尿検査の1つに尿素窒素というものがあります。

尿素窒素とは、血中の尿素に含まれる窒素分を表すもので、BUN(blood urea nitrogenの頭文字をとったもの。読み方は「ビーユーエヌ」)といいます。

尿素は、体内でタンパク質が分解されてできる最終代謝産物で、主として腎臓を通して体外に排出されます。

普通尿素は尿素窒素量として測定され、腎機能の診断、治療経過のチェックにおいて重要な検査となります。

今回は、尿素窒素(BUN)について

  • 検査理由
  • 基準値
  • 病気
  • 注意点

を説明したいと思います。


尿素窒素(BUN)とは?なぜ検査するの?

尿素はタンパク質の最終代謝産物であり、肝臓で合成され腎臓を通して体外へから排泄されます。

血中の尿素の量を表すのが血中尿素窒素(BUN)となり、

  • タンパク摂取量
  • タンパク代謝量
  • 腎機能

の3因子によって規定されています。BUN

 

正常血清においては非タンパク質性窒素(NPN)の約半分を占めています。

この血中尿素窒素(BUN)は,腎糸球体から濾過され,一部尿細管で再吸収され,尿中に排泄されます。

ところが、腎臓の働きに異常があると、濾過しきれない分が血液中に残り、尿素窒素(BUN)の数値が上昇します。

 

bun

このため、尿素窒素(BUN)は腎臓の機能を調べる検査として用いられます。

尿素窒素(BUN)の基準値は?高い・低いと問題?

まず、基準値を説明します。

BUNの基準値(正常値)

検査の結果、8~20mg/dLであれば正常値、異常なしと判断されます。

次に異常値について説明します。

BUNの異常値

25mg/dL以上のときは腎臓からの尿排泄が異常とみなされ、40mg/dLでは明らかに腎機能障害ありと判定されます。

また、基準値以下→8mg/dL以下でも問題です。

基準値より高くても低くても何らかの異常が想定されます。

異常のときに考えられる病気は?

高い場合・低い場合に分けて考えられる病気を説明します。

BUNが高い(高値の)場合

  • 腎機能障害
  • 腎不全
  • 尿路閉塞
  • 脱水症
  • 腎毒性薬物の使用
  • 高蛋白食
  • 甲状腺機能亢進症
  • 消化管出血
  • 絶食
  • 蛋白の大量摂取

などが考えられます。

消化管出血でBUNが上がってしまうのは、腸管に貯留したタンパク質が腸内細菌により分解されてしまうからです。

BUNが低い(低値の)場合

  • 肝不全
  • 低蛋白食
  • 尿崩症
  • マンニトール利尿
  • 妊娠

などが考えられます。

つまり、病気の可能性もありますが、中には病気以外の要因もあるというわけです。

そのため、基準値ではない場合は、関連検査がおこなわれて、正確な病名の決定と重症度が判定されます。

尿素窒素(BUN)の検査で注意すべき点は?

5つの注意点を説明します。
  • 激しい運動により通常よりも値が高くなることがありますので、検査前日は激しい運動は控えて下さい。
  • 高タンパク食でも数値が上昇しますので、検査当日の食事内容には気をつける事も大切です。
  • 妊娠や低タンパク食の摂取で低い値を示すこともあります。
  • 服用されている薬剤、発熱、下痢や嘔吐などの後も高めに出ますので、当てはまる方は、事前にその旨を医師に伝えて下さい。
  • 男性の方が女性よりも10-20%程度高い数値となります。

BUN/血清Cr比とは?

ここまで述べたように、BUNは、食事や脱水などの腎臓以外の影響を受けやすい項目です。

一方で腎機能の指標としてしばしば用いられる血清Crは、このような腎臓以外の影響を受けにくい項目です。

そこで、腎臓以外の因子の影響を予測するためにBUN/血清Cr比を測定することがあります。

BUN/血清Cr比<10の場合

この場合臨床的意義は少なく、

  • 尿素の産生が減っている(蛋白質摂取不足、重症肝不全など)
  • 尿量が増加している(多飲症、尿崩症など)
  • 透析後

の可能性が示唆されます。

BUN/血清Cr比=10前後の場合

この場合は、正常であるか、腎機能障害があることが考えられます。

腎機能障害が起こっているときは、BUNとともに、血清Crの値が下がっている場合が考えられます。

BUN/血清Cr比>10の場合

  • 尿素産生が亢進している(蛋白質の摂取の増大、ステロイドによる体の蛋白の異化が亢進している、消化管出血など)
  • 尿量が減少している(脱水、心不全など)

ということが起こっている可能性が示唆されます。

参考文献:改定新版 検査と数値を知る事典P129
参考文献:今日の臨床検査2011 2012P201〜203
参考文献:検査結果なんでも早わかり事典P163  

最後に

今回は、血液尿素窒素(BUN)についてまとめました。

腎機能を反映することがある(腎機能低下の際には、この数値が上がる)一方で、蛋白質の摂取量や尿量、消化管出血の有無など腎臓以外の要素で上がったり下がったりすることがある検査項目です。

したがって、この値単体を見て、体の中でどういったことが起こっているのかを診断することはできません。

同じく腎機能を反映する血清Crの値や他の検査項目、画像診断などと合わせて総合的に、その原因を突き止めていくことが重要です。

異常値が出たら脱水・発熱・下痢・嘔吐・貧血・常用薬の有無などを検査して、再検査となり、尿タンパク・尿沈渣・クレアチニンなどの検査も同時に行ないます。

腎臓の機能が低下すると元に戻すことは難しいとされています。

しかし、早期に治療を開始すれば、腎臓の機能の低下を防いだり、進行を遅らせる事も可能ですので、病気の進行度合いや症状に応じた適切な治療を進めるためにも定期的に検査を受ける事が大切です。

参考になれば幸いです( ^ω^ )




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