肝疾患が悪化するとその終末像として肝硬変になります。
そもそも肝硬変とはどういった疾患なのでしょう?
今回は、肝硬変(読み方は「かんこうへん」英語表記で「liver cirrhosis」略語で「LC」)について
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療法
- 看護
を図(イラスト)や実際のCT画像などを交えてまとめました。
肝硬変とは?
慢性進行性肝疾患が進行した結果生じた肝疾患の終末像で、最終的には肝不全に至ります。
肝硬変は、肝機能を表すものではなく、病理組織学上の肝臓の状態を表し、高度の繊維化をともなう偽小葉や再生結節のびまん性の出現を特徴としています。
そして、上記のイラストのように、肝硬変から肝がんのリスクも高まります。
肝硬変は臨床的には、
- 代償期・・・肝機能がある程度保たれた状態
- 非代償期・・・肝機能障害が進行し、肝機能を保てない状態
とに分けられます。
肝硬変の症状は?
- 無症状もしくは、慢性肝炎の症状
- 肝不全の症状
に分けられますが、非代償性肝硬変では以下のような様々な症状が出現します。
- 微熱
- 易疲労感
- 倦怠感
- 食欲不振
- 腹部膨満感
- 腹水
- 浮腫
- 黄疸
- くも状血管腫
- 女性化乳房
- 精巣萎縮
- 手掌紅斑
- 腹壁静脈怒張
- 消化管出血(吐血・下血)
- 貧血
- 意識障害(肝性脳症)
これらは、肝機能低下による代謝障害や門脈圧亢進、門脈・大循環シャント形成などが関与して起こります。
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肝硬変の原因は?
ウイルス性肝炎が肝硬変の原因の80%にあたり、以下のような原因があります。
- C型肝炎(最多)
- B型肝炎
- アルコール性肝炎
- 非アルコール性脂肪性肝炎
- 自己免疫性肝炎
- 原発性胆汁性肝硬変
- 代謝性疾患
- うっ血
- 薬剤
肝硬変の検査は?
- リスク群・・・病歴や家族歴
- 身体所見・・・上記でご説明した症状から
- 生化学的検査・・・肝機能障害・肝繊維化(血液検査)
- 画像検査・・・超音波検査・CT検査・MRI検査
- 組織学的検査・・・肝生検・腹腔鏡下肝生検
などを総合して診断に至ります。
血液検査
- 汎血球減少(血小板<10万μL)
- AST優位のトランスアミナーゼ上昇
- 総ビリルビン上昇
- γ-GT上昇
- ALP上昇
- プロトロンビン時間(PT)延長
- Alb減少
- ChE減少
- T.Cho減少
- NH3上昇
- γグロブリン上昇
- ICG試験(15分値)上昇
- Ⅳ型コラーゲン上昇
- ヒアルロン酸上昇
がみられます。
超音波検査
- 肝臓表面の凹凸不整
- 肝臓辺縁の鈍化
- 肝臓実質の粗造化
- 腹水の描出
が確認できます。
CT検査・MRI検査
超音波と同じように肝硬変を確認できるだけでなく、腹水や脾腫、側副血行路などの合併症の診断にも有用です。
症例:60歳代 男性 C型肝炎 造影CT
肝臓は辺縁が鈍で凹凸不整です。
また本来右葉のほうが大きいのが正常がですが、左葉が腫大を認めています。
肝臓辺縁には腹水を認めています。
肝硬変を疑う所見です。
こちらのスライス断面でも腹水の貯留を認めています。
また脾臓の腫大(脾腫)を認めています。
さらに、肝硬変に伴うと考えられる腸管のむくみ(浮腫)を認めています。
いずれも肝硬変を示唆する所見です。
組織学的検査
繊維化のレベルを知る上でも重要で、門脈〜門脈間または門脈〜中心静脈間に繊維性隔壁を形成し、再増殖した肝細胞が偽小葉といわれる大小様々な結節を生じます。
関連記事)肝臓の検査の方法は?何科に行けばいい?
肝硬変の治療は?
肝硬変の治療としては、
- 原因別の治療
- 肝不全の治療(腹水・黄疸・肝性脳症)
- 栄養療法
- 消化管出血に対する治療
が重要で、またウイルス性肝硬変は肝細胞癌の危険性もあるため、発癌対策として予防や早期発見も大切です。
その他、重症例である肝不全や消化管出血が治療抵抗性の症例に対して肝移植を検討することもあります。
肝硬変の看護は?
上記の治療法以外に代償期では、食生活の見直しも重要で、その指導を徹底することも基本となり、症状の悪化を防ぐため管理も大切です。
また、非代償期では安静が必要になります。
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P194〜198
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P293〜301
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P193〜201
参考文献:パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P126・127
最後に
- 慢性進行性肝疾患が進行した結果生じた肝疾患の終末像が肝硬変
- 肝硬変が悪化すると、最終的には肝不全となる
- 肝硬変が起これば門脈圧更新症も必ず起こる
- 肝機能障害が進行した非代償期には様々な症状があらわれる
- ウイルス性肝炎が原因の80%を占める
- リスク群・身体所見・生化学的検査・画像検査・組織学的検査により診断
- 原因別の治療・肝不全の治療・栄養療法・消化管出血に対する治療をおこなう
肝硬変といえば合併症が怖いものでもありますが、予後を左右する合併症として、肝細胞癌・消化管出血・肝不全があり、中でも肝細胞癌が最多の死因につながります。