発熱や全身の倦怠感・黄疸などの症状をともなう急性肝炎。
この急性肝炎が疑われう場合は、どのような検査をおこなわれるのでしょうか?
又、検査結果によっては入院が必要になりますが、治療はどの様に進めていくのでしょうか?
様々な心配が付きまといます。
そこで今回はその様な疑問にお答えすべく、急性肝炎について
- 検査法
- 入院期間
- 食事
- 看護
などをまとめました。
急性肝炎はどんな検査で診断するの?
急性肝炎の検査として、肝機能検査があります。
AST(GOT)、ALT(GPT)
肝機能検査では、肝細胞が破壊される事に伴い、血液中の濃度が上がる事になる酵素、
の血液濃度を測定します。
この正常値(基準値)は施設間や試薬によって一概には言えませんが、およそ上限は35-45IU/Lです。
急性肝炎の場合、初期はAST>ALT、回復期はALT>AST、治癒するとAST>ALTとなる傾向があります。
一概には言えませんが、この両者の値が500~1000IU/L以上の場合は、超急性期〜急性期の可能性が高いといわれ、100~200IU/Lの場合は急性期〜慢性期いずれの場合あり得ると言われます。
胆道系酵素
AST、ALT以外に肝機能をチェックする上で重要なものに、胆道系酵素と呼ばれる
- ALP(アルカリホスファターゼ)
- γGTP
があります。
これらはASTやALTが大して上昇していない状態で、数値が上がることがあります。
この場合は、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、急性胆管炎、胆管がんなどの可能性があります。
この際、黄疸や腹痛といった症状の有無のチェックも重要です。
その他、プロトロンビン時間(PT%)も肝機能の評価に重要な検査項目と言えます。
A型肝炎が疑われる時の診断
肝機能の状態(AST・ALTは正常値の5-10倍になります)と、血液中の「IgM-HAV」を測定して確認します。
B型肝炎が疑われる時の診断
血液検査により、肝機能の状態+B型肝炎が特定される状態を示すウイルスマーカーを測定する。
このウイルスマーカー検査では、B型肝炎のウイルス感染を示す、HBs抗原や、その状態により、IgM-HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体・HBc抗体・HBVーDNAなどを測定します。
AST・ALTは正常値の5-10倍になります。
C型肝炎が疑われる時の診断
血液検査として、IgM型HA抗体・HBs抗体・IgM型HBc抗体・HCV抗体を測定します。
A型B型肝炎ではないと確認されたら、HCV―RNAを検査して、HCVの抗体が陰性であり、低力値であれば、C型肝炎と診断される。
AST・ALTは正常値の5倍以内であることが多いです。
急性肝炎の治療は?入院期間は?
- 安静
- 保存的療法
が主な治療法となります。
急性肝炎の治療として最も大切な点は、安静にする事です。
この病気は、基本的には自然治癒するものですが、症状のピークの時期を過ぎたのか慎重に見極めて、重症化や劇症化への移行が無いかを見逃さない事が大切です。
急性肝炎は、重症化、劇症化しなければ、比較的スムーズに回復します。
A型・B型肝炎は一度の感染で終生免疫が成立し、再感染しません。
しかし、C型肝炎は急性期の後の蔓延化、慢性化に対して、インターフェロン治療が必要になります。
急性肝炎の場合は医師から入院を促され、病院内で安静にする事が治療とされます。
入院期間は?
患者の状態によりますが、
- 症状が軽い場合は1週間程
- 長い場合は2ヶ月程
かかる時もあります。
上記で述べました様に、特に治療はせず、ベットの上で安静にする事で肝血流量を増加させて、治療の速度や重症化の予防をします。
入院中は食欲不振などに伴い、ビタミン薬、ブドウ糖液の点滴を行う事はありますが、薬は肝臓に負担をかける為使用される事はあまりない様です。
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退院後の食事で気をつけることは?
回復期には、食欲も回復しますが、食欲が増してしまう事もありますので、その為に過度のエネルギーを摂取してしまい、体重の増加に繋がる危険があります。
それに加え、肝臓機能検査での数値の異常により、糖液の補給をされていると体重の増加がさらに進み、急性肝炎そのものは完治しても、脂肪肝になってしまう可能性があります。
その為、食欲が回復してきたら、糖液の補給は止め、食事療法に専念するようにします。
この場合の食事療法として、
- 脂質には制限はないが、蛋白質を1.5g/kg体重にし、1日1.800〜2.200kcalに抑える
- 加工食品には添加物が多く含まれており、肝臓への負担が大きくるので避ける
- アルコールの摂取も一切禁止
に注意しましょう。
急性肝炎の介護は?
A型・E型肝炎の場合
経口感染しますので、手洗いなどに気をつける必要があります。
特に家族には、感染予防に対し徹底指導する必要があります。
B型肝炎の場合
血液や体液による感染力が強いため、HBe抗体が陽性化するまで、血液の取り扱いには注意する必要があります。
C型肝炎の場合
70%は慢性化するため、血液の取り扱いには注意が必要です。
また、肝炎の症状は苦痛をともなうため、苦痛緩和にも気を配る必要があります。
- 参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P276〜280
- 参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P181〜192
- 参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P168〜190
- 参考文献:内科診断学 第2版 P877〜883
- 参考文献:診断に直結する検査の選び方、活かし方P80-89
最後に
- 肝機能検査をおこない診断する
- 安静にし、保存的療法をおこなう
- 症状が軽い場合は1週間程・長い場合は2ヶ月程の入院期間
- 改善後もアルコールを禁止し、添加物を避け、カロリー計算をし適量を摂取することに注意
- 感染予防も重要
肝臓は人体の中で最も大きな臓器です。
何かの原因で肝臓の機能に障害が起こっていても、再生能力が高く、そのまま機能し続けるために、病気への自覚症状が表れ難いとされています。
肝臓のその様な我慢強い性質に甘んじていると、病気が発見された時には進行がかなり進んでいる事も多いようです。
その様な事態を避ける為にも、日ごろからの生活習慣なども見直されて、肝臓への負担に不安を感じられたら早めに検査を受けられる事をお勧めします。