
プロトロンビン時間(PT:prothrombin time)とは、血液中にあって止血作用を担う凝固因子の働きを調べる検査の一つで、血漿に組織トロンボプラスチンとカルシウムを加え、血液が固まる(フィブリンができる)までの時間を測定する検査のことです。
検査をするために採血をして測定します。
今回はこのプロトロンビン時間(PT)について
- プロトロンビン時間(PT)を測定することでわかること。
- プロトロンビン時間(PT)が高い(延長)場合、低い(短縮)している場合に考えられること。
を中心にまとめました。
先に結論:プロトロンビン時間(PT)の見方
- PTは血が固まるまでの時間で、基準値の目安は約10~13秒(日本臨床検査医学会の学生用共通基準範囲2025では9.5~13.5秒。施設や試薬で異なります)
- 延長:肝臓の働きの低下、ビタミンK不足、ワルファリンなどの薬、DICなどで起こります
- 短縮:臨床的な意味は延長ほど大きくなく、症状が出ないことがほとんどです
- ワルファリンの管理にはPT-INRを使い、目標は病気や年齢で医師が決めます
- 1回の結果だけで判断せず、APTTや肝機能など他の検査と合わせて見ます。出血しやすい症状があれば早めに受診しましょう
プロトロンビン時間(PT)ってなんで検査するの?
プロトロンビン時間は、止血作用を担う血液中の凝固因子の働きを調べる検査の1つです。
凝固因子(ぎょうこいんし)とは、血液を凝固させる、つまり固める作用を持つ因子です。
少し難しいですが、凝固因子には内因系と外因系と呼ばれる2つの経路が関与しています。
プロトロンビン時間はこのうち、外因系の検査として用いられます。
一方で、内因系の検査には、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が用いられます。

この2つの値の組み合わせにより欠乏が疑われる凝固因子を推測することができます。
- 肝機能
- 急性肝炎の時の重症度の判定
- 抗凝固剤の使用適量を調べるための指標
- 血液が固まりにくい病気の検査
肝機能

プロトロンビン時間(PT)は、血液凝固因子と呼ばれる血液を固める作用のあるタンパク質に関した検査値です。
現在少なくとも12種類の血液凝固因子が分かっていますが、そのほとんどは肝臓で作られています。
肝機能が低下すると、血液中の血液凝固因子が減ってしまい、血液が固まるのに時間がかかることになります。
そのため、肝機能検査の一つとしても測定されます。
プロトロンビンは血液凝固因子の第II因子で、トロンボプラスチンという物質を加えると固まります。
ですので、血漿にトロンボプラスチンを加え、固まるまでの時間を測定したものが、プロトロンビン時間(PT)です。
急性肝炎の時の重症度の判定
プロトロンビンの減少はアルブミンよりも早く起こるので、急性肝炎時の重症度の判定にも有効とされます。
抗凝固剤の使用適量を調べるための指標
また、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症が起こった場合や、心臓の手術の時には、抗凝固剤を用いますが、過剰に投与すると血液が固まらなくなる危険があります。
ですので、抗凝固剤の使用適量を調べるための指標としても用いられます。
その評価には、後で解説をするプロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR)を指標とします。
血液が固まりにくい病気の検査
他には、血友病などの血液が固まりにくい病気の検査としても使われています。

血を止めるはたらきをもつ血小板については、血小板(Plt)は多い・少ないと問題?基準値は?で解説しています。
プロトロンビン時間(PT)の正常値(基準値)と異常値は?

プロトロンビン時間(PT)の正常値(基準値)は?
血液が凝固するまでの時間が、おおむね10~13秒なら基準範囲内です。
基準値は測定に使う試薬や機器、施設によって多少異なります。日本臨床検査医学会の学生用共通基準範囲(2025年改定。JCCLSの共用基準範囲に準拠)では、PTは9.5~13.5秒、活性値80~120%、INR 0.9~1.1とされています(日本臨床検査医学会 2025)。結果票に書かれた基準範囲も確認してください。
このプロトロンビン時間の測定値の表示には、この凝固時間の他に
- プロトロンビン活性値(%):基準範囲の目安は80-120%
- プロトロンビン比(検体凝固時間/対照凝固時間):1.0前後
- プロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR):基準範囲の目安は0.9-1.1
などがあります。
プロトロンビン活性値(%)
プロトロンビン活性値(%)は肝機能を評価するChild-Pugh分類で評価する1項目に含まれています。
プロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR)
プロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR)は、ワルファリン(ワーファリン®)という血液を固まりにくくする抗凝固薬のコントロールに用いられます。
ワーファリン内服時の目標のPT-INRは、病気や年齢によって異なり、主治医が決めます。自己判断で薬を調整しないでください。
※PT-INRはprothrombin time-international normalized ratioの略です。
プロトロンビン時間(PT)の異常値は?
基準範囲より時間が長い場合を「プロトロンビン時間が延長している」、短い場合を「短縮している」と表現します。

異常のときに考えられる病気は?
血液が凝固するまでの時間が長すぎても(プロトロンビン時間が延長(高値))、短すぎても(プロトロンビン時間が短縮(低値))異常とみなされます。
そのときに考えられる病気について以下にそれぞれ挙げていきます。

プロトロンビン時間(PT)値が延長(高い)している場合
- 先天性凝固因子欠乏症や異常症など。
- ビタミンK欠乏症
- 肝障害:劇症肝炎、急性肝炎、肝硬変、胆道閉塞症など。
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 多発性骨髄腫
- 線溶亢進
- 尿毒症
- 大量出血
- 薬剤投与(ワルファリンカリウム、抗生剤などの服用など。)
これらの原因が考えられます。なお、ヘパリンは主に活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を延長させます。
プロトロンビン時間が延長している場合は、
- 血液が止まりにくいなどの出血傾向
- 肝障害がある場合は倦怠感、黄疸、意識障害、食欲不振
などの症状が出ることがあります。
プロトロンビン時間(PT)が短縮(低い)を示す場合
- 凝固因子などの製剤を投与している
- 血栓症
- 生理的変動
- 妊娠
これらの原因が考えられます。
プロトロンビン時間が短縮している場合は一般的には症状はなく、病気の手がかりとしての意味も延長ほど大きくないとされます。
肝臓の働きが低下する肝不全については、肝不全とは?原因や症状、診断や治療についてで解説しています。
PTとAPTTの組み合わせで見る
PTは外因系、APTTは内因系の検査です。両方を組み合わせると、原因の見当をつけやすくなります。
| PT | APTT | 考えやすいこと |
|---|---|---|
| 延長 | 正常 | ビタミンK欠乏、ワルファリン内服、肝臓の働きの低下の初期など |
| 正常 | 延長 | 血友病などの内因系の凝固因子の不足、ヘパリンなど |
| 延長 | 延長 | 重い肝障害、DIC、複数の凝固因子の不足など |
実際の診断は症状や他の検査と合わせて医師が行います。
プロトロンビン時間(PT)の検査で注意すべき点は?
プロトロンビン時間(PT)の検査は、困難な点が多く、数値の変動が比較的多い検査で、一回の検査結果だけで異常とは判断できませんので、再検査の必要があります。
また、心臓病などの血栓症予防として抗凝固剤を服用していると、凝固時間が延長しますから検査の前にその事を伝えるようにして下さい。
同じく肝臓の働きを調べる血液検査の総蛋白は、総蛋白(TP)の基準値は?高い・低いとどんな病気の可能性がある?で解説しています。
プロトロンビン時間(PT)のよくある疑問
Q. 再検査はどうする?
PTは変動しやすい検査です。ワルファリンなどの内服薬、抗生剤、サプリメント、直近の下痢や食事量の低下は結果に影響することがあるため、再検査のときに医師へ伝えてください。再検査の時期は結果の程度によって異なります。
Q. 何科を受診すればよい?
健診で指摘された場合は、まず内科(肝臓が心配なら消化器内科・肝臓内科、血が止まりにくい症状があれば血液内科)で相談します。歯ぐきや鼻からの出血が続く、あざができやすい、黒い便が出るなどの症状があるときは早めに受診してください。気になる症状や結果があれば、医療機関へご相談ください。
最後に
プロトロンビン時間の検査とは…
- 血液凝固因子と呼ばれる血液を固める作用のあるタンパク質に関した検査
- 血液が凝固するまでの時間の基準範囲の目安は約10~13秒(施設で異なる)
- 基準範囲より長い(延長)場合も、短い(短縮)場合も、他の検査と合わせて原因を調べる
- ただしPTの検査の数値は変動が多く、一度の検査だけでは正確に値が出ない場合がある
- 抗凝固剤を服用している場合は検査前に伝えること
検査の結果、異常がみられる場合は、活性化部分トロンボプラスチン時間など、他の血液凝固に関する検査を受けます。
肝硬変などの肝臓病の場合には、他の肝機能検査の結果と照らし合わせて診断し、治療を進めて行きます。
ビタミンK欠乏症では出血しやすくなることがあるため、原因を調べたうえで治療を行います。
また、心臓や脳の病気のために飲んでいる抗凝固薬が延長の原因である場合は、薬が効いている結果ですので、指示された通りに飲み続けて、主治医に結果を確認してください。
参考文献:日本臨床検査医学会標準化委員会. 学生用共通基準範囲の考え方と利用時の留意事項-2025年改定(原本)





