barium diarrhea Eye-catching image

胃の検査の時、バリウムという液状の金属を飲みますが、なかなか便が出ないことがあります。

大抵は病院でもらった下剤を飲めば1日~2日で排出されますが、もし便秘体質などで出なかった場合どうなるのでしょうか?

バリウムが出ないなんてことあるの?
便秘ぎみの方は下剤が効かないこともあり、バリウムが出にくいということもあります。

出なかったらどうしよう・・・なんて考えたら怖くなってきます。

そこで今回はバリウムが出なかった場合、出ない状態が長期間続くとどうなるのか、まとめました。


検査後下剤を飲んでもバリウムが出ないとどうなるの?

バリウムは体内で固まる性質があるため、検査の後には下剤を服用します。

  • 検査直後
  • 検査日の就寝前
  • 検査翌日の就寝前

には少なくとも下剤(ピコスルファートナトリウム、プルゼニド錠など)を内服します。

それでも、検査の2日目以降に便が出なかったり、出ても白い便である場合、さらにその日の就寝前にも下剤を服用します。

しかし、内服を忘れたり、きちんと内服しているのにそれでも便が出ない場合、出なかったバリウムはどうなるのでしょうか?

以下のことが起こりえます。

  • 腸内でバリウムが固まる
  • 腸閉塞になる
  • 炎症が起こる(大腸憩室炎・虫垂炎)
1つひとつ見ていきましょう。

腸内でバリウムが固まる!

バリウムがうまく排出されなかった場合、バリウムが腸内で固まってしまいます。

バリウムは造影剤で、元は石の粉です。

それを水に溶かしただけのものなので、時間が経つと腸内で水分が体内に吸収されることによりどんどん固まってきます。

腸の中でバリウムが固まって石になってしまうなんて考えただけでもおそろしいですね。

ですので、排便がない場合は、外来を受診してもらって、より強い下剤を使う場合があります。

腸閉塞になる

腸内でバリウムが固まると、非常にまれですがそれが行き止まりとなり、腸閉塞を起こすことがあります。

腸閉塞になると以下のような症状が起こることがあります。

  • 激しい腹痛
  • 激しい嘔吐
  • 激しい腹痛が起こったり収まったりを繰り返す(疝痛)
  • お腹が張る

ちなみに筆者は、8年間放射線科医として勤務しておりますが、腸閉塞になった人は見たことがありません。

バリウムが原因となって腸閉塞を起こすことをイメージするために、乾燥剤を誤飲してイレウスになった症例のCT画像を見てみましょう。

症例 60歳代男性 腹痛。

ileus-CT-findings1

腹部単純CTの画像です。

高吸収(白い)を示す乾燥剤が行き止まりとなって、腸閉塞となっています。

バリウムの場合、この乾燥剤のような塊ではありませんが、バリウムが原因で腸閉塞になるとしたらこのようなイメージとなります。

炎症が起こる(大腸憩室炎・虫垂炎)

前述したとおり、腸内でバリウムは石になりますが、腸内はただのまっすぐの管ではなく、ところどころ空洞(腸管からの出っ張り)が存在する場合があります。

  • 大腸憩室
  • 虫垂

がその代表です。

大腸憩室を内視鏡で見るとこんな感じです。

colon-diverticulus1

虫垂のイラストは次のようになります。

acute-appendicitis1

どろっとしたバリウムですとここに入って固まりそうですよね。

バリウムは、これらの空洞に入り込みそこで固まり、バリウム結石を作ることがあります。

多くの場合は、そうなっても支障はありません。

だって、大腸憩室から出血が起こった場合に、バリウムで埋めるバリウム充填術が行われるくらいですから。

ただ、まれに憩室や虫垂に感染が起こった場合に、そのバリウム結石が原因で菌が出られず、局所的に菌の繁殖が起こり、そこで炎症を起こしてしまうことがあります。

がそれぞれ起こります。

こうなるとバリウム結石が栓の役割をして、菌の増殖が起こるわけですから、憩室や虫垂が穿孔(「せんこう」、破れること)して、腹膜炎を起こすことがあります。

特に、結石を伴った虫垂炎は破裂のリスクが高いと言われています。

大腸憩室炎や虫垂炎を起こすと以下のような症状が起こります。

  • 下腹部痛
  • 下痢
  • 便秘
  • 発熱
  • 血便

軽症の場合は内服治療になりますが、穿孔(せんこう)を起こして腹膜炎を起こすと手術の対象となります。

このほか、大腸炎大腸潰瘍を起こす可能性があると添付文書に記載があります。

検査後、腹痛などの症状が続く場合は、医師の診察を受け、必要に応じてCTなどの検査を受ける必要があります。

バリウムが出なくて手術になることはある?

手術はどうしても出なかった時の最終的な手段です。

手術になってしまう前に、様々な方法でバリウムを出すことを試みます。

バリウムを取り出す方法はこちらです。

  • 下剤を使って出す
  • 直腸の近くで固まって出ない場合、浣腸や用手排便によって出す
  • 内視鏡によって出す

下剤

まずは下剤をより効果の強いものに変えたり、種類を変えたりして排便を促します。

浣腸・用手排便

肛門から直腸の近くでバリウムが固まって出ない場合は、浣腸や用手排便により排便を促すことがあります。

内視鏡による手術

バリウムが浣腸では届かない場合など、出すのが困難な場合、内視鏡による手術によってバリウムを砕く方法もあります。

最後は手術もあり得る

それでもバリウムが出ない場合で、1箇所で固まり腸閉塞を起こす場合は、手術により取り除くこともありえます。

先ほどの乾燥剤のようなことが起こればです。

通常手術にまでなることはありません。

 

バリウムが何日出なかったら受診すべき?

最初でも書きましたが、バリウムは通常1日~2日ぐらいで出てきます。

ですので、3-4日以上でないようなら受診しましょう。

まとめ

いかがでしたか?

今回はバリウムが出ない場合に起こりうることについて解説しました。

検査の後は、水分を多めに摂取して、必ず忘れずに下剤を内服しましょう。

バリウム検査のリスクをきちんと理解し、安心して検査を受けるようにしましょう。

参考文献)消化管造影基本テクニック P8




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