目を検査する場合は、測定に影響しない保存剤を入れたり、凍結保存することが望ましいとされています。

    参考文献:
    今日の臨床検査 2011ー2012 P1)31
    最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P56〜59・154・155
    最新 検査のすべてP18
    よくわかる検査数値の基本としくみP50・51

    最後に

    尿糖について、ポイントをまとめます。

    • 糖尿病のスクリーニングとして行われる
    • 定性検査で陰性ならば正常
    • 定量検査では、20〜30mg/dL・40〜80mg/dayが基準値
    • 陽性の場合、糖尿病・急性膵炎・肝障害・肝硬変・ダンピング症候群・膵臓癌・甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫・Cushing症候群・先端巨大症・腎性糖尿・食事性糖尿の可能性もある
    • 偽陰性がある・妊娠により尿糖が出ることもある・採取後直ちに検査する必要があるという点に注意

     

    尿糖測定は、採血を必要とせず、痛みも伴わずに気軽に測定できるメリットがあります。

    血糖値が測定時の瞬間的な数値なのに対し、尿糖値は尿が膀胱に溜められてから排泄されるため、前回の排尿から実際の測定までの平均的な数値となります。

    最近では食後高血糖が重要視されていますが、食後の血糖値は変動が速く、血糖測定でこれを確認するためには頻回測定の必要があり、痛み・費用が掛かる問題点もあるのです。

    その点尿糖測定の場合は、食事直前に排尿し、食後1~2時間の尿を測定するだけで腎閾値を超えるような食後高血糖状態があったかの有無が簡単にわかります。

    様々なシチュエーションで行うことの多い尿検査。

    しっかりどのような検査なのかを知ることで、注意できることも多いですね。




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