尿検査は、手軽に負担なく行える検査で、様々な病気の指標ともなるため、多く行われる検査の一つです。
しかし、その尿検査の中でも引っかかりやすい項目の一つに尿蛋白があります。
「尿蛋白(1+)と結果が返って来たけど大丈夫だろうか?」
「尿蛋白(±)プラスマイナスってどういうこと?」
などと疑問が出て来ます。
では、この尿蛋白の基準値はどれくらいなのでしょう?
今回は尿蛋白について
- 基準値はどれくらいか
- どんなときに陽性と判断するのか
- 再検査になるのはどんなときか
- 再検査になったらどんな検査をするのか
などをご説明したいと思います。
尿蛋白の基準値は?異常値は?
人の血液には、常に一定量の蛋白質が含まれています。
血液中の蛋白質は腎臓で濾過され、正常であってもごくわずかの蛋白(1日40-80mg、最大150mg1))だけが尿に含まれ排出されます。
しかし、正常よりも多く排出されすぎると、何らかの原因が考えられます。
試験紙法は、尿に試験紙をつけるだけでわかる非常に簡単な検査です。
まず、尿試験紙検査法では、ご存知のように、プラスマイナス表記で結果が表されます。
- −(マイナス)
- ±(プラスマイナス)
- 1+(1プラス)
- 2+(2プラス)
- 3+(3プラス)
- 4+(4プラス)
の6段階で尿蛋白は判定されます。
そして、この+と実際に漏れ出ている尿蛋白の量との関係は次のようになります。
※ただし、メーカーにより多少異なる。
試験紙法の場合の基準値・異常値
そして、試験紙法では、陰性(-)が正常であり基準値とされます。
では、(−)以外は全て病的なのかというとそういうわけではありません。
試験紙法の結果と「腎障害」の関係
目安として、
- 正常な場合、(−)〜(±)
- 軽度な異常の場合、(−)〜(2+)
- 高度な異常の場合、(1+)〜(3+)
- ネフローゼ※の診断基準として、(3+)〜(4+)
とされています2)。
(※:ネフローゼとは高度な蛋白尿を基本的病態とし、浮腫や低蛋白血症、高コレステロール血症を示す疾患群を総称したものを言います。)
そして、(1+)が健常状態と異常状態のボーダーラインとされ、スクリーニングの識別判断ポイントとされています。
つまり、尿蛋白が(1+)以上の場合、病的な可能性があるため、引っ掛けて再検査を行うということです。
試験紙法での「目安」となっているのは、正常とされる(−)〜(±)であっても、異常な病態が隠れていることがあるためで、また、各項目に幅(〜)があるのはそのためです。
また病気ではないのに、尿蛋白が一時的に漏れ出てしまうこともあるため、尿蛋白が(1+)だからといってすぐに異常と決めることはできないからです。
むしろ、一般に検尿で尿蛋白が(1+)の場合は、再検査をすると陰性となっていることが多いと言われます1)。
ただし、尿蛋白が(2+)や(3+)の場合は、何らかの異常であることが多いとされます1)。
基準値という意味では、(−)のみとなりますが、健常状態と異常状態のボーダーラインは(1+)です。
ちなみに、上の目安はあくまで「腎障害」と尿蛋白の関係です。
そして、尿蛋白が陽性になるのは腎障害だけではありません。
ですので、尿蛋白が陽性となった場合は再検査を受け、それでも陽性が続くようですとその原因を精査することになります。
大事な点は、尿蛋白が(1+)以上であった場合に再検査をきちんと受けるということです。
尿検査での判定区分は?
健康診断や人間ドックで尿検査(試験紙法)を受けた場合の結果と判定区分は以下のようになります。
つまり、
- -~±がA1(異常なし)
- 1+がB1(要経過観察)
- 2+~4+がG2(要精密検査)
です。
尿蛋白が(±)プラスマイナスの時は?
上で述べたように、(±)プラスマイナスは判定区分がA1であり、異常なしと判定されます。
ただし(±)が有意なのかどうかを判定するための方法もあります。
それが、スルホサリチル酸法と呼ばれる方法(定性試験)で、アルブミン尿かどうかを判定することができます。
この試験で陰性であった場合、着色尿、高比重尿、酸性ムコ蛋白などが原因で試験紙法で(±)になったと考えられ病的意義はありません3)。
尿蛋白が陽性の場合の検査は?
まず、腎臓内科や一般内科で医師の診察を受け、再現性を確認するために3ヶ月くらいの間に、2~3回の尿検査をします。
そこで陰性であれば、生理的蛋白尿(機能性・一過性蛋白尿)として診断され終了です。
ところが、再検査でも尿蛋白が陽性になる場合は、生理的蛋白尿の一つである起立性蛋白尿との鑑別のために早朝の尿で蛋白の有無を検査します。
早朝尿で蛋白が出ない場合は、起立性蛋白尿と診断され終了です。
早朝尿でも陽性であった場合は、24時間尿を測定して、尿蛋白の定量を行います。
(尿蛋白の検査には、尿の中に蛋白質が出るかどうかの定性検査、またどのくらい出るかの定量検査があります。)
そこで病的な量の蛋白尿を確認した場合は、
- 尿沈渣検査
- 腎機能検査
- 画像検査
といった精密検査を行い、腎臓の専門医に診察をお願いする流れになります。
尿蛋白が陽性のとき考えられる病気は?
- 急性糸球体腎炎
- 慢性腎炎
- 腎硬化症
- ネフローゼ症候群
- SEL(全身性エリテマトーデス)
- 糖尿病
- 尿路感染症
- 多発性骨髄腫
- 膠原病
- 痛風
- 結石
しかし、生理的蛋白尿といって、病気が原因でない場合でも蛋白が陽性となることもあります。
尿蛋白測定で注意すべき点は?
- 尿を採取する前日は入浴し、外陰部をきれいに洗い、清潔にしておく
- 尿は朝一番のもの、または食事をしてから3時間から4時間後のものなど指定された時間内に
- とくに医師から指示がない場合は、最初と最後の尿をのぞいた中間尿を採取
- 自宅で採取する場合には、当日のものにしましょう
- 女性の月経中、または直後のものは検査結果が不確実となりやすいので医師に相談する
定性検査のスルフォサリチル酸性は、わずかの蛋白質にも敏感に反応し、陽性と出る事がありますので、陽性と測定結果が出ても直ぐに疾患ありと判断するのは早計です。
また、高蛋白食・激しい運動・入浴・女性では月経前に出るものを生理的蛋白尿と言います。
参考文献:
1)危ない蛋白尿・血尿 P40,6,19
2)CKD診療ガイドライン 2012 P25
最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P45〜49
今日の臨床検査 2011ー2012 P29
最新 検査のすべてP19
よくわかる検査数値の基本としくみP52・53
新版検査と数値を知る事典P181
最後に
蛋白尿の基準値と検査結果の見方、陽性の場合の再検査及びその後の流れについてはまとめました。
最も簡便でわかりやすいのは、判定区分である
- -~±がA1(異常なし)
- 1+がB1(要経過観察)
- 2+~4+がG2(要精密検査)
であると思います。
これに加えてCKD診療ガイドラインの尿蛋白と「腎障害」の関係についても触れてみました。
検尿(試験紙法)で蛋白が陽性に出ても、1回の検査だけでは診断が確定せず、通常何回か検査を重ねます。
この検査単体で正常・異常とすぐには言えないことがわかります。
ただし、腎障害などを早期発見する大事な検査と言えます。
早い段階で発見し、治療をすることが腎機能の低下を防ぐためには重要です。
ですので、とくに「要再検査」「要精密検査」と結果が帰って来た場合には必ず病院を受診するようにしましょう。
参考になれば幸いです( ^ω^ )