
Chiari奇形(キアリきけい)とは、小脳や脳幹の脊椎管内への下垂を特徴としますが、下垂する組織によって4つの型に分類されます。今回はその中でも、臨床的にも重要なⅠ型Ⅱ型について
- 症状
- 診断
- 治療法
をご説明したいと思います。
先に結論
- Chiari(キアリ)奇形は、小脳の一部などが頭蓋骨の出口(大後頭孔)から脊柱管の中へ下がっている状態です。
- 大人で見つかる多くはⅠ型で、後頭部から首の痛み(せきやくしゃみで悪化)、手のしびれ、飲み込みにくさなどが出ることがあります。
- Ⅱ型は生まれつきで、脊髄髄膜瘤や水頭症を伴うことが多く、乳児期に呼吸や飲み込みの症状が出ることがあります。
- 診断はMRI(矢状断)で行い、小脳扁桃の下がりの程度と症状を合わせて判断します。
- 症状がなければ経過観察、症状があれば大後頭孔減圧術などの手術を検討します。何科: 脳神経外科。
Chiari奇形とは?
小脳や脳幹の一部が脊柱管に下垂した先天性奇形の総称をChiari奇形と言います。小脳や脳幹の一部の脊柱管内への陥入・偏倚(へんい)が特徴で、下垂する組織によって4つの型に分類されています。
中でもⅠ型とⅡ型が臨床的でも重要で、小脳の形成不全を伴うChiari奇形Ⅳ型は現在Chiari奇形に含まれないことも多くあります。
また、従来Arnold-Chiari奇形(アーノルドキアリ)と呼ばれてきたものはⅡ型に相当します。
好発
- ChiariⅠ型奇形は成人期に症状が出ることが多く、女性にやや多い
- ChiariⅡ型奇形は乳幼児期(生まれつきの病気)
- ChiariⅢ型奇形は新生児・乳児期
に好発します。

病態
- 小脳扁桃が脊柱管に陥入する・・・ChiariⅠ型奇形
- 小脳虫部・第4脳室・延髄などが頸椎管内に陥入する・・・ChiariⅡ型奇形
- 小脳などが後頭部〜上位頸部の骨の欠損部から脱出し、脳瘤(髄膜瘤)を伴う・・・ChiariⅢ型奇形
小脳の場所や働きについては、小脳とは?場所・働きと、障害されたときの症状(ふらつき・失調)を解説で解説しています。
Chiari奇形の症状は?
ChiariⅠ型奇形
- 疼痛
- 後頭部痛
- 構音障害
- 顔面の感覚障害
- 嚥下障害
特に多いのは疼痛で、後頭部や後頸部、肩や上肢などに発生し、咳やくしゃみなどによって増強します。大孔部で下位脳神経が圧迫されると、構音障害や顔面の感覚麻痺、嚥下障害が見られます。
水頭症を合併することは比較的少ないものの、脊髄空洞症を合併する割合は高い(報告により大きく異なります)とされ、その場合、上肢の温痛感覚障害主体の解離性感覚障害などが見られます。
ChiariⅡ型奇形
無症状のこともありますが、症状が出る場合は乳児期早期に脳幹症状として
- 無呼吸発作
- 吸気性喘鳴
- 嚥下困難
などが現れます。無呼吸発作は延髄の圧迫のために生じ、吸気性喘鳴や嚥下困難は延髄に存在する舌咽・迷走神経核の障害によって生じます。
(出典:医師国家試験109A48)
Ⅱ型は脊髄髄膜瘤を伴うことが前提の病態で、多くの例で水頭症を合併し、脊髄空洞症を合併することもあります。
Ⅱ型で多く合併する水頭症については、水頭症とは?原因・症状・診断(CT・MRI)・治療法をわかりやすく解説でくわしく解説しています。
Chiari奇形の診断は?
Ⅰ型Ⅱ型共、MRI検査によって診断します。
ChiariⅠ型奇形
MRIの矢状断で、脊椎管内に陥入した小脳扁桃や脊髄空洞が多く認められます。
小脳扁桃の下がりは、大後頭孔の下縁から測ります。過去の健常者との比較研究では、2〜3mm以内なら臨床的意義が乏しく、3mm以上下がると異常と判断しやすいと報告されています(Barkovich 1986)。ただし、数値だけでなく症状や脊髄空洞症の有無を合わせて判断し、基準は施設により異なります。

ChiariⅡ型奇形
MRIの矢状断で、脊柱管内に陥入した延髄・第4脳室・小脳虫部や小脳扁桃の下垂を認めることがあります。

MRI検査で閉所が苦手な方の対策は、MRIで閉所恐怖症の対策は?オープン型MRI・鎮静薬・事前に伝えることで紹介しています。
Chiari奇形の治療法は?
ChiariⅠ型奇形
症候性の場合は、外科的治療が行われます。大孔部減圧術として、大孔周辺の骨や上位椎弓(ついきゅう)を切除し、大後頭孔を減圧します。必要に応じて硬膜を広げる形成も行います。
また、無症状の場合は経過観察とします。
ChiariⅡ型奇形
脊髄髄膜瘤の治療と水頭症のコントロールを行います。また、症候性の場合は減圧術を検討します。
減圧術として、髄液排除による減圧を行うシャント術や、大孔部減圧術が行われます。また、急性期呼吸障害では、呼吸管理や減圧術を行います。

よくある疑問
Q. 小脳扁桃が下がっていると言われましたが、治療が必要ですか。
A. 下がりが小さく症状がなければ、経過観察で済むことが多いです。後頭部痛・手のしびれ・脊髄空洞症などがあれば、手術を含めて脳神経外科で相談します。
Q. 頭痛は、Chiari奇形が原因でしょうか。
A. 頭痛の原因の多くは別の病気です。咳やくしゃみ、いきんだときに後頭部が痛む場合は、Chiari奇形の可能性があるため、MRIで確認すると安心です。
Q. 何科を受診すればよいですか。
A. 脳神経外科が中心です。しびれや歩きにくさがある場合は神経内科とも連携します。
最後に
- 小脳や脳幹の一部が脊柱管に下垂した先天性奇形の総称Chiari奇形と言う
- 小脳扁桃が脊柱管に陥入するものを、ChiariⅠ型奇形
- 小脳虫部・第4脳室・延髄などが頸椎管内に陥入するものを、ChiariⅡ型奇形
- 小脳が頸椎二分脊椎から脱出・後頭部髄膜瘤を伴うものを、ChiariⅢ型奇形
- 小脳の形成不全を伴うものを、Chiari奇形Ⅳ型
- ChiariⅠ型奇形は疼痛や後頭部痛が特に多く、脊髄空洞症を合併しやすい
- ChiariⅡ型奇形は、脊髄髄膜瘤を伴い、多くで水頭症を合併する
- MRI検査が有用
- それぞれ合併症の治療や外科的治療として減圧術が行われる
Chiari奇形は、自然完治することはありませんが、無症候の場合には経過観察のみで済みます。しかし、気になる心配な症状が出てきた場合は、受診し、検査することをおすすめします。
参考文献:
Barkovich AJ, et al. Significance of cerebellar tonsillar position on MR. AJNR 1986. PubMed


