血液検査でわかる項目のひとつに、LDHというものがあります。

LDHは、血清中にある酵素の一種ですが、どのような場合に異常値となるのでしょう?

今回は、このLDH(読み方はそのままエルディーエイチ、英語表記で「lactate dehydrogenase」日本語に訳すと「血清乳酸脱水素酵素」)について

  • 基準値
  • 高い場合考えられる病気
  • 注意点
  • LDHアイソザイム

などを説明したいと思います。


LDHとは?

LDHは、「血清乳酸脱水素酵素」のことをいい、体内でブドウ糖がエネルギーに転換されるときに働く、血清中にある酵素の一種です。

あらゆる細胞に含まれていますが、その中でも主に

  • 肝臓
  • 腎臓
  • 心臓
  • 筋肉
  • 赤血球

などに多く含まれており、それらに異常が生じると、血液中に流出されるため数値が上昇します。

ldh

また、

  • 肝臓病
  • 血液病
  • 骨格筋の病気
  • 各臓器のがん

などの病気でも血液中に増加するため、その量を測定してこれらの病気を発見する検査(スクリーニング)として用いられています。

 

LDHの基準値は?

検査の結果、

120〜240U/l

であれば正常値とされます1)

LDH 基準値

検査の数値が基準値より低い場合は、基本的に問題はないと診断されるケースがほとんどです。

しかし、極端に数値が低い場合は医師に相談されるようにして下さい。

病気などの可能性(異常値)となるのは、この基準値よりも高い場合です。

LDHが高いのときに考えらえる病気は?

などが疑われます。

LDHの検査で注意すべき点は?

LDHが高値だったからといって疾患を特定することは困難なため、臨床症状や他の検査の結果と総合して判断します。

また、病気以外でも、以下のような場合には高い数値を示すことがあります。

病気以外の原因でLDHが高値となる場合

  • 激しい運動の後
  • 強くぶつけた時
  • 妊娠時
  • 15歳以下

LDH 高い

男女においての違いはありませんが、妊娠後半期に急上昇して、出産前は数値が跳ね上がりますし、小児期も高値(15歳以下)です。

※LDHが成人の基準値と同等になるのは、思春期以降(15歳以降)といわれています2)

また、運動によっても数値が変動しやすいですので、検査前のスポーツは避ける必要があります。

しかし、LDHには問題点もあります。

LDHの数値が高い場合には、何らかの病気の可能性がありますが、体のどこに異常があるのかまでは特定できません。

そのため、LDHアイソザイム検査を行い、どの臓器に問題があるのかを特定していくこともあります。

LDHアイソザイムとは?

アイソザイムは、「乳酸脱水素酵素アイソザイム」といい、酵素としての働きは同じでも、アミノ酸配列が異なる酵素のことです。

LDHアイソザイムは、LDH1・LDH2・LDH3・LDH4・LDH5の5種類に分類できます。

これら5種類のアイソザイムはそれぞれ存在する臓器が違うので、どの種類のアイソザイムの数値が高くなっているのかを調べることで、どの臓器に異常が生じているのかを大まかに特定することが出来ます。

それによって、さまざまな疾患の早期発見の手掛かりにする事が可能となります。

LDHアイソザイムの基準値

分類ごとに基準値を紹介します。
  • LDH1・・・20〜35%
  • LDH2・・・30〜40%
  • LDH3 ・・・20〜30%
  • LDH4・・・5〜15%
  • LDH5・・・2〜15%

電気泳動法を用いた、5分画の%求める方法が一般的です3)

LDHアイソザイムが高い場合に考えられる病気は?

分けて説明します。

LDH1・LDH2が高い場合

  • 心筋梗塞
  • 溶血性貧血
  • 悪性貧血
  • 腫瘍

LDH2・LDH3が高い場合

  • 筋ジストロフィー
  • 多発性筋症
  • 間質性肺炎
  • 白血病
  • リンパ腫
  • 肺がん
  • 胃がん

LDH5が高い場合

  • 急性の筋崩壊
  • 急性肝炎
  • 肝細胞がん
  • 前立腺がん

などが考えられます。

参考文献:
1)3)今日の臨床検査 2011ー2012 P188・189
2)よくわかる検査数値の基本としくみP60・61
最新 健康診断と検査がすべてわかる本P30

最後に

LDHについて、ポイントをまとめます。

  • LDHは、血清中にある酵素の一種
  • 肝臓病・血液病・骨格筋の病気・各臓器のがんなどのスクリーニングとして有用
  • 正常値は、120〜240U/l
  • 高い場合は問題
  • 病気以外でも高値となる場合がある

 

LDHだけで病気の特定までできるものではありません。

しかし、LDHアイソザイムを行うことで、どの臓器に問題があるのかを調べることがあります。

その中でもがんの場合、治療の結果としてがんが小さくなると、LDHも下がるため(再発すると上がる)、がんの状態を知るための腫瘍マーカーとしても用いられます。




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