
肝臓に病気があると、黄疸・腹水をはじめとする様々な症状が出現することがあります。
しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることでも有名です。
これらの症状が出現するのは病気が進行した際であることが多く、初期には無症状なこともあります。
では、症状があらわれる前に肝臓の病気を調べるには、どんな検査が必要になるのでしょうか?
今回は、肝臓の検査について
- 検査の種類
- 検査の方法
- 何科を受診すればいいのか
- 費用はどれくらいかかるのか
など、分かりやすく説明したいと思います。
参考にされてください。
- 肝臓の検査は、血液検査(肝機能検査・肝炎ウイルス検査)と画像検査(腹部超音波・CT・MRI)が中心です。
- 最初に行われることが多いのは、血液検査と、体への負担が少ない腹部超音波検査です。
- 肝臓の組織を直接調べる肝生検や、お腹の中を観察する腹腔鏡検査は、診断を確定したいときに行います。
- 健診で異常を指摘されたら、内科・消化器内科・肝臓内科を受診しましょう。
- 基準値は施設や測定法で異なります。検査結果に書かれた基準範囲もあわせて確認してください。
肝臓の検査とは?どんなものがある?
- 血液検査
- 画像検査
- 腹腔鏡検査
- 肝生検

肝臓の血液検査とは?

肝臓には代謝・蛋白の合成・解毒・胆汁の合成などをする働きがありますが、そういった肝臓の機能を調べるのが、肝機能検査です。
肝機能検査・肝炎ウイルスマーカー・免疫学的検査などがあります。
肝機能検査
肝機能検査は血液検査としておこなわれます。基準値は、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が公表している共用基準範囲(健康な成人の測定値から算出)を目安として、以下に示します。
それぞれの肝機能検査の意味と、該当する項目は以下の通りです。
肝細胞の壊死を反映する項目
- トランスアミナーゼ(AST,ALT)
- LDH
肝炎や肝硬変などの肝障害ではこれらの酵素が逸脱するため、値が上昇します。

基準値は?
- AST:13〜30 U/L
- ALT:男性10〜42 U/L、女性7〜23 U/L
- LD(LDH):124〜222 U/L
障害時の動向:上昇
以前は、IU/Lと表記していましたが(読み方はインターナショナル・ユニット(International unit(国際単位))パー・リットル)、現在では、U/Lを使用するようになっています。
肝細胞の合成能障害を反映する項目
- アルブミン(Alb)
- コリンエステラーゼ(ChE)
- 凝固因子(PT)
- 総コレステロール(T.Cho)
肝障害ではこれらを肝臓がうまく生成できなくなり、値が下がります。

アルブミンは、血漿タンパクの一つであり、総タンパクの50-70%を占めます。
このアルブミンが低下すると、血管内に水を引っ張ることができなくなり(膠質浸透圧が下がり)、腹水や胸水、むくみ(浮腫)の原因となります。体に水がたまる関連の病気として、肺水腫もあります。
基準値は?
- アルブミン(Alb):4.1〜5.1 g/dL
- コリンエステラーゼ(ChE):男性240〜486 U/L、女性201〜421 U/L
- 凝固因子(PT):基準値は施設・試薬で異なるため、結果に書かれた基準範囲を確認
- 総コレステロール(TC):142〜248 mg/dL
線維化の程度を反映
- ヒアルロン酸
- Ⅳ型コラーゲン
基準値は?
- ヒアルロン酸・Ⅳ型コラーゲン:基準値は測定法で異なるため、結果に書かれた基準範囲を確認
肝障害に伴う血清蛋白成分の変化を反映
- 膠質反応(TTT,ZTT)
- γ-グロブリン(IgG,IgA,IgM)
基準値は?
- 膠質反応(TTT:チモール混濁試験、ZTT:硫酸亜鉛混濁試験)やγ-グロブリンの基準値は、測定法・施設で異なるため、結果に書かれた基準範囲を確認
胆汁うっ滞を反映
- 胆道系酵素(ALP、γ-GTP)
- 直接ビリルビン
- 総コレステロール(T.Cho)
胆道系酵素は、トランスアミナーゼとともに肝機能検査で取り上げられる項目です。

胆道が閉塞して胆汁の排泄が障害された時に上昇します。
基準値は?
- ALP:38〜113 U/L(IFCC法。従来のJSCC法では106〜322 U/L。測定法で数値が大きく変わるので注意)
- γ-GTP:男性13〜64 U/L、女性9〜32 U/L
- 総ビリルビン:0.4〜1.5 mg/dL(直接ビリルビンの基準値は施設で異なる)
- 総コレステロール:142〜248 mg/dL
肝臓での取り込み排泄障害を反映
- ICG試験15分値
- BSP試験45分値
基準値は?
- ICG(インドシアニングリーン)試験15分値、BSP(ブロムサルファレイン)試験45分値:基準値は施設・方法で異なるため、検査を行った施設に確認
(以上の基準値は施設や測定法で多少異なります。出典:JCCLS共用基準範囲 基準範囲一覧。人間ドックや健診の判定区分は、これとは別の基準で判定される場合があります)
異常のパターンと考えられること
| 結果 | 考えられること |
| AST・ALTの上昇 | 肝細胞が傷んでいる(肝炎・脂肪肝・飲酒・薬など) |
| γ-GTP・ALPの上昇 | 胆汁の流れが悪い、飲酒など |
| アルブミン・ChE・PTの低下 | 肝臓でのたんぱく合成の低下(肝硬変など進んだ状態) |
| ヒアルロン酸・Ⅳ型コラーゲンの上昇 | 肝臓の線維化が進んでいる |
肝炎ウイルスマーカー
B型・C型肝炎を調べる検査です。
- B型肝炎ウイルスマーカー
HBs抗原・HBs抗体・HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA・HBc抗体
- C型肝炎ウイルスマーカー
HCV抗体・HCV-RNA・HCVコア抗原・ウイルスの型
などを調べます。
免疫学的検査
病原体に対する抗体などの有無や種類を調べます。
それにより、特定の種類の病原体の感染を知ることができます。
肝臓の働きについては、肝臓の働きとは?代謝・解毒・胆汁生成をイラストで分かりやすく説明で解説しています。
胆道系酵素のALPが高い原因は、ALP(アルカリフォスファターゼ)が高い原因は?基準値と受診の目安で解説しています。
肝臓の画像検査とは?
肝臓の画像検査には
- 腹部超音波検査
- CT検査(単純CT・造影CT)
- MRI検査
- 血管造影検査
などがあります。
腹部超音波検査

肝臓の大きさ・形・腫瘤の有無・肝内血管・胆管の拡張・狭窄などを調べることができます。
エコーを腹部に当てるだけで調べることができ、副作用の影響等もないので、まず初めにおこなわれることの多い検査です。
CT検査

X線を用いて、あらゆる方面から撮影した断面図を画像化する検査です。
造影剤を用いる検査と用いない検査があり、肝臓の形や病変を描出することができます。
MRI検査

放射線ではなく、磁気を利用して体の断面を映し出す検査で、被曝はありません。
CT同様、肝臓の形や病変を描出することができ、CTよりも軟らかい組織のコントラストが得やすい検査です。
さらにEOBプリモビスト造影剤を用いることにより、肝臓癌(肝細胞癌)の描出がよりされやすくなりました。
血管造影検査

肝臓に流入する肝動脈や門脈という血管を造影して映し出す検査です。
肝臓にある腫瘤の血管との関係の描出に優れます。
ただし、現在はダイナミックCTでこれらの血管は細かいところまで描出できるため、検査よりは、肝細胞癌などの治療(肝動脈塞栓術(TAE))で行われることが多いです。

腹部エコーで肝臓に影があると言われたときは、腹部エコーで肝臓に影があると言われたら?考えられる病気と精密検査の目安もご覧ください。
肝臓の腹腔鏡検査とは?
局部麻酔下でおこなわれる検査で、腹腔内に気体を注入し、臓器を直接観察できる検査です。画像検査が進歩したため、行われる機会は以前より限られます。
診断だけでなく、生検や治療にも有用です。
肝生検とは?
肝組織の一部を採取し病理診断する検査です。
腹腔鏡下でおこなうことが多くありましたが、最近では超音波ガイド下で自動生検針を使った経皮的生検が増加しています。
肝臓の検査は何科でおこなう?
肝臓に異常(の可能性)を指摘されたら
- 内科
- 消化器内科
- 消化器外科
- 肝臓内科
などの科を受診しましょう。
肝臓の検査費用はどれくらいかかる?
保険適用かどうかで金額は大きく異なりますが、3割負担の場合でご説明します。
- 血液検査・・・1,000~2,000円(ただし、血液検査の種類によって異なり、大きく差が出る)
- 画像検査・・・10,000円前後
- 腹腔鏡検査・・・50,000円〜(検査のみか治療や生検をおこなうかによっても大きく異なる)
- 肝生検・・・40,000円前後
これらは記事作成時のあくまでも目安であり、医療機関や方法、診療報酬の改定によって異なります。
ほかの検査項目の見方 → 健康診断の結果の見方まとめ(A〜E判定の意味と検査項目の一覧)

参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P258〜264
参考文献:消化器疾患ビジュアルブック P162〜167
参考文献:消化器看護ポケットナビP9・10
参考文献:きょうの健康 検査でわかること
参考文献:今日の臨床検査 2011ー2012
肝臓の検査についてよくある疑問
Q. 肝臓の病気は、血液検査だけでわかりますか?
A. 血液検査で肝臓の状態の見当はつきますが、原因や進み具合は、腹部超音波・CT・MRIなどの画像検査もあわせて調べます。必要なときに肝生検を行います。
Q. どんな症状が出たら、すぐ受診したほうがいいですか?
A. 白目や皮膚が黄色い(黄疸)、お腹がふくれる(腹水)、尿が濃い茶色になる、強いだるさが続くなどです。気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してください。
Q. 肝炎ウイルスの検査はどこで受けられますか?
A. 病院の血液検査や、人間ドックの項目に含まれる場合があります。内科・消化器内科・肝臓内科で相談してください。
最後に
- 肝臓の検査には、血液検査・画像検査・腹腔鏡検査・肝生検などがある
- 肝臓の検査は消化器内科、肝臓内科、消化器外科が良い
肝臓は症状が出にくい場所であるため、人間ドック等、健康診断で異常が見つかり再検査となることがほとんどです。
症状が出てきた時には、病気が進行していることも多くあります。
そのため、検査は早め早めに受けるのが良いでしょう。





