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Chiari奇形(キアリきけい)とは、小脳や脳幹の脊椎管内への下垂を特徴としますが、下垂する組織によって4つの型に分類されます。今回はその中でも、臨床的にも重要なⅠ型Ⅱ型について

  • 症状
  • 診断
  • 治療法

をご説明したいと思います。


Chiari奇形とは?

小脳や脳幹の一部が脊柱管に下垂した先天性奇形の総称をChiari奇形と言います。小脳や脳幹の一部の脊柱管内への陥入・偏倚(へんい)が特徴で、下垂する組織によって4つの型に分類されています。

中でもⅠ型とⅡ型が臨床的でも重要で、小脳の形成不全を伴うChiari奇形Ⅳ型は現在Chiari奇形に含まれないことも多くあります。

また、従来Arnold-Chiari奇形(アーノルドキアリ)と呼ばれてきたものはⅡ型に相当します。

好発

  • ChiariⅠ型奇形は20~40代、女性に多い
  • ChiariⅡ型奇形は乳幼児
  • ChiariⅢ型奇形は小児

に好発します。

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病態

  • 小脳扁桃が脊柱管に陥入する・・・ChiariⅠ型奇形
  • 小脳虫部・第4脳室・延髄などが頸椎管内に陥入する・・・ChiariⅡ型奇形
  • 小脳が頸椎二分脊椎から脱出・後頭部髄膜瘤を伴う・・・ChiariⅢ型奇形

Chiari奇形の症状は?

医師
ここでは、代表的なChiari奇形Ⅰ型Ⅱ型についてご説明します。

ChiariⅠ型奇形

  • 疼痛
  • 後頭部痛
  • 構音障害
  • 顔面の感覚障害
  • 嚥下障害

特に多いのは疼痛で、後頭部や後頸部、肩や上肢などに発生し、咳やくしゃみなどによって増強します。大孔部で下位脳神経が圧迫されると、構音障害や顔面の感覚麻痺、嚥下障害が見られます。

水頭症を合併する確率は10%ですが、脊髄空洞症を50~85%の確率で合併し、その場合、上肢の温痛感覚障害主体の解離性感覚障害などが見られます。

脊髄空洞症
脊髄内に液体を貯留した空洞が形成されることにより、脊髄障害を来す疾患です。Chiari奇形の他に、脊髄外傷や炎症、梗塞なども原因となります。

ChiariⅡ型奇形

無症状なことも多く、症候性は10~30%程度です。症候性の場合出生後2~3ヶ月までに脳幹症状として

  • 無呼吸発作
  • 吸気性喘鳴
  • 嚥下困難

などが現れます。無呼吸発作は延髄の圧迫のために生じ、吸気性喘鳴や嚥下困難は延髄に存在する舌咽・迷走神経核の障害によって生じます。

医師
脊髄髄膜瘤の所見はこちら。

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(出典:医師国家試験109A48)

90%の割合で水頭症を合併し、100%の割合で脊髄髄膜瘤を合併、20%の割合で脊髄空洞症を合併します。

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Chiari奇形の診断は?

Ⅰ型Ⅱ型共、MRI検査によって診断します。

医師
それぞれについてご説明します。

ChiariⅠ型奇形

MRIの矢状断で、脊椎管内に陥入した小脳扁桃や脊髄空洞が多く認められます

小脳扁桃の下垂は5mm以上は異常で、5mm以内は問題ないことが多くあります。12mm以上の場合は、ほぼ全例で症状が現れます。

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ChiariⅡ型奇形

MRIの矢状断で、脊柱管内に陥入した延髄・第4脳室・小脳虫部や小脳扁桃の下垂を認めることがあります。

Chiari奇形の治療法は?

医師
Ⅰ型Ⅱ型、それぞれの治療方法をご説明します。

ChiariⅠ型奇形

症候性の場合は、外科的治療が行われます。大孔部減圧術として、大孔周辺の骨や上位椎弓(ついきゅう)を切除し、大孔頭孔を減圧します。

また、無症状の場合は経過観察とします。

ChiariⅡ型奇形

脊髄髄膜瘤の治療と水頭症のコントロールを行います。また、症候性の場合は減圧術を検討します。

減圧術として、髄液排除による減圧を行うシャント術や、大孔部減圧術が行われます。また、急性期呼吸障害では、呼吸管理や減圧術を行います。

最後に

  • 小脳や脳幹の一部が脊柱管に下垂した先天性奇形の総称Chiari奇形と言う
  • 小脳扁桃が脊柱管に陥入するものを、ChiariⅠ型奇形
  • 小脳虫部・第4脳室・延髄などが頸椎管内に陥入するものを、ChiariⅡ型奇形
  • 小脳が頸椎二分脊椎から脱出・後頭部髄膜瘤を伴うものを、ChiariⅢ型奇形
  • 小脳の形成不全を伴うものを、Chiari奇形Ⅳ型
  • ChiariⅠ型奇形は疼痛や後頭部痛が特に多く、脊髄空洞症を50~85%の確率で合併
  • ChiariⅡ型奇形は、無症状なことも多く、90%の割合で水頭症を合併し、100%の割合で脊髄髄膜瘤を合併
  • MRI検査が有用
  • それぞれ合併症の治療や外科的治療として減圧術が行われる

 

Chiari奇形は、自然完治することはありませんが、無症候の場合には経過観察のみで済みます。しかし、気になる心配な症状が出てきた場合は、受診し、検査することをおすすめします。




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