胃がんの進行度はがんの
- 壁深達度(胃壁のどの程度まで深く入り込んでいるか)
- リンパ節や他の臓器への転移の状態
に基づいてステージ分類され、それにより評価され、治療法が決まります。
今回は、胃がんの
- 検査
- 肉眼型分類
- 病期分類
- ステージ
- 治療方針
についてご説明したいと思います。
胃がんは検診で見つかることが多い?検査は?
無症状なため、検診等で見つかることが多い胃がん。
胃がんの疑いがあると、再検査としてさらに詳しい検査が必要となります。
がんの広がり、深さをチェックする
- 胃X線検査(バリウム検査)
- 胃内視鏡検査
- 超音波内視鏡検査:壁深達度を診断する
これら3つの検査を用いて、がんの広がりや深さをチェックします。
転移、胃周辺臓器への浸潤の有無をチェックする
- 超音波検査
- CT検査、MRI検査、PET検査
- 注腸検査
などの検査を用いて、胃がんの転移の有無や周囲臓器への浸潤の有無をチェックします。
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胃がんの肉眼型分類とは?
まず胃がんを見て、胃壁に深く入り込んでいるか、表面のみかで分けられます。
胃壁に深く入り込んだ胃がんを進行胃がん(Borrman分類)、表在型(固有筋層に浸潤していない)の胃がんを早期胃がんと分類します。
進行胃がんはその形状により1-4型に分けられます。また早期胃がんも形態により
- 隆起したもの0-Ⅰ型
- 平坦なものを0-Ⅱ型(中でもⅡa-cに分かれる)
- 陥凹したものを0-Ⅲ型
と分類されます。
- 早期胃がん:がんの浸潤が粘膜下層までにとどまっているもの。
- 進行胃がん:がんの浸潤が粘膜下層を超えているもの。
そして胃がんのうち、早期胃がんで見つかれば、ガイドラインに基づいた治療をきちんと受ければ、完治すると言われています。
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病期分類とは?
最新の胃がん取り扱い規約(2010年3月第14版)では、リンパ節の個数により転移を分類するように変更になりました。
胃がんのN分類(リンパ節転移)
- N0:領域リンパ節に転移を認めない
- N1:領域リンパ節に1-2個の転移を認める
- N2:領域リンパ節に3-6個の転移を認める
- N3:領域リンパ節に7個以上の転移を認める
- N3a:領域リンパ節に7-15個の転移を認める
- N3b:領域リンパ節に16個以上の転移を認める
その他は、
- 肝臓への転移の有無
- 腹膜転移の有無
- 腹腔細胞診
- 遠隔転移の有無
により、分類されます。
腹腔細胞診とは胃がんの手術をする際に、ダグラス窩を生理食塩水で洗います。
その際の洗った液体を保存して、病理検査に出します。ここでがん細胞があれば、CY1、なければ、CY0と分類されます。
ステージ(進行度分類)分類とは?
- T分類:胃がんが胃壁のどの程度まで進展しているか。
- N分類:リンパ節への転移はいくつあるか。
- M分類:肝臓、肺、腹膜などの遠隔転移はあるか。
これらの3つを総合して進行度分類であるステージ分類がおこなわれます。
N0 | N1 | N2 | N3 | 遠隔転移がある。 | |
T1a | ⅠA | ⅠB | ⅡA | ⅡB | Ⅳ |
T1b | ⅠA | ⅠB | ⅡA | ⅡB | Ⅳ |
T2 | ⅠB | ⅡA | ⅡB | ⅢA | Ⅳ |
T3 | ⅡA | ⅡB | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T4a | ⅡB | ⅢA | ⅢB | ⅢC | Ⅳ |
T4b | ⅢB | ⅢB | ⅢC | ⅢC | Ⅳ |
遠隔転移がある | Ⅳ | Ⅳ | Ⅳ | Ⅳ | Ⅳ |
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病理学的に分類とは?
さらにがんは病理学的に分類されます。
まず胃の上皮の腫瘍(上皮性悪性腫瘍)と上皮以外の腫瘍(非上皮性悪性腫瘍)に分けられます。
上皮性悪性腫瘍
上皮性悪性腫瘍の方が、非上皮性悪性腫瘍よりも頻度は圧倒的に多いとされます。
上皮性悪性腫瘍では腺がん(adenocarcinoma)が多いとされ、腺がんの中でも分化度が高いもの(高分化型腺がん)と低いもの(低分化型腺がん)に分けられます。
※胃がんの9割は腺がんです。
高分化型腺がん
- 乳頭腺がん(pap)
- 管状腺がん:高分化(tub1)、中分化(tub2)
低分化腺がん
- 低分化腺がん:充実型(por1)、非充実型(por2)
- 印鑑細胞がん(sig)
- 粘液がん(muc)
さらには腺がん以外の稀ながんとして、扁平上皮がん・腺扁平上皮がん・カルチノイド腫瘍などがあります。
非上皮性悪性腫瘍
- 悪性リンパ腫
- 消化管間葉系腫瘍(GIST)
- 平滑筋肉腫
- 悪性神経鞘腫
などに分類されます。
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胃がんの治療方針は?
胃がんの場合は、骨に転移などがあれば放射線治療されることもありますが、基本的には、
- 手術
- 化学療法(抗がん剤治療)
によりおこなわれます。
手術ができるかどうかは、遠隔転移があるかないかで決まります。
遠隔転移があれば、手術療法ではなく、化学療法がメインとなります。
遠隔転移がない場合の治療方針は?
壁の進達度や、リンパ節転移の有無により治療方針が決まります。
当然、進行度が低いものほど、非侵襲的な手術がされます。
非侵襲的な手術とは内視鏡による手術です。
- 内視鏡的治療
- 胃定型手術
- 胃定型手術+合併手術
また、手術をした後も
- 経過観察(化学療法をしない)
- 化学療法
の2つがあり、これも進行度により、化学療法をするかどうかを決定します。
参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P116〜127
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P64〜77
参考文献:内科診断学 第2版 P850〜854
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P76〜85
最後に
まとめますと、胃がんの治療方針は、
- 胃がんが胃の壁のどの程度まで浸潤しているか
- リンパ節転移があるかどうか
- 他の臓器への転移(遠隔転移)があるかどうか
により決まり、治療としては、
- 内視鏡治療
- 外科的手術
- 化学療法(抗がん剤治療)
が選択されるということです。
早期発見が完治への鍵となりますので、定期検診の必要性がお分かりいただけかと思います。