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ヘルペスというと、口の端に出来て、体力の弱っている時などに出ることが多いという認識の人が多いと思います。ですが、一口にヘルペスと言っても様々な種類があり、中にはこのヘルペスによって重篤な症状を起こしてしまう、単純ヘルペス脳炎というものがあります。

今回はこの単純ヘルペス脳炎について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

をご説明したいと思います。


単純ヘルペス脳炎とは?

単純ヘルペス(HSV)が原因で起こる脳炎で、脳炎全体の約20%を占める、日本で最も頻度の高い散発性脳炎です。

年齢関係なく起こり、薬の開発により死亡率は以前より改善されたものの、未だ死亡率が20~30%と高いもので、社会復帰も約半数ほどと言われ、早期治療が最も大切です。

単純ヘルペス脳炎の症状は?

医師
初期症状と症状が進行した経過後の症状をご説明します。

初期症状

  • 発熱
  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 記憶障害
  • 精神症状
  • 軽度意識障害

が現われます。人格変化や異常行動、幻覚などが多く認められ、精神科を受診する人が珍しくありません。しかし、症状は数時間で軽度の意識障害から深い昏睡状態へと移行することもあります。

この症状と同時に項部硬直症状が見られますが、精神症状の有無が髄膜炎との鑑別ポイントでもあります。

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経過症状

  • 意識障害
  • 髄膜刺激症状
  • 痙攣
  • ミオクローヌス

痙攣は高頻度に見られ、一過性のミオクローヌスが見られることもあります。この悪化する前の段階で治療を開始するのが改善への鍵となります。

ミオクローヌスとは
筋肉群に起きる収縮で、ピクッという素早い稲妻に打たれたような不随意運動症状が見られます。

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単純ヘルペス脳炎の原因とは?

単純ヘルペスウイルス1型による潜伏感染が原因です。また、新生児の母体からの産道感染もあり、その場合は単純ヘルペスウイルス2型によるものです。

単純ヘルペスウイルス1型は、口唇ヘルペスが、2型は性器ヘルペスがあり、ほとんどは1型が急性ウイルス性脳炎を引き起こします。

ヘルペスウイルスは、初感染後神経節に潜伏し、免疫力が低下した時に再発を繰り返します。特に三叉神経節などに潜伏したウイルスが再活性化して神経を上行して発症すると考えられています。

単純ヘルペス脳炎の診断は?

  • CT・MRI検査
  • 脳波検査
  • 脊髄液検査

以上の検査方法があります。

CT・MRI検査

側頭葉を中心とした部位に病巣を確認します。特にMRI画像の方が鮮明に確認出来るため、早期検出が可能です。辺縁脳炎の画像所見を示すこともあり、非ヘルペス性急性辺縁脳炎との鑑別が重要です。

T2WI、FLAIRにて高信号を示し、出血を伴う場合もあります。また、他の脳症や脳炎とは違い、初期の段階から脳弓への浸潤を確認出来ることが多くあります。

脳波検査

早期の段階から一側性もしくは両側性の周期性てんかん型放電が、前頭部や側頭部に見られます。これは単純ヘルペス脳炎の30%で認められる特徴的な所見でもあります。

脊髄液検査

糖は正常なものの、圧上昇、単核の細胞数、蛋白と共に増加します。この検査は、確定診断にも用いられます。

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単純ヘルペス脳炎の治療法とは?

薬物療法が一般的です。

医師
早期治療開始が回復への鍵で、治療開始が遅れると致命的です。

抗ウイルス薬

  • アシクロビル
  • ビダラビン

などの点滴治療が効果的です。

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また、対処療法として

  • 抗脳浮腫薬にはグルセロール(濃グリセリン)
  • 抗痙攣薬にはジアゼパム・フェノバルビタール
  • 副賢皮質ステロイドが抗ウイルス薬に併用

最後に

  • 初期段階では、髄膜炎に似た症状に加え、精神症状、記憶障害、軽度意識障害が現れる
  • 進行すると、意識障害や髄膜刺激症状、痙攣やミオクローヌス症状が現れる
  • 単純ヘルペスウイルスが原因
  • CT・MRI、脳波検査、脳脊髄液検査を行い診断
  • 薬物療法が一般的で、症状に合わせ対処療法も行われる

 

抗ウイルス薬によって以前よりは致死率が改善されたといっても、早期治療開始がポイントで、初期症状の段階から治療を開始する必要があります。

また、人格変化やてんかんなど、後遺症として残ることもあります。そのため、リハビリ治療も必要となります。




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