尿には様々な成分が含まれ排出されますが、手軽に体への負担もなくできる尿検査は、様々な検査としてよく行われます。
その尿検査でわかる項目の1つに、尿ケトン体というのがあります。
では尿ケトン体から、何が分かるのでしょう?
今回は、この尿ケトン体について
- 基準値
- 陽性の場合の原因
- 改善方法
- 注意点
などを説明したいと思います。
尿ケトン体とは?
- アセトン
- アセト酢酸
- β-ヒドロキシ酪酸
のこれら3つを含めた総称を、尿ケトン体と言いい、これらは脂肪酸の酸化によって肝臓で生成されるものです。
尿ケトン体を測定する目的は?
一般的に、このケトン体を調べるのは、
- 尿糖と合わせ、糖尿病患者の状態の把握や糖尿コントロールの指標とするため
- 一般的なスクリーニング検査として
です。
尿ケトン体の基準値は?
陰性(つまり尿からケトン体が検出されない)ならば正常となります。
しかし、ケトン体は全く尿に含まれないかといえば、そうではありません。
健常者でも尿中に1日40〜50mgは排泄されていますが、これくらいの量の場合、一般的に行われる検査方法では陰性と判断されます。
人間が活動するためのエネルギー源の主たるものはブドウ糖ですが、そのブドウ糖が何らかの原因により利用できない状態に置かれると、体の脂肪を燃やしてエネルギーとします。
そうなると、血液中のケトン体が増加し、体が酸性に傾くアシドーシスという状態になります。
ですので、ケトン体は糖尿病患者のみならず、そうでない人でも、空腹時にランニングなどをするときが状態となり陽性になることがあります。
尿ケトン体が陽性の場合考えられる原因は?
- 糖尿病
- 甲状腺機能亢進症
- 先端巨大症
- Cushing症候群
- 絶食
- 飢餓
- 高熱
- 感染症
- 肥満
- 脂肪の過剰摂取
- アルコール摂取過多
- 下痢
- 嘔吐
- 食中毒
- 手術後
などが、陽性の場合の原因として考えられます。
糖尿病の場合
特に、糖尿病患者で陽性となると、糖尿病のコントロールが十分に行われていないということになります。
小児の場合
小児の場合は、感染症により嘔吐や下痢症状が現れ、ケトアシドーシス(高ケトン血症)に傾きやすくなります。
妊婦の場合
また妊婦は、ケトン体が陽性で体重減少が著しい場合、妊娠悪阻と診断され、原則入院となり治療が必要となります。
つまり、ケトン体が陽性となれば、原因を探り治療が必要となります。
なぜならば、このアシドーシス(ケトン体が陽性となっている)が続くと、重傷になり昏睡状態に陥ることもあるためです。
尿ケトン体が陽性の場合の治療は?
- 水分補給
- 電解質補正
- エネルギー(ブドウ糖)補給
が必要になり、この処置により、ケトン体は消失します。
また、ひどい場合には、上記でご説明しましたように、昏睡状態となるため、点滴を行い血液中のpHを正常に戻す必要があります。
尿ケトン体が陽性の場合の注意点は?
それは、甘酸っぱく腐ったような独特のもので、尿だけでなく、口臭や体臭からも感じられるほどの臭いとなります。
そのため、
「いつもと口臭が違う」
「おかしな臭いがする」
など感じられた際には、尿ケトン体が陽性の場合があるので、まずは医療機関を受診されることをオススメします。
参考文献:最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P60〜62
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P33
参考文献:最新 検査のすべてP125
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP116・117
最後に
- アセトン・アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸の総称を、ケトン体という
- 陰性の場合正常
- 糖尿病のコントロールができていないと陽性になる
- ケトン体の陽性(アシドーシス)が長く続き重傷化すると昏睡状態となることもある
- ケトン体が陽性の場合、・水分補給・電解質補正・エネルギー(ブドウ糖)補給などの処置が必要
- ケトン体には特有の臭いがある
糖尿病の場合、血糖値と合わせて重要な検査になりますし、妊娠中にも検診のたびに行われる検査として重要です。
また、自分の臭いに異常を感じた際には、医療機関を受診し、検査をしてみるのが良いでしょう。