尿検査で蛋白が陽性になると・・・
「何か腎臓の病気?」
「悪いとこがあるのかな?」
と心配になります。
しかし、この尿に蛋白が含まれる場合、全てが何らかの病気につながるわけではなく、病気でない生理的な蛋白尿が考えられる場合もあります。
そこで、今回は尿検査での蛋白が出る原因について
- 病気の場合
- 病気以外の場合(生理的な場合)
- 女性特有の蛋白尿
に分けて解説します。
尿検査で蛋白が!原因は?
尿蛋白は、尿に含まれる蛋白質で、通常は腎臓でろ過されるため、尿に混じることはありません。
しかし、何らかの原因で尿に蛋白が混じって出ることがあり、それを尿蛋白といいます。
尿検査で蛋白が陽性と引っかかる原因として、病気が関連する場合と、病気以外の場合があります。
病気でない尿蛋白の原因
病気でない尿蛋白の原因には、以下のようなものがあります。
- 生理前
- ストレス
- 精神的な興奮
- 精神的ショック
- 発熱(高熱)
- 寒さ
- 激しい運動
- たんぱく質過剰摂取
- 入浴後
- 脱水
- 体位によって出る尿蛋白(あとで説明します。)
これ以外では、精液が混じったり、膣からの分泌物で陽性反応が出ることもあります。
この病気が原因でない場合のものを、生理的蛋白尿と呼びます。
ところで、どうして病気じゃないのに、蛋白尿が出るのでしょうか?
体の中の血流が増えることで、腎臓に流れる血流も増えることになります。
そうすると腎臓がろ過する血漿蛋白が増えてしまい、尿に蛋白が出ることがあります。
これを生理的蛋白尿の中でも、機能性蛋白尿と言います。
一方で、体位によって蛋白尿が出ることがあり、これを体位性蛋白尿と言います。
体位性蛋白尿とは?
体位によって蛋白尿が出ることがあるのは次の2つです。
- 起立性蛋白尿
- 前彎(ぜんわん)性蛋白尿
専門用語が出てきて、ちょっと難しいですが、図を入れてわかりやすく解説しますね。
起立性蛋白尿
寝ている状態での尿ならば尿蛋白は出ないのに、起立、つまり立った状態が続くと尿蛋白が出てしまうことがあります。
これを起立性蛋白尿と言います。
ですので、尿蛋白の原因が起立性蛋白質であるということを判定するには、起床後すぐの早朝尿をチェックすればいいということになります。
起きてすぐならば、寝ている状態での尿を見ることができるためです。
前彎(ぜんわん)性蛋白尿
脊椎を前彎された状態(つまり下の図のように後ろに反った状態)が続いた結果、蛋白尿が出ることがあります。
これを前彎(ぜんわん)性蛋白尿と言います。
尿蛋白の原因が、反り返った状態が続いたため出た尿蛋白(前彎性蛋白質)であるということを判定するには、この前彎位※を5~10分間取った後に検尿します。
※前彎位とは脊椎を15°~20°前彎させた姿勢。脊椎を前に突き出すとイメージしていただけると前彎の上の図がしっくりくると思います。
- 病気でない状態で出る蛋白尿を生理的蛋白尿という。
- 生理的尿蛋白には大きく機能性蛋白尿と体位性蛋白尿の2種類に分けられる。
- 機能性蛋白尿は腎臓のろ過する血漿蛋白が増えることで蛋白尿が出るもの。
- 体位性蛋白尿は体位により蛋白尿が出るもの。
・
・
・
病気が原因ではない生理的蛋白尿は、結構たくさんあるんですね。
尿蛋白が出た場合、これらを全部考えて除外していくのは大変そうですね。
ですので、尿蛋白が陽性となった場合は、これらの病気でない尿蛋白なのかどうかをチェックするためにも、まずは再検査が重要となります。
どのような場合に尿蛋白が陽性となるのかの基準や、陽性となった後の検査の流れについてはこちらに詳しくまとめました。
→尿検査の蛋白の基準値は?
また検尿で尿蛋白が陽性となるのはどれくらいの割合なのかはこちらに記載しました。
→【年齢別】尿検査で蛋白が陽性になる割合はどれくらい?
病的な尿蛋白の原因
病的な尿蛋白の原因として、大きく以下の3つに分けられます。
- 腎前性(じんぜんせい)
- 腎性(じんせい)
- 腎後性(じんごせい)
それぞれについて説明します。
腎前性蛋白尿
腎前性とは腎臓よりも前の段階に原因があり、血中に異常なタンパクが増加し、それが尿中に漏れ出ることを言います。
この原因としては、
- 多発性骨髄腫(ベンスジョーンズ蛋白が漏れ出る)
- 溶血性疾患(ヘモグロビン尿となる)
- 横紋筋融解症(ミオグロビン尿となる)
- 甲状腺機能亢進症
- 心不全
- 妊娠(生理的な状態から病的な状態まで)
などが挙げられます。
腎性蛋白尿
腎性とは、腎臓そのものに原因があり、尿をろ過する糸球体の障害によりタンパクが尿中に漏れ出ることをいいます。
この原因としては
- 糖尿病性腎症
- 糸球体腎炎
- ネフローゼ症候群
- 腎硬化症
- 膠原病
- アミロイド腎
- 妊娠中毒症
- ファンコニ症候群
- Lowe症候群
- Wilson病
- 重クロム酸・水銀・カドミウム中毒
- 腎毒性薬剤
などが挙げられます。
腎後性蛋白尿
腎後性とは腎臓よりも後ろの段階に問題があるものを指します。
ろ過された尿が腎盂よりも下の尿路(尿管、膀胱、尿道)の異常によりタンパクが尿に出てしまいます。
ここの原因としては、
- 尿路の炎症
- 尿路の結石
- 尿路の腫瘍
などが挙げられます。
しかし、この尿蛋白が出たからといってすぐに病気と結びつくわけではありません。
上記でご説明したような病気以外が原因の場合もあるため、何度かに分けて検査を行います。
そして、毎回続くようならば、病気を疑い、さらなる検査(蓄尿、尿沈渣、腎機能検査、画像検査など)が必要となり病気の特定に至ります。
→尿検査の蛋白の基準値は?前日の注意点は?
女性特有の尿蛋白の原因
先ほどの病気ではない原因で陽性となってしまう尿蛋白のところでも出てきましたが、女性の場合は、妊娠中にも尿蛋白が出ることがあります。
妊娠中は、検診時に毎回尿検査しますが、妊娠中の尿蛋白の数値を見ることで、妊娠中毒症が隠れているか判断するためでもあるのです。
妊娠中は普段よりも尿蛋白が出やすく、母親自身の分だけでなく、胎児の分もろ過するためと言われています。
しかし、検診の度に尿蛋白が陽性となる場合は、詳しい検査をし早期に治療する必要があります。
妊娠中毒症を放置すると、妊娠高血圧症候群や腎臓にも負担がかかり、流産や胎盤早期剥離の原因ともなり、母子共に危険な状態に陥ることがあるためです。
参考文献:
最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P45〜49
今日の臨床検査 2011ー2012 P29
最新 検査のすべてP19
よくわかる検査数値の基本としくみP52・53
新版検査と数値を知る事典P181
病気がみえる腎泌尿器 P21
最後に
今回は、尿蛋白の原因についてまとめました。
今回のポイントはこちら。
- 尿蛋白の原因は、病気ではない原因と病気が原因の場合がある
- 病気が原因でない場合の尿蛋白を、生理的蛋白尿という。
- 生理的蛋白尿には、機能性蛋白尿と体位性蛋白尿がある。
- 病的な蛋白尿は、腎前性・腎性・腎後性に分けられる。
- 女性の場合、妊娠中に出やすい。妊娠中毒症にも注意が必要。
尿検査で尿蛋白が陽性になった=病気がある。というわけではありません。
生理的な蛋白尿もありますので、再検査を行います。
この再検査を受けることで余計な心配を軽減できることもありますし、仮に病気が見つかったとしても早期発見早期治療することにより腎臓の負担・機能の障害を抑えることができます。
ですので、尿蛋白が陽性となった場合は、まずは再検査を受けるようにしてください。
皆様の参考になれば幸いです( ^ω^ )