肺がんは、がんによる死亡数が最も多いがんです(2024年の死亡数は75,569人。国立がん研究センター がん統計)。がん検診で切っても切れないのがこの肺がんです。
今回は肺がんの検診の方法についてまとめました。
先に結論:肺がん検診は「40歳から年1回、胸部X線」が基本です
- 対象は40歳以上、受診間隔は年1回。検診の項目は問診と胸部X線検査です(国立がん研究センター がん情報サービス)
- これまでの国の指針では、50歳以上で喫煙指数(1日の本数×年数)が600以上の重喫煙者に、喀痰細胞診が加わっていました
- 「要精密検査」と判定されたら、胸部CTを中心とした精密検査をきちんと受けましょう(自己判断で放置しない)
- 国立がん研究センターのガイドライン(2025年度版)では、重喫煙者に対する低線量CTが推奨されています(50~74歳、年1回が望ましい)。一方、非喫煙者・軽喫煙者への低線量CTは、死亡率減少の証拠が十分でないとされています
- 血痰、長引く咳、胸痛、声のかれ、息切れなどの症状があるときは、検診ではなくすぐに医療機関を受診してください
肺がん検診の方法は?何歳から?

厚労省の指針と、国立がん研究センターの案内によると、肺がん検診は、次の方法で行います。
- 問診
- 胸部単純X線
- 喀痰細胞診(これまでの指針では、50歳以上で喫煙指数600以上の方のみ)
対象年齢は、40歳以上の成人で、年に1回受診します。令和7年12月の指針の一部改正後、国立がん研究センターの案内では、検診項目は問診と胸部X線検査とされています。受診先の自治体や勤務先で検診の内容が異なることがあるため、案内を確認してください。
胸部X線や喀痰検査の有効性は?
胸部X線検査は、肺がんの死亡を減らすかどうかについて、研究によって結論が分かれています。米国の大規模試験(PLCO)では、年1回の胸部X線検診は、通常の診療と比べて肺がんによる死亡を減らしませんでした(Oken 2011、PubMed)。一方、日本の「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2006年度版では、胸部X線検査(および高危険群への喀痰細胞診併用法)は「行うよう勧められる」とされていました。
その後、2025年度版では、重喫煙者に対する胸部X線検査と喀痰細胞診の併用法は「対策型検診・任意型検診として実施しないことを推奨」(推奨グレードD)に変更されています(厚生労働省 がん検診のあり方に関する検討会 資料 令和7年10月)。
低線量CTは?
米国の試験(NLST)では、重喫煙者に対する低線量CT検診が肺がん死亡を減らしました(PubMed)。米国予防医学専門委員会(USPSTF)は2021年、50~80歳で20パック年の喫煙歴があり、現在喫煙中か禁煙後15年以内の人に、年1回の低線量CT検診を推奨しています(PubMed)。日本でも、国立がん研究センターのガイドライン2025年度版で、重喫煙者(喫煙指数600以上。禁煙から15年以内の人を含む)への低線量CTが推奨(推奨グレードA)されました。非喫煙者・軽喫煙者への低線量CTは、現時点で推奨グレードIです。
ですので、あくまで個々のリスク判断が重要であり、喫煙者など明らかなリスクがある場合は、低線量CTを含めた検診について、かかりつけ医や検診機関に相談すると良いでしょう。

胃・大腸・乳房など、他のがん検診の推奨される方法は、がん検診ガイドラインでの各がん検診の推奨される方法は?で解説しています。
肺がん検診の精密検査とは?
胸部X線でがんが疑われたり、異常な影があった場合、あるいは肺がんのリスクが高い人には、精密検査が行われます。
一般的な精密検査は胸部CT検査で、必要と判断された場合には、組織や細胞を採取する検査などを行い、肺がんかどうかを診断します。
胸部X線では、肺全体を1枚の写真に写しますが、CTでは、輪切りの画像が多数得られますので、より詳しく肺の中の状態を見ることができます。

最初からCTを撮ったほうがいいのでは?と思われる方もおられると思います。確かにCTの方が得られる情報がはるかに多いのは事実です。ただし、CTによる肺がん検診の有効性は?でも記載したように、被ばく量はCTの方が胸部X線よりも多いのです。厚生労働省の資料では、1回あたりの実効線量は胸部X線で0.021mSv、低線量CTで0.65~1.5mSvとされています(機器や条件で異なります)。
ですので、喫煙などのリスクがある人にはCT検査による精密検査はすすめられますが、リスクのない人が最初からCTで調べることは、現時点では推奨されていません(非喫煙者・軽喫煙者への低線量CTは推奨グレードI)。もちろん症状があれば話は別です。

PETで肺がんがどこまでわかるかは、PET検査で肺がんはわかる?PET/CTでわかること・限界・検査の流れで解説しています。
小細胞肺癌で使われる腫瘍マーカーについては、腫瘍マーカーProGRPの基準値は?高いときの原因(小細胞肺癌・腎機能)と受診の目安で解説しています。
よくある疑問
Q. 肺がん検診は何歳から受けるのですか?
A. 国の指針では40歳以上で、年に1回です。職場の健診や自治体の検診の案内を確認しましょう。
Q. 胸部X線で異常なしと言われたら、肺がんはないのですか?
A. 胸部X線は、鎖骨や心臓、横隔膜と重なる病変や、淡い陰影が見えにくいことがあります。肺がんがあっても症状が出ないことがよくあるため、「異常なし」でも、次回(1年後)の検診を受け、血痰・長引く咳などの症状が出たらすぐに受診してください。
Q. 肺がん検診は何科で受けますか?
A. 市区町村の検診、職場の健診、人間ドックなどで受けられます。精密検査が必要と言われたら、呼吸器内科や呼吸器外科などを受診します。
ほかの検査項目の見方 → 健康診断の結果の見方まとめ(A〜E判定の意味と検査項目の一覧)
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん検診について」/厚生労働省 第45回がん検診のあり方に関する検討会 資料(令和7年10月10日)「肺がん検診について」
最後に
肺がんは死亡数が最も多いがんですが、検診の方法によって、見つけられる範囲や被ばくの量、メリット・デメリットが異なります。胸部X線は基本の検診ですが、見つけにくい病変もあります。また、重喫煙者には低線量CTが推奨されています。ただし、被ばくや過剰診断などの不利益もあります。
結局個々のリスクに応じて、検査を選んでいくということになります。気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してください。

ちなみに上の写真は、高度喫煙者による肺気腫のCT画像です。肺がスカスカなのがその上の健常人のCTと比較すると明らかですね。
肺気腫がある方は、肺がんになるリスクも高いとされ、必要に応じてCTで経過を見ることがあります。喫煙は肺の健康にとって良いことがありません。禁煙を考えている方は、禁煙外来などに相談してみてください。



