血液検査の結果で「血清アミラーゼ」という項目があります。
この血清アミラーゼとは何なのでしょうか?
また、アミラーゼの数値はどれくらいだと問題なのでしょうか?
今回は、血清アミラーゼ(英語表記で「Serum amylase」略語で「AMY」)について
- 検査で分かること
- 基準値
- 異常値で考えられる病気
- 注意点
をご説明したいと思います。
血清アミラーゼとは?
アミラーゼは、デンプンを糖に分解する消化酵素のことで、ジアスターゼとも呼ばれます。
主に膵臓、唾液腺から分泌されており、その他肝臓・心臓・肺・腎臓・小腸・横紋筋・乳腺・甲状腺などにも含まれています。
血液中に膵臓から分泌される膵型アミラーゼが40%、唾液腺から分泌される唾液腺型アミラーゼが約60%が正常な割合となります。
血清アミラーゼ(AMY)ってなんで検査するの?
膵臓に最も多く含まれることから膵臓に何らかの異常がある場合、膵臓の細胞が破壊されることによって血液や尿の中にアミラーゼが流出します。
このため、血清や尿中のアミラーゼを測定することで、膵疾患の診断や経過検察において有効とされます。
アミラーゼを測定する場合は、血液を採取して、血清部分を自動分析器にかけて測定するのが一般的な方法です。
また、血液以外にも尿から調べる尿アミラーゼというものもあり、検査方法も様々です。
血清アミラーゼ(AMY)の基準値と異常値は?
基準値(正常値)
検査の結果、血清アミラーゼが40~122IU/L であれば正常と判断されます。
なお、尿アミラーゼは、65~840IU/Lが正常値とされています。
異常値
上記の数値よりも高くても、低くても異常値とみなされます。
ですが、一回異常値が出たからといって判断するのではなく、数回検査を重ねて正確な数値を把握し、尿中アミラーゼとのバランスを見ることもあります。
異常のときに考えらえる病気は?
基準値(正常値)より高い時
などが疑われます。
最も有名なのが急性膵炎で、この場合基準値(正常値)の数倍からときに30倍まで高値となることがあります。
ただし、ここでの注意点として、アミラーゼの値と急性膵炎の重症度は相関しないということです。
また逆に、アルコール症や脂質異常症を伴う場合、急性膵炎があってもアミラーゼの値が高くならない場合もあり注意が必要です。
アミラーゼ低値の急性膵炎もある。
という点を押さえておきましょう
基準値(正常値)より低い時
- 慢性膵臓炎
- 流行性肝炎
- 中毒性肝炎
- 肝硬変
などの肝臓疾患が疑われます。
また、高度の糖尿病もあります。
血清アミラーゼ(AMY)の検査で注意すべき点は?
アミラーゼの値を見るときの注意点として
- アミラーゼの検査値は様々な状況により変わる。
- アミラーゼには主に2つの型がある。
ということが挙げられます。
アミラーゼの検査値は様々な状況により変わる。
検査法には色々あり、正常値は種類により違ってきますので、どの検査を用いたかを把握してから数値を読むようにして下さい。
新生児では低値を示しますが、5〜10歳頃にはほぼ成人と同じ値となり、その後60歳ぐらいまでは有意な変動はありません。
やせている方は、血中アミラーゼは約20%ほど高くなる傾向になります。
また、前日に多量の飲酒をすると、検査に影響しますので、前日から禁酒しましょう。
アミラーゼには主に2つの型がある。
アミラーゼは膵臓と唾液腺で分泌される物質です。
ですので、血液検査の結果アミラーゼの数値が高値であっても、それだけでは膵臓に関した病気なのか、唾液腺に関した病気なのかを推定することは不可能です。
そこで、どちらかを推定するためにはアイソザイム測定が行なわれます。
膵臓と唾液腺では同じアミラーゼでもアミノ酸配列が違いますので、アイソザイム測定を行うことで、アミラーゼが高値になる原因となっている由来臓器を推定する事が可能となります。
- 膵臓由来のアミラーゼ:膵臓アミラーゼやP型
- 唾液腺など由来のアミラーゼ:唾液腺アミラーゼやS型
と言います。
ただし、S型は以下の唾液腺疾患以外の場合にも上昇することがあり注意が必要です。
S型アミラーゼが高値を示しうる疾患
- 唾液腺疾患
- 外科手術後
- アミラーゼ産生腫瘍(肺がん、卵巣がん、大腸がんなど)
- 肝胆道疾患
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 肺疾患
- ショック後
- 熱傷後 など
参考文献:今日の臨床検査2011 2012P238・239
参考文献:改訂新版 検査と数値を知る事典P150・151
参考文献:検査結果なんでも早わかり事典P132・133
参考文献:最新 病気の検査がよくわかる医学百科P120
最後に
今回はアミラーゼについてまとめました。
- アミラーゼは主に膵臓と唾液腺で分泌される物質。
- 高値を示す最も有名な病気が急性膵炎である。
- ただし、アミラーゼの値は急性膵炎の重症度は相関しない。
- それ以外にも様々な病気で高値や低値となる。
- 特に唾液腺疾患でも高値となることがあるので、アミラーゼの値だけで膵炎などとは診断できない。
という点が重要です。
特に急性膵炎の診断には、アミラーゼの他に、
- リパーゼ
- エラスターゼⅠ
という酵素やCTなどの画像診断も重要な役割を果たします。
参考になれば幸いです( ^ω^ )