
頭蓋骨の形は人それぞれ異なりますが、特徴的な頭蓋変形を生じている場合、頭蓋縫合早期癒合症のこともあります。
今回は、この頭蓋縫合早期癒合症(読み方は「ずがいほうごうそうきゆごうしょう」英語表記で「craniosynostosis」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
をお話ししていきたいと思います。
先に結論
- 頭蓋縫合早期癒合症は、頭蓋骨のつなぎ目(縫合)が通常より早く閉じ、頭の形のゆがみや頭蓋内圧の上昇を起こす病気です。
- 寝かせ方(向き癖)による頭の変形のほうがずっと多く、多くは成長とともに改善します。一方、本症では骨の変形が自然には治りません。
- 縫合が閉じる場所により、舟状頭・短頭・三角頭・尖頭などの特徴的な形になります。
- 診断はX線・3D-CT・MRIで行い、治療は手術が中心です(軽症で脳圧が高くなければ経過観察のこともあります)。気になるときは小児科や脳神経外科に相談してください。
頭蓋縫合早期癒合症とは?
頭蓋縫合が通常よりも早期に癒合するために、頭蓋の変形や狭小化・頭蓋内圧亢進を生じる疾患の総称を頭蓋縫合早期癒合症といいます。

頭蓋骨は誕生時にはいくつかの骨によって形成されていますが、それは脳が成長するのに合わせて頭蓋骨の容積を拡大できるようになっているためです。
頭蓋骨の縫合は本来、成長にあわせて時間をかけて癒合していきます。
ですが、頭蓋縫合早期癒合症の場合、縫合が胎児期〜乳児期早期から通常より早く癒合するため、脳の成長よりも早くなり、変形や狭小化となります。

頭蓋縫合早期癒合症の症状は?
早期に癒合する部位により、それぞれ違った特徴的な頭蓋変形が生じます。
単一縫合癒合症(単一の縫合が癒合するもの)・多縫合癒合症(複数の縫合が癒合するもの)とがあります。
単一縫合癒合症である
- 舟状頭蓋
- 短頭蓋
- 三角頭蓋
多縫合癒合症である
- 尖頭蓋
- クローバー葉頭蓋
とに形が分けられます。
舟状頭蓋

- 矢状縫合
- 最も高頻度に発生
- 前後に拡張する
短頭蓋

- 冠状縫合
- 垂直方向へ著しく拡大したものを塔状頭蓋とも言う
- 前後は短い
- 左右に拡張
三角頭蓋

- 前頭縫合
- 前頭部が三角形に突出
尖頭蓋

- 複数または全縫合
- 頭蓋の狭小化により頭蓋内圧亢進が起こる
- 前後左右は短い
- 大泉門の方向に拡大し尖った形になる
クローバー葉頭蓋

- 冠状+人字+前頭縫合または矢状+鱗状縫合
- 水頭症を合併
- 稀な疾患
- 耳介低位
- 顔面変形(眼球突出・上顎骨低形成等)
- 大泉門・側頭泉門に向かって拡大
- 3つの葉状頭蓋変形
多縫合癒合症に顔面骨の早期癒合症を伴う場合は、症候群性頭蓋縫合癒合症と呼ばれます。
Crouzon病(クルーゾン)やApert症候群(アペール)が代表的です。
Crouzon病

- 冠状縫合(両側)・・・矢状・人字縫合にも及ぶ
- 塔状頭蓋が多い
- 顔面変形(著明な眼球突出・眼間離開・上顎骨の低形成・下顎の突出)
Apert症候群
- 冠状縫合(両側)または全縫合
- 塔状または尖頭蓋
- 顔面変形(眼球突出・眼間離開・上顎骨の低形成)
- 左右対称性の合指症
- 知的発達の遅れを伴うことがある

頭蓋縫合早期癒合症の原因は?
縫合が通常より早く閉じるために、脳の成長に頭蓋骨が追いつかず、脳が窮屈な状態となり、変形や狭小化が生じます。
早期癒合の原因が特定できないことも多くあります。
ですが、症候群性の頭蓋縫合早期癒合症では、FGFR2などの遺伝子の変異が関与します。頭蓋縫合早期癒合症全体では、少なくとも約2割が単一の遺伝子変異や染色体異常によると報告されています(Johnson 2011)。
関連記事)West症候群とは?症状や診断、治療法をわかりやすくまとめました!
頭蓋縫合早期癒合症の診断は?
X線、3D−CT、MRI検査で特徴的な所見を確認します。
X線検査
指で押したような指圧痕が見られる場合は、頭蓋内圧亢進となっていることを示します。
また、骨の変形や縫合線の消失も確認できます。
3D-CT検査
縫合線の消失に加え、癒合部の骨の肥厚、骨性隆起などを立体的に捉えることが出来ます。
MRI検査
水頭症などの合併症やその他の脳奇形を確認出来ます。
しかし、新生児の頭蓋骨は産道通過時の圧迫に対応出来るよう変形しやすいようになっています。
通常この時期の外圧による変形は自然に改善するため、頭蓋縫合早期癒合症との鑑別が大切です。
頭蓋が小さい小頭症では、頭蓋だけでなく脳容積も小さく、頭蓋縫合は正常です。
また、脳の発育が不良で脳容積が増大しないために頭蓋縫合が早期癒合してしまう場合は、脳萎縮に伴う狭頭症として鑑別する必要があります。
脳の萎縮との違いについては、脳萎縮とは?加齢との違い、症状・原因とCT・MRI画像の見方、受診の目安で解説しています。
頭蓋や脳の形の異常として、Chiari奇形(キアリ奇形)とは?Ⅰ型・Ⅱ型の症状、MRI診断と治療法のまとめもあわせてご覧ください。
頭蓋縫合早期癒合症の治療法は?手術は必要?
外科的治療(手術)が中心となります。
多くは乳児期(1歳前後まで)に手術が検討されます。
それは、脳の発達障害や頭蓋変形などを予防するためで、状態(病型)に応じて手術時期が決まります。
手術では、変形した頭蓋の矯正や頭蓋内圧亢進の改善、顔貌の改善を行います。
頭蓋骨延長法
頭蓋骨に数カ所の切れ目を入れてその切れ目に延長器を装着します。
そして、徐々に切れ目を広げ、変形を矯正する術式です。
徐々に延長するため、骨と骨の隙間に柔らかい骨が再生され、いずれ固まるのを期待する方法です。
頭蓋形成術
変形している頭蓋骨を切り出し、吸収性プレートなどを使い、整形して元に戻す方法です。
頭蓋骨延長法に比べ、手術による侵襲は大きくなります。
これらの手術は基本、脳の発達障害や頭蓋変形などを予防する目的で、乳児期に行われることが多く、時期は病型や状態によって異なります。
それ以上の年齢にしましては、病型や変形の程度などを考慮し、検討されます。
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P410・411
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル P365〜367
よくある疑問
Q. 向き癖による頭の変形と、頭蓋縫合早期癒合症はどう違いますか?
A. 向き癖などによる「位置的な頭の変形」は、多くは良性で自然に改善し、手術は不要とされています。一方、頭蓋縫合早期癒合症は頭蓋内圧の上昇や顔・頭の変形が進むことがあります(米国小児科学会 2011)。見分けが難しいため、頭の形が気になる、縫合部が隆起している、哺乳不良や嘔吐があるなどの場合は受診しましょう。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. まずは小児科でかまいません。必要に応じて脳神経外科や形成外科などの専門施設を紹介されます。
Q. 原因は遺伝ですか?
A. 原因が特定できないことも多い一方、一部(少なくとも約2割)は遺伝子変異や染色体異常が原因と報告されています。症候群性のものでは遺伝子の検査が行われることがあります(Johnson 2011)。
最後に
- 頭蓋の変形や狭小化、頭蓋内圧亢進を生じる疾患の総称を頭蓋縫合早期癒合症と言う
- 単一縫合癒合症である、舟状頭蓋・短頭蓋・三角頭蓋と、多縫合癒合症である、尖頭蓋・クローバー葉頭蓋がある
- 症候群性頭蓋縫合癒合症ではCrouzon病やApert症候群が代表的
- 早期癒合の原因が特定できないことも多く、遺伝子変異が関与することもある
- X線、3D−CT、MRI検査で特徴的な所見を確認し診断する
- 外科的治療が一般的
全てに対して外科的治療が行われるのではなく、程度が軽い脳圧が高くなければ経過観察で様子を見ることも多くあります。
参考文献(追記):
1)Johnson D, Wilkie AO. Craniosynostosis. Eur J Hum Genet 2011. PubMed
2)Laughlin J 他. Prevention and management of positional skull deformities in infants. Pediatrics 2011. PubMed






