
無症状だったのに、健康診断で異常が見つかり、詳しい検査をしたところ「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」と診断され戸惑われている方・・・いらっしゃるのではないでしょうか?
※この病気は2016年に名称が変更され、それまでは「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていました。
「原発性?」
「胆汁性?」
「胆管炎?」(旧称では「肝硬変」)
わかりにくいですよね。
そこで今回は、原発性胆汁性胆管炎(英語表記で「Primary Biliary Cholangitis」略してPBC。旧称は「Primary Biliary Cirrhosis」)について
- 症状
- 合併症
- 診断基準
- 治療法
ということを実際のCT画像や図を用いてわかりやすくまとめました!
- 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、自己免疫のしくみが関わって肝臓の中の小さな胆管が少しずつ壊れ、胆汁の流れが滞る慢性の病気です。2016年に、旧称の「原発性胆汁性肝硬変」から名称が変わりました。
- 中年以降の女性に多く、診断された時点で症状がない人が7〜8割とされます。診断される人の7〜8割は肝硬変に至っていません。
- 診断は、胆道系酵素(ALP・γ-GTP)の上昇と、抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性が大きな手がかりです。
- 治療はウルソデオキシコール酸(UDCA)が第一選択で、効果が不十分な場合に追加の薬を検討します。進行して肝硬変になった場合は肝移植が選択肢になります。
- 健診でALP・γ-GTPの上昇を指摘されたら、肝臓内科や消化器内科で相談しましょう。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)とは?

まず胆汁は、肝臓で作られて胆嚢に蓄えられ、十二指腸に送られる消化液です。
また、肝硬変は肝臓が硬く変化した、肝機能が著しく低下した、肝臓だけでなく全身にも影響を及ぼす病気です。

そして・・・この原発性胆汁性胆管炎は、肝臓の中の小さな胆管に慢性の炎症が起こり、胆管が壊れて減っていくことで胆汁の流れが滞る(胆汁うっ滞)疾患です。進行すると線維化が進み、肝硬変に至ることがあります。「原発性」とは、他の病気が原因ではなく、その臓器で最初に発症するという意味です。
原因はまだ十分にはわかっていませんが、自己免疫のしくみが関わると考えられています。とくに、中年以降の女性に好発するのが特徴です。
厚生労働省の研究班による2018年の全国調査では、患者数は全国で推定約3万7千人、男女比は約1対4.3で、男性の割合が増えてきています(PBC診療ガイドライン2023)。
病名が変わった理由:昔は肝硬変まで進行してから診断されることが多かったため「肝硬変」の名がつきましたが、現在は早期に診断できるようになり、診断される人の多くは肝硬変に至っていません。そこで2016年に、日本肝臓学会と日本消化器病学会が「原発性胆汁性胆管炎」への変更を決めました(Shimoda 2016、難病情報センター)。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)の症状は?
無症状な人も多いものの、自己免疫疾患・胆汁うっ滞・肝硬変によるそれぞれの症状を伴います。
- 皮膚の痒み
- 疲労感
- 倦怠感
- 黄疸
- 浮腫
- 腹水
- 吐血や下血
- 骨粗鬆症
- 肝性脳症
この病気の特徴でもある症状が、皮膚の痒みで、発疹は出ず痒みだけというものが典型的です。胆汁うっ滞に伴って起こると考えられています。

症状がひどくなってくると、静脈瘤の破裂による吐血や下血といった症状も現れますが、
- 無症状の人を、無症候性原発性胆汁性胆管炎
- 症状がある人を、症候性原発性胆汁性胆管炎
と言います。
診断された時点では、無症候性の人が7〜8割とされます。無症候性のままでいる間は、予後は一般の人と変わらないとされ、日常生活に特別な制限はありません。ただし、約10年の経過で25%ほどが症候性へ移行するとされており、定期的な検査が必要です。
早期発見が可能になったため、診断される人の7〜8割は肝硬変に至っていないとされます(PBC診療ガイドライン2023)。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)の合併症は?
- シェグレーン症候群
- 関節リウマチ
- 橋本病(慢性甲状腺炎)
- 自己免疫性肝炎の特徴を併せ持つ場合(オーバーラップ症候群)
- 骨粗鬆症、脂質異常症(胆汁うっ滞に伴う)
- 肝硬変に進んだ場合の肝細胞癌
目や口の粘膜が乾燥することにより、涙や唾液の分泌が弱まる「シェグレーン症候群」や、関節リウマチ・慢性甲状腺炎、自己免疫性疾患などを併発することもあります。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)の検査や診断基準は?
厚生労働省の研究班(難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班)が定めた診断基準(平成27年度)があります。1)
それによると、
- 血液・生化学検査所見
- 組織学的検査所見
- 合併症
- 鑑別診断
が重要となります。
症状の有無にかかわらず、胆道系酵素(ALP、γ-GTP)が高値で、慢性的に胆汁うっ滞所見を示します。IgMの上昇もよくみられます。
診断で大きな手がかりになるのが抗ミトコンドリア抗体(AMA)で、約90%の人で陽性です。肝臓の組織検査で特徴的な胆管の炎症が確認できればより確実で、組織検査をしなくても、AMA陽性で経過や臨床像がPBCと考えられる場合は診断されます。AMAが陰性のPBCもあります(約1割)。
また、エコーやCTによる画像診断で閉塞性黄疸の所見が見られないこと(鑑別診断)や、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎、薬による肝障害などを除外することも重要です。施設や測定法で基準値は多少異なります。
原発性胆汁性胆管炎の画像所見は?
他の原因で起こる肝硬変と同様の画像所見を示しますが、原発性胆汁性胆管炎の場合、とくに
- 肝門部
- 門脈・下大静脈領域(portacaval領域)
にリンパ節腫大を認めることが多いのも特徴とされています。
症例 50歳代女性 PBCと診断されている。

腹部の造影CTの画像です。
肝臓は辺縁が鈍で凹凸不整です。
肝硬変を疑う所見ですが、さらに肝門部・門脈・下大静脈領域にリンパ節腫大を認めています。
原発性胆汁性胆管炎(PBC)に矛盾しないCT画像の所見といえます。
区別が必要な原発性硬化性胆管炎については、原発性硬化性胆管炎(PSC)とは?診断基準・治療法・予後をわかりやすくで解説しています。
胆道系酵素のひとつALPについては、ALP(アルカリフォスファターゼ)が高い原因は?基準値と受診の目安で解説しています。
原発性胆汁性胆管炎の治療法は?
現在のところ根治的な治療法は確立されていませんが、病気の進み方を遅らせる薬物療法があります。
- ウルソデオキシコール酸
- ベザフィブラート
- コレスチラミン
- 抗ヒスタミン薬
- ナルフラフィン
使われる薬は、ウルソデオキシコール酸(UDCA)という、胆汁の流れをよくする薬の投与が第一選択です。胆道系酵素を下げるだけでなく、肝臓の組織の改善や、肝移植・死亡までの期間を延ばす効果が、複数の試験で確認されています。
UDCAで胆道系酵素の低下が不十分な場合は、脂質異常症の薬であるベザフィブラートの併用が検討されます。
痒み症状には、コレスチラミンや抗ヒスタミン薬、ナルフラフィンなどが使われます。
肝硬変が進行して内科的な治療で抑えられなくなった場合は、肝移植が唯一の救命手段になります。日本では脳死肝移植が少ないため、生体肝移植で行われることが多く、誰でもすぐに受けられるわけではありません。薬の種類や量、使う時期は、検査結果や症状によって主治医が決めます。
1)参考サイト:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2023年)

参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P324〜327
消化器疾患ビジュアルブック P191〜193
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P214・215
パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P140
こんなときは受診を:受診の目安
- 健診でALP・γ-GTPの上昇を指摘された、皮膚のかゆみが続く(肝臓内科・消化器内科)
- 白目や皮膚が黄色い(黄疸)、お腹が張る、むくみが出てきた
- 吐血や黒い便が出た(食道や胃の静脈瘤の破裂の可能性があり、すぐに受診)
気になる症状や結果があれば、医療機関へご相談ください。
よくある疑問
Q. 肝硬変ではないのに「肝硬変」という名前だったのはなぜですか?
昔は進行してから診断されることが多く、肝硬変の状態で見つかる人が多かったためです。診断の進歩で早期に見つかるようになり、実際の病気の本体は胆管の炎症であることから、2016年に「胆管炎」へと名称が変わりました。
Q. 症状がなくても治療は必要ですか?
胆道系酵素の上がり方などによって、UDCAによる治療を始めるか、定期的に経過をみるかを医師が判断します。無症候性のうちは予後が良いとされますが、症候性に移行することもあるため、定期的な検査が大切です。
Q. 公的な医療費の助成はありますか?
この病気は国の指定難病の一つとされています。対象になる条件や手続きは、主治医や自治体の窓口で確認してください。
Q. 日常生活で気をつけることはありますか?
無症候性の場合、日常生活に特別な制限はないとされます。症候性では、症状や肝臓の予備能に応じた生活・食事の指導があります。主治医の指示に従いましょう。
最後に
一見、難しい病名である原発性胆汁性胆管炎(PBC、旧称:原発性胆汁性肝硬変)についてまとめました。
- 肝臓内の小さな胆管が自己免疫のしくみで壊れ、胆汁うっ滞が起こる慢性の病気(2016年に旧称「原発性胆汁性肝硬変」から名称変更)
- 皮膚の痒み症状が特徴
- 診断時に症状がない無症候性の人が7〜8割。診断される人の7〜8割は肝硬変に至っていない
- シェグレーン症候群や関節リウマチや慢性甲状腺炎を合併することもある
- 胆道系酵素(ALP・γ-GTP)の上昇と抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性が診断の手がかり
- ウルソデオキシコール酸(UDCA)が第一選択。進行例では肝移植が選択肢
たまたま症状もないのに、健診等で見つかった場合、早期に治療ができ、結果症状が起こらないまま病気を抑えることも可能です。
治療や経過観察が遅れると、肝硬変など重い病気につながる可能性が高まりますので、医師の指示に沿って定期的に検査を受けましょう。





