無症状だったのに、健康診断で異常が見つかり、詳しい検査をしたところ「原発性胆汁性肝硬変」と診断され戸惑われている方・・・いらっしゃるのではないでしょうか?
「原発性?」
「胆汁性?」
「肝硬変?」
わかりにくいですよね。
そこで今回は、原発性胆汁性肝硬変(英語表記で「Primary Biliary Cirrhosis」略してPBC)について
- 症状
- 合併症
- 診断基準
- 治療法
ということを実際のCT画像や図を用いてわかりやすくまとめました!
原発性胆汁性肝硬変(PBC)とは?
まず胆汁は、肝臓で生成され胆嚢に貯蔵され、十二指腸に送られる消化液で、1日に500〜800ml作られます。
また、肝硬変は肝臓が硬く変化した、肝機能が著しく低下した、肝臓だけでなく全身にも影響を及ぼす病気です。
そして・・・この原発性胆汁性肝硬変は、胆汁うっ滞が原因で肝硬変が生じる疾患(肝臓の中の胆管が自己免疫によって炎症が起こり、肝内胆管は線維化し狭窄が起こる疾患)で、それが原発性(その臓器で最初に発症する)で起こります。
原因は不明ですが、とくに、中年以降の女性に好発するのが特徴です。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)の症状は?
無症状な人も多いものの、自己免疫疾患・胆汁うっ滞・肝硬変によるそれぞれの症状を伴います。
- 皮膚の痒み
- 疲労感
- 倦怠感
- 黄疸
- 浮腫
- 腹水
- 吐血や下血
- 骨粗鬆症
- 肝性脳症
この病気の特徴でもある症状が、皮膚の痒みで、発疹は出なく痒みだけというものです。
これは、胆汁に含まれる成分が血液中に逆流するためといわれています。
症状がひどくなってくると、静脈瘤の破裂による吐血や下血といった症状も現れますが、
- 無症状の人を、無症候性原発性胆汁性肝硬変
- 症状がある人を、症候性原発性胆汁性肝硬変
と言います。
割合としては、無症候性原発性胆汁性肝硬変が7〜8割、残りの2〜3割が症候性原発性胆汁性肝硬変です。
昔は肝硬変まで進行して診断に至ることが多かったため、病名に「肝硬変」とついていますが、最近は早期発見が可能になったため、肝硬変にまで進行している患者は約1割程度といわれています。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)の合併症は?
- シェグレーン症候群
- 関節リウマチ
- 橋本病(慢性甲状腺炎)
- 自己免疫性肝炎
- 他臓器の悪性腫瘍
目や口の粘膜が乾燥することにより、涙や唾液の分泌が弱まる「シェグレーン症候群」や、関節リウマチ・慢性甲状腺炎、自己免疫性疾患などを併発することもあります。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)の検査や診断基準は?
「2012年 厚生労働省難治性疾患克服研究事業(難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究)班」により定められた診断基準があります。1)
それによると、
- 血液・生化学検査所見
- 組織学的検査所見
- 合併症
- 鑑別診断
が重要となります。
胆道系酵素(LP、LAP、y-GTP)が高値で、高コレステロール血症を示し、血清・尿中Cuが上昇、血清セルロプラスミン上昇する特徴があります。
これらは慢性的に胆汁うっ滞所見となります。
また、エコーやCTによる画像診断で閉塞性黄疸の所見が見られないこと(鑑別診断)が重要で、それと共に血沈が上昇・IgMの上昇・抗ミトコンドリア抗体が陽性の場合、診断確定に至ります。
原発性胆汁性肝硬変の画像所見は?
他の原因で起こる肝硬変と同様の画像所見を示しますが、原発性胆汁性肝硬変の場合、とくに
- 肝門部
- 門脈・下大静脈領域(portacaval領域)
にリンパ節腫大を認めることが多いのも特徴とされています。
症例 50歳代女性 PBCと診断されている。
腹部の造影CTの画像です。
肝臓は辺縁が鈍で凹凸不整です。
肝硬変を疑う所見ですが、さらに肝門部・門脈・下大静脈領域にリンパ節腫大を認めています。
原発性胆汁性肝硬変(PBC)に矛盾しないCT画像の所見といえます。
原発性胆汁性肝硬変の治療法は?
根治療としては、肝移植がありますが、比較的有効性のある薬物療法もあります。
- ウルソデオキシコール酸
- ベザフィブラート
- コレスチラミン
- 抗ヒスタミン薬
使われる薬は、ウルソデオキシコール酸という、胆汁排泄促進薬の投与が第一選択です。
これでトランスアミナーゼ・ALP・y-GTP・ビリルビンの減少で効果を発揮しますが、胆道系酵素の低下が不十分な場合、ベザフィブラートを併用することもあります。
痒み症状には、コレスチラミンや抗ヒスタミン薬が処方されます。
また、欧米では肝移植も多く行われている現状です(根治療)が、日本ではまだまだ症例数が少ないものです。
1)参考サイト:原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診療ガイドライン (2012 年)
参考文献:
病気がみえる vol.1:消化器 P324〜327
消化器疾患ビジュアルブック P191〜193
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P214・215
パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P140
最後に
一見、難しい病名である原発性胆汁性肝硬変(PBC)についてまとめました。
- 胆汁うっ滞が原因で肝硬変が生じる疾患で、原因は不明
- 皮膚の痒み症状が特徴
- 無症候性原発性胆汁性肝硬変が7〜8割、残りの2〜3割が症候性原発性胆汁性肝硬変
- シェグレーン症候群や関節リウマチや慢性甲状腺炎を合併することもある
- 2012年に定められた診断基準がある
- ウルソデオキシコール酸という、胆汁排泄促進薬の投与が比較的有効
たまたま症状もないのに、健診等で見つかった場合、早期に治療ができ、結果症状が起こらないまま病気を抑えることも可能です。
治療が遅れればそれだけ、肝硬変など重篤な病気につながるリスクも高まりますので、しっかり治療を行いましょう。