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肝臓に病気があると、黄疸・腹水をはじめとする様々な症状が出現することがあります。

しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることでも有名です。

これらの症状が出現するのは病気が進行した際であることが多く、初期には無症状なこともあります。

では、症状があらわれる前に肝臓の病気を調べるには、どんな検査が必要になるのでしょうか?

今回は、肝臓の検査について

  • 検査の種類
  • 検査の方法
  • 何科を受診すればいいのか
  • 費用はどれくらいかかるのか

など、分かりやすく説明したいと思います。

参考にされてください。


肝臓の検査とは?どんなものがある?

肝臓の疾患が疑われる場合、以下のような検査をすることになります。
  • 血液検査
  • 画像検査
  • 腹腔鏡検査
  • 肝生検

liver check

それぞれについて説明します。

肝臓の血液検査とは?

role of figure

肝臓には代謝・蛋白の合成・解毒・胆汁の合成などをする働きがありますが、そういった肝臓の機能を調べるのが、肝機能検査です。

肝機能検査・肝炎ウイルスマーカー・免疫学的検査などがあります。

それぞれ説明します。

肝機能検査

肝機能検査は血液検査としておこなわれ、以下のような検査項目・基準値・単位・障害時の動向が「日本臨床検査医学会2011」で定められています。

それぞれの肝機能検査の意味と、該当する項目は以下の通りです。

肝細胞の壊死を反映する項目
  • トランスアミナーゼ(AST,ALT)
  • LDH

肝炎や肝硬変などの肝障害ではこれらの酵素が逸脱するため、値が上昇します。

liver function test figure1

基準値は?
  • AST:10~40 U/L
  • ALT:5~45 U/L
  • LDH: 120~240 U/L

障害時の動向:上昇

U/Lの単位の読み方
※U/Lの単位の読み方はユニット(Unit)・パー・リットルです。
以前は、IU/Lと表記していましたが(読み方はインターナショナル・ユニット(International unit(国際単位))パー・リットル)、現在では、U/Lを使用するようになっています。

 

肝細胞の合成能障害を反映する項目
  • アルブミン(Alb)
  • コリンエステラーゼ(ChE)
  • 凝固因子(PT)
  • 総コレステロール(T.Cho)

肝障害ではこれらを肝臓がうまく生成できなくなり、値が下がります。

liver function test figure2

アルブミンは、血漿タンパクの一つであり、総タンパクの50-70%を占めます。

このアルブミンが低下すると、血管内に水を引っ張ることができなくなり(膠質浸透圧が下がり)、腹水や肺水腫の原因となります。

基準値は?
  • アルブミン(Alb):3.9~4.9 g/dL
  • コリンエステラーゼ(ChE):100〜240 U/L
  • 凝固因子(PT):10〜13sec
  • 総コレステロール(TC):120〜220mg/dL
線維化の程度を反映
  • ヒアルロン酸
  • Ⅳ型コラーゲン
基準値は?
  • ヒアルロン酸:50以下ng/mL
  • Ⅳコラーゲン:150以下ng/mL
肝障害に伴う血清蛋白成分の変化を反映
  • 膠質反応(TTT,ZTT)
  • γ-グロブリン(IgG,IgA,IgM)
基準値は?
  • 膠質反応TTT(チモール混濁試験):4U以下(Maclagan単位)
  • 膠質反応ZTT(硫酸亜鉛混濁試験):2〜12U
  • γグロブリン11.0〜20.9%
胆汁うっ滞を反映
  • 胆道系酵素(ALP、γ-GTP)
  • 直接ビリルビン
  • 総コレステロール(T.Cho)

胆道系酵素は、トランスアミラーゼとともに肝機能検査で取り上げられる項目です。

liver function test figure3

胆道が閉塞して胆汁の排泄が障害された時に上昇します。

基準値は?
  • ALP:50~350U/L
  • γ-GTP:男性80U/L以下、女性30U/L以下
  • 直接ビリルビン:0.4 mg/dl以下
  • 総コレステロール:120〜220mg/dL
肝臓での取り込み排泄障害を反映
  • ICG試験15分値
  • BSP試験45分値
基準値は?
  • ICG(インドシアニングリーン)試験15分値:10%以下
  • BSP(ブロムサルファレイン)試験45分値:5%以下

(以上の基準値は施設や条件によって異なります)

肝炎ウイルスマーカー

B型・C型肝炎を調べる検査です。

それぞれに分けて説明します。
  • B型肝炎ウイルスマーカー

HBs抗原・HBs抗体・HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA・HBc抗体

  • C型肝炎ウイルスマーカー

HCV抗体・HCV-RNA・HCVコア抗原・ウイルスの型

などを調べます。

免疫学的検査

病原体に対する抗体などの有無や種類を調べます。

それにより、特定の種類の病原体の感染を知ることができます。

 

肝臓の画像検査とは?

肝臓の画像検査には

  • 腹部超音波検査
  • CT検査(単純CT・造影CT)
  • MRI検査
  • 血管造影検査

などがあります。

腹部超音波検査・CT検査(単純CT・造影CT)・MRI検査・血管造影検査と分けて説明します。

腹部超音波検査

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肝臓の大きさ・形・腫瘤の有無・肝内血管・胆管の拡張・狭窄などを調べることができます。

エコーを腹部に当てるだけで調べることができ、副作用の影響等もないので、まず初めにおこなわれることの多い検査です。

CT検査

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X線を用いて、あらゆる方面から撮影した断面図を画像化する検査です。

造影剤を用いる検査と用いない検査があり、肝臓の形や病変を描出することができます。

MRI検査

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放射線ではなく、磁気を利用して体の断面を映し出す検査で、被曝はありません。

CT同様、肝臓の形や病変を描出することができますが、CTよりもさらにハッキリとコントラストが得られます。

さらにEOBプリモビスト造影剤を用いることにより、肝臓癌(肝細胞癌)の描出がよりされやすくなりました。

血管造影検査

hepatic angio

肝臓に流入する肝動脈や門脈という血管を造影して映し出す検査です。

肝臓にある腫瘤の血管との関係の描出に優れます。

ただし、現在はダイナミックCTでこれらの血管は細かいところまで描出できるため、検査よりは、肝細胞癌などの治療(肝動脈塞栓術(TAE))で行われることが多いです。

肝臓の腹腔鏡検査とは?

局部麻酔下でおこなわれる検査で、腹腔内に気体を注入し、臓器を直接観察できる検査です。

診断だけでなく、生検や治療にも有用です。

肝生検とは?

肝組織の一部を採取し病理診断する検査です。

腹腔鏡下でおこなうことが多くありましたが、最近では超音波ガイド下で自動生検針を使った経皮的生検が増加しています。

 

肝臓の検査は何科でおこなう?

肝臓に異常(の可能性)を指摘されたら

  • 内科
  • 消化器内科
  • 消化器外科
  • 肝臓内科

などの科を受診しましょう。

肝臓の検査費用はどれくらいかかる?

保険適用かどうかで金額は大きく異なりますが、3割負担の場合でご説明します。

  • 血液検査・・・1,000~2,000円(ただし、血液検査の種類によって異なり、大きく差が出る)
  • 画像検査・・・10,000円前後
  • 腹腔鏡検査・・・50,000円〜(検査のみか治療や生検をおこなうかによっても大きく異なる)
  • 肝生検・・・40,000円前後

これらはあくまでも目安であり、医療機関や方法によっても異なります。

参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P258〜264
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P162〜167
参考文献:消化器看護ポケットナビP9・10
参考文献:きょうの健康 検査でわかること
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012

最後に

  • 肝臓の検査には、血液検査・画像検査・腹腔鏡検査・肝生検などがある
  • 肝臓の検査は消化器内科、肝臓内科、消化器外科が良い

 

肝臓は症状が出にくい場所であるため、人間ドック等、健康診断で異常が見つかり再検査となることがほとんどです。

症状が出てきた時には、病気が進行していることも多くあります。

そのため、検査は早め早めに受けるのが良いでしょう。




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