血色素量が低い、高いと人間ドックや健康診断で指摘されることがあります。
かくいう私もやや低めで、指摘されたりされなかったりをここ数年繰り返しています。
血色素量は、赤血球に含まれている赤い色素(ヘモグロビン)の量のことです。
ヘモグロビンは赤血球に含まれており、肺で酸素と結合し全身に運ぶ働きがあります。
赤血球数が「異常なし」でも、血色素量(ヘモグロビン量)が不足していると酸素の運搬能力が衰えるために貧血になります。
そのため、貧血の有無の判断には、まずは血色素量(ヘモグロビン量)のチェックが重要なポイントとなります。
今回は、
- 血色素量(Hb)の基準値
- 血色素量(Hb)が低いとき、高いときの原因やどのような病気の可能性があるか、
- またその際に起こりうる症状
についてまとめました。
血色素量(ヘモグロビン量)とは?
血色素量(ヘモグロビン量)とは何かを見る前に、血液を流れる赤血球について見てみましょう。
赤血球は下のような中心が凹んだ形をしており、内部にヘモグロビンをびっしりと含んでいます。
ヘモグロビン(血色素)とは?
ヘモグロビンはヘム(鉄)とグロビン(タンパク質)に分けることができ、このヘムが酸素を運ぶ役割を果たします。
つまりヘモグロビンは酸素を運ぶ重要な働きを果たすということです。
では、血色素量(ヘモグロビン量)とは?
さて、血色素量(ヘモグロビン量)、血色素濃度(ヘモグロビン濃度)とは同じものですが、これを理解するには下のイラストを見てください。
血液は血漿と呼ばれる液体の部分と、血球から成ります。
この一定体積中に占める、赤血球の中のヘモグロビンの量のことを血色素量(ヘモグロビン量)、血色素濃度(ヘモグロビン濃度)と言います。
具体的には1dlあたりのヘモグロビンの量(つまり濃度)で表します。
血色素量(Hb)の正常値・基準値は?
一般に血色素(ヘモグロビン)は1dl(100ml)中に12-17g含まれており、かなりの量のタンパク質です。
したがって、
- 成人男性では13-17g/dl
- 女性では12-15g/dl
が正常と判断されます。単位は、g/dlです。
また、赤血球数、ヘマトクリット値は、ヘモグロビン量検査の中でも、最も重要な検査です。
この検査データがもっとも信頼性が高く、病気の関わりが敏感に反映されるからです。
この3つの赤血球検査の数値を一定の計算で統一して算出したのが赤血球恒数とよばれるものです。
その中で日常において特に大切なのが、
- 平均赤血球容積(MCV)
- 平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)です。
前者はヘマトクリット値を赤血球数で割った値で、これによって赤血球の大小がわかります。
また後者は、単位容積に赤血球の中にヘモグロビンがどれほど詰まっているかをみるもので、隙間のある状態は貧血が懸念されます。
正常値は、
- 平均赤血球容積(MCV)80-100fL
- 平均赤血球血色素濃度(MCHC)26-32%
- (平均赤血球色素量26-32pg)
となります。
ヘモグロビン濃度と赤血球数から貧血とわかり、さらに、MCV、MCHCからその原因を考えていく診断の流れになります。
血色素量(Hb)が低いときに考えられる病気・原因は?
WHOによると
- 成人男性:13g/dl未満
- 成人女性・小児(6〜14歳):12g/dl未満
- 妊婦・幼児(6か月〜6歳):11g/dl未満
と血色素量が低いときには、貧血と診断されます。
ところで、なぜ貧血が起こるのでしょうか?
赤血球の寿命は120日と言われており、日々赤血球は骨髄で作られては寿命を迎えます。
つまり、
- 赤血球を作る骨髄に何らかのトラブルがあって、赤血球をうまく作れない。
- 作られた赤血球が失われる。(出血する。壊される。)
と言った場合に貧血が起こるということです。
有名な例では、女性の場合で生理のときの出血が多い人や、性別問わず痔がある人は、血液を失いやすいので貧血になりやすいとされます。(この場合は上の場合の2に該当します。)
赤血球をうまく作れない病気・作っても壊される病気(血液疾患)
- 再生不良性貧血
- 骨髄異形成症候群(読み方は「こつずいいけいせいしょうこうぐん」)
- 赤芽球癆(読み方は「せきがきゅうろう」)
- 巨赤芽球性貧血(読み方は「きょせきがきゅうせいひんけつ」)
- 鉄欠乏性貧血
- 鉄芽球性貧血
- サラセミア
- 溶血性貧血
これらの血液疾患が原因となります。
出血により赤血球が失われる病気・原因
- 消化管潰瘍(主に胃潰瘍・十二指腸潰瘍)
- 子宮筋腫
- 過多月経
- 痔核 など
が挙げられます。
原因としてはこれらが最も多くなります。
一度に大量出血して貧血やショックになる原因としては、
- 外傷
- 食道静脈瘤破裂
- 胃静脈瘤破裂
- マロリーワイス症候群
- 大動脈瘤破裂
- 子宮外妊娠破裂
などが挙げられます。
一度に大量出血する場合は命に関わることがあり、大量に輸血を行ったり、緊急で止血術が行われることがあります。
基礎疾患が原因で起こる二次性貧血
何らかの病気を持っていてそれが原因で貧血を起こす場合を二次性貧血と言います。
その原因としては、
- 慢性感染症
- 膠原病
- 悪性腫瘍
- 腎臓の病気
- 慢性的な肝臓の病気
- 内分泌腫瘍
- その他
が挙げられ、それぞれ以下のような病気が挙げられます。
慢性感染症
- 結核
- 亜急性細菌性心内膜炎 など
膠原病
- 関節リウマチ
- SLE など
悪性腫瘍
- 消化管の癌
- 婦人科系の癌など
腎臓の病気
- 慢性腎不全
- 透析患者 など
慢性的な肝臓の病気
- 肝硬変
- 慢性肝炎
- 肝細胞癌 など
内分泌腫瘍
- 甲状腺機能低下症
- Addison病 など
その他
- 妊娠
- 薬物 など
血色素量(Hb)が低いときの症状は?
貧血時には以下のような症状が現れます。
- 頭痛
- めまい
- 耳鳴り
- 失神
- 息切れ
- 疲れやすい(易疲労感)
- 倦怠感・脱力感
- 顔色が悪い
- 眼瞼結膜蒼白
- 動悸
- 頻脈
- 狭心症
- 爪がスプーンのように凹む(スプーン爪)
- 間欠跛行(かんけつはこう)
ただし、放置をしておくと体がその状態に慣れてしまい自覚症状がないこともあります。
血色素量(Hb)が高いときに考えられる病気・原因は?
血色素量が高い時には、以下の病気、原因が考えられます。
- 多血症
- 脱水
- ショック
血色素量(Hb)が高いときの症状は?
血色素量(Hb)が高いときは、原因により異なります。
多血症の場合
ほとんどは無症状ですが、
- 頭痛
- のぼせ
- 赤ら顔
などの症状が起こることがあります。
脱水・ショックの場合
- 倦怠感
- 頻脈
- 血圧低下
- 意識障害
といった症状が起こります。
水分の摂取が必要ですが、飲水ができない場合は、点滴を行います。
血色素量(Hb)の検査で注意すべき点は?
日内変動
血色素量は、一般的に朝食後に高値を示し、夜の就寝時に低い値を示す傾向があります。
性別による変動
一般的に男性の方が女性よりも高い値を示し、女性においては月経の影響により低い値を示す傾向があります。
年齢による変動
新生児では20g/dlと高い値を示し、その後低下して行き、生後6ヶ月ごろには12g/dl前後となります。
この値は5歳くらいまで続き、その後徐々に増えて行き15歳頃には成人の値に達します。
また、高齢になると成人期よりも低い値を示す傾向があります。
その他の影響による変動
激しい運動後などで体が脱水状態の時は、循環血漿量が減少するため、高い値となることがあります。
また、妊娠後期では、循環血漿量が増加するため、低い値となる事もあります。
その他、喫煙する方では高い値を示すことがあります。
最後に
血色素量について、
- 血色素量(Hb)の基準値
- 血色素量(Hb)が低いとき、高いときの原因やどのような病気の可能性があるか、
- またその際に起こりうる症状
についてまとめました。
貧血の原因は、鉄欠乏性貧血の頻度が多いですが、なかなか原因がわからないこともしばしばあります。
「思わぬ慢性感染症が隠れていた。」
「思わぬ悪性腫瘍が隠れていた。」
ということもあります。
大事なのは、前回のデータと比較して数値が急に上がったり下がったりしていないかをチェックすることです。
特に、急に下がっている場合は精査が必要となります。