脳の疾患になると「水頭症を来す」「水頭症による影響」という言葉をよく耳にしますが、この水頭症とは一体どういったものなのでしょう?

今回は水頭症(読み方は「すいとうしょう」英語表記で「Hydrocephalus」)について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法

を分かりやすく説明したいと思います。


水頭症とは?

髄液が頭蓋内に過剰に貯蓄し、脳室などが拡大した病態のことを言います。

また、水頭症とはある特定の疾患を指す用語ではなく、髄液循環の障害に基づく一連の病態を総称したもののことです。

また、発生時期や病態によっていくつかの分類があります。

水頭症の分類は以下の通りです。
  • 先天性と後天性
  • 交通性と非交通性
  • 内水頭症と外水頭症
  • 頭蓋内圧亢進症と正常圧性

などの分類があります。

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このように、水頭症には極めて多彩な要因が関与するため、それぞれを組み合わせて分類します。実際には上記の表よりも更に繊細な分類が用いられます。

交通性水頭症と非交通性水頭症について説明します。

交通性水頭症

脳室とくも膜下腔が交通しており、全ての脳室が均等に拡大するのが特徴です。

原因
  • 髄膜炎
  • 頭部外傷

などにより、髄液の吸収障害が生じることが原因です。

更に、交通性水頭症を先天性、後天性と分けられます。
先天性
後天性

などがあります。

非交通性水頭症

脳室内やその出口の閉塞により、脳室からくも膜下腔に髄液が流出しない状態のことを言います。閉塞部位により上流の脳室が拡大します。

原因
  • 腫瘍による脳室周辺の腫瘍
  • 先天奇形
  • 炎症性疾患

などが原因となります。

先天性
  • 中脳水道狭窄症
  • ダンディ・ウォーカー奇形
  • 胎内感染(先天性トキソプラズマ症など)
  • 遺伝性(X染色体劣性)
  • キアリⅡ奇形
後天性
  • 腫瘍(髄芽種・松果体部腫瘍など)
  • 頭蓋内出血

などがあります。

水頭症の原因は?

  • 髄液循環路の閉鎖
  • 髄液の吸収障害
  • 髄液の生産過剰

上記のいずれかが原因となります。つまりは髄液循環の障害です。

 

水頭症の症状は?

実は、水頭症の発生時期は新生児から老年期まで、どの年代でも起こりうるため、時期によって現れる症状が異なります。

時期別に症状を説明します。

新生児・乳幼児期(0歳~2歳頃)

  • 頭囲の拡大
  • 大泉門の膨隆
  • 頭皮静脈怒張
  • 頭皮の伸展・光沢
  • 眼球上転運動障害(落陽現象)
  • 視神経萎縮
  • 外転神経麻痺
  • 下肢痙直
  • 破壷音
  • 透光試験陽性

打診するとヒビの入った壷のような音がする破壷音、別名マキューイン徴候が特徴の1つです。

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幼児・学童期(2歳頃~)

  • 精神遅延
  • 運動発達遅延
  • 食欲不振・体重減少
  • 全身の倦怠感
  • 吐き気・嘔吐
  • 頭痛
  • 痙攣発作

歩行がおかしいなどの見た目にも分かる症状が出て、気づくことも多くあります。

成人期

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 全身の倦怠感
  • 食欲不振・体重減少
  • 歩行障害
  • 精神活動の低下(認知症)
  • 尿失禁

徐々に症状が悪化し、痙攣を起こすこともありますが、精神活動の低下が現れた場合、認知症との鑑別診断が必要になります。

水頭症の診断

CTやMRIなどの画像診断が有用です。水頭症の臨床症状が確認でき、画像診断で脳室拡大所見が確認できれば、水頭症と診断されます。また、拡大している脳室の位置を確かめることで、閉塞部位を推測することが出来ます。

CT・MRIそれぞれについて説明します。

CT

脳室拡大に伴い、脳室周辺の白質に浮腫性変化が現れ、低吸収域となることを脳室周囲低吸収域と呼びます。

また、CT脳槽造影は、正常圧水頭症の診断には必須とされてきましたが、頭囲の拡大を伴わない幼児期以降の水頭症では、脳萎縮との鑑別を行なうことを目的に、脳槽造影によって髄液循環と吸収域を評価することがあります。

MRI

脳室拡大の所見に加え、水頭症の原因となる病変、脳脊髄液の循環路が閉塞している位置や合併する奇形なども観察します。

 

水頭症の治療法は?

外科的治療や神経内視鏡手術が一般的です。水頭症の治療は、水頭症病態の進行を止め、脳機能を回復させ、維持することが目的となります。

それぞれについて説明します。

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外科的手術

過剰髄液を頭蓋腔外に誘導するため、体内に短絡路を作る髄液シャント術ドレナージ術が行われます。

神経内視鏡手術

上部の脳室とくも膜下腔を直接交通させる方法です。

内視鏡下第三脳室(底)開窓術(EVT)などがあります。

最後に

  • 髄液が頭蓋内に過剰に貯蓄し、脳室などが拡大した病態
  • 髄液循環の障害に基づく一連の病態を総称したもののことを水頭症と言う
  • 水頭症には極めて多彩な要因が関与するため、それぞれを組み合わせて分類する
  • 髄液循環の障害が原因となる
  • 全年齢に現れるため、現れる時期によって症状が異なる
  • 画像診断で脳室拡大所見を確認する
  • 水頭症病態の進行を止め、脳機能を回復させ、維持することを目的に治療する

 

新生児の場合、大泉門だけで水頭症を判断するのは難しく、正式な診断には画像検査が有用です。

また、水頭症の程度にもよりますが、水頭症の19%は全く障害が残らないと言われ、学業や仕事に問題ないレベルまで含めると40%まで上がります。それには、早期治療開始と適切な治療を行なうことが重要になります。




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