尿検査をして、分かる項目の一つに尿ビリルビンがあります。
ビリルビンというと、新生児期(生まれてすぐ)に調べる黄疸の検査を思い浮かべる方も多いと思います。
新生児黄疸の場合は、血液中に含まれるビリルビンを調べて診断しますが、実はある病気が原因で、尿にビリルビンが含まれることもあるのです。
そこで今回は、尿ビリルビンについて、どんなものなのかを説明しつつ
- 基準値
- 病気
- 注意点
をお話ししたいと思います。
尿ビリルビンとは?
ウロビリノーゲン同様に、赤血球中のヘモグロビンが代謝されてできる物質です。
ビリルビンは肝臓で処理され、間接ビリルビンから直接ビリルビンとなり、胆道から胆汁として腸管に排泄されます。
ですので、正常ですと尿からビリルビンは検出されないのです。
ところが、胆道に閉塞などがあれば、直接ビリルビンが胆道から排泄されなくなります。
排泄されない直接ビリルビンは、血中にあふれてきて、腎臓から尿中へ排泄されることになります。
これが尿へビリルビンが出てくる機序になります。
ですので、尿検査でビリルビンを調べる目的は、基本的に、肝臓や胆道系疾患のスクリーニングとして行われます。
2種類あるビリルビン
ちなみに、ビリルビンには上のように間接ビリルビンと直接ビリルビンがあり、これらを合わせて総ビリルビンと言います。
つまり
- 総ビリルビン=間接ビリルビン+直接ビリルビン
ということですね。
間接ビリルビンは、腎臓からは排泄されず、尿中ビリルビンは、直接ビリルビンのことを意味します。
尿ビリルビンの基準値は?
検査は一般的に、試験紙法(ジアゾ反応)という定性法が用いられます。
健常者なら尿中ビリルビンは検出されないので、陰性ならば問題がなく、正常(基準)としています。
ビリルビン濃度が0.4〜0.8mg/dLで陽性化します。
尿ビリルビンが陽性な場合考えられる病気は?
胆道が詰まった状態となると、ビリルビンがあふれて逆流することで血液中に入り、腎臓から尿に排泄されるようになります。
そのため、陽性の場合は、胆道の閉塞が疑われます。
胆道の閉塞だけでなく、急性肝炎や肝臓がんでもビリルビンの排出が不良となります。
- 肝障害
- 肝内胆汁うっ滞
- 肝外胆汁うっ滞(閉塞性黄疸)
肝障害では、急性肝炎・肝硬変・原発性肝炎・高濃度うっ血性心不全・薬物性肝障害などが原因となります。
閉塞性黄疸では、胆石症(中でも総胆管結石)・胆嚢胆肝炎・膵頭部癌などが原因となります。
尿ビリルビンの検査をする上での注意点は?
尿ビリルビンは、光や酸化剤、重金属や高温、長時間室温で放置すると成分が変化してしまいます。
例えば、酸性化で発色するビリジウムのような薬物の代謝物によって偽陽性となってしまうこともあるのです。
そのため、新鮮な尿(1時間以内の尿)を用いて検査を行う必要があります。
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012 P33
参考文献:最新 尿検査 その知識と病態の考え方P63〜67
参考文献:よくわかる検査数値の基本としくみP114・115
最後に
- 尿ビリルビンは、赤血球中のヘモグロビンが代謝されてできる物質
- 尿中ビリルビンは、直接ビリルビンのことをいう
- 陰性を基準値とする
- 試験紙法(ジアゾ反応)にて、ビリルビン濃度が0.4〜0.8mg/dLで陽性化
- 尿ビリルビンが陽性の場合、胆嚢周辺の閉塞が疑われる
- 新鮮な尿(1時間以内の尿)を用いて検査を行う必要がある
ビリルビンは黄色い色をしています。
そのため、ビリルビン値が上昇すると、皮膚や眼に黄疸が現れます。
同様に、尿ビリルビンが陽性の場合、尿の色にも変化が現れ泡沫が黄色く染まり、茶〜褐色尿となります。