下垂体腺腫というと下垂体という目の奥に位置する部分に出来る脳腫瘍の一種です。
人間ドックや脳ドックなどでたまたま下垂体に腫瘍が見つかることがあり、これを下垂体偶発腫と言います。画像検査を使った研究をまとめた報告では、約2割(22.5%)に下垂体腺腫が見つかったとされ(Ezzat ら 2004)、見つかる腫瘍の多くは小さく、症状のないものです。下垂体偶発腫の中でも、下垂体腺腫が最も多くを占めます。
脳は様々な神経が密集しているため、手術で腫瘍を取り出すことが出来ても、後遺症は残らないのか?なども心配になってくると思います。
そこで今回は下垂体腺腫について・・・
- 下垂体腺腫について
- 症状
- 診断方法
- 治療法
などを分かりやすくご説明したいと思います。
- 下垂体腺腫は、目の奥にある下垂体にできる良性の腫瘍で、脳腫瘍の中でも頻度の高い病気です。
- ホルモンをつくる「機能性」と、つくらない「非機能性」があります。大きさ1cmを境に、微小腺腫(1cm未満)と大腺腫(1cm以上)に分けます。
- 症状は、ホルモンの出すぎ(月経異常・乳汁分泌・手足や顔つきの変化など)と、大きくなったときの圧迫(頭痛・視野が欠ける)の2種類です。
- 健診などで偶然見つかった場合は、MRIで詳しく調べ、ホルモンの検査を行います。視神経に近い場合は視野検査も行います。小さくて変化がなければ、MRIで経過をみます。
- 治療は、薬・手術(鼻から行うことが多い)・放射線の3つで、腫瘍の種類や大きさで選びます。視野の異常や、頭痛・ホルモンの症状があれば早めに受診してください。
下垂体腺腫とは?どんな病気?
- 良性の脳腫瘍
- 成人に多い
下垂体腺腫は、脳にできる腫瘍で脳腫瘍の中でも頻度の高いものですが、良性の腫瘍になります。脳の下垂体前葉(目の奥の部分)から発生し、成人に多い病気です。

下垂体腺腫の分類は?
下垂体腺腫は、ホルモン産生の有無で
- 機能性
- 非機能性
に分けられます。その他、その腫瘍の大きさが1cmあるかどうかでも判断され、
- 1cm以下のものを微小腺腫(microadenoma)
- それ以上の大きさのものを大腺腫(macroadenoma)
と言います。
ただ、どうしてこの下垂体腺腫が出来るのか?原因はまだハッキリ分かっていません。
下垂体のホルモンが不足する病気については、シーハン症候群とは?産後の大量出血後に注意したい症状・検査・治療で解説しています。
下垂体腺腫はどんな症状が出るの?
機能性のものの場合は、ホルモン異常による症状が出るのが特徴で、非機能性の場合は、ホルモンの出すぎによる症状は出ません。小さいうちは無症状のことが多く、健診で偶然見つかることもあります。
また、腫瘍が大きいものになると、その腫瘍による神経圧迫で様々な症状が出たりします。
腫瘍の神経圧迫による症状
- 目の奥に重みを感じる
- 頭痛(目の奥や額)
- 視野障害
- 視力障害

このような症状が出ると眼科を受診すると思いますが、眼科で下垂体腺腫を疑われることもしばしばあります。
ホルモン異常による症状
ホルモン異常には、内分泌液の過剰増加があり、それぞれのホルモン異常によって症状も異なります。
プロラクチンが多く作られるようになると・・・
- 月経異常
- 不妊
- 乳汁分泌
- 性欲減退
成長ホルモンが多く作られるようになると・・・(成人では先端巨大症)
- 成長期では身長が異常に伸びる(巨人症)
- 指が太る
- 唇が厚くなる
- あごがしゃくれる
- 手のしびれ
- 心疾患
- 高血圧
- 糖尿病
副腎皮質刺激ホルモンが多く作られるようになると・・・(クッシング病)
- 肥満
- 色素沈着
- 毛が濃くなる
- ニキビができる
- 血圧上昇
- 骨粗鬆症
また、腫瘍が大きくなって正常な下垂体を圧迫すると、ホルモンが不足して、だるさ・食欲低下などが出ることもあります。
このような症状は他の病気とも間違えやすく、内科や婦人科を訪れ、まさかの脳からの症状?!と驚かれる人も多いんです。

プロラクチンが増える病気については、高プロラクチン血症の原因は?ストレスでも起こる?症状・検査・治療で解説しています。
月経が来ないときの原因と受診の目安は、無月経の原因は?生理が3か月来ないときの検査・治療法と受診の目安を解説で解説しています。
下垂体腺腫の診断方法は?
症状から他の病気と間違われることも多くありますが、その中から下垂体腺腫を疑う場合も多くありますが、診断を確実に裏付けるには画像診断が有効的です。
中でもMRIが、どこに腫瘍が出来ているのか、神経圧迫部位や腫瘍の大きさ等も分かりやすく、確定診断が出来ます。
下垂体腺腫のMRI画像所見は?
下垂体腺腫は充実性のことが多いのですが、内部に出血や嚢胞変性を伴うことがあります。
microadenomaの場合
サイズが小さなmicroadenomaの場合、造影剤を用いたダイナミック撮影が最も描出率が良いとされています。
正常な場合、下垂体は血流が非常に豊富で強く増強されるため、腫瘍の血流が乏しいわけではないものの、腺腫は相対的に低信号となります。前葉がよく造影されるダイナミックの門脈相の造影剤注入後1分前後でコントラストが分かりやすくなります。
macroadenomaの場合
腫瘍が上方に伸びると、視交叉を圧迫して視野障害などの症状をきたす原因となります。
海綿静脈洞へ腫瘍が進入してた場合、全てを取り除くことが大変になるんですが、海綿静脈洞に進展する所見としては、
- 内頸動脈の狭窄
- 腫瘍が内頸動脈を2/3周以上取り囲んでいる
- 内頸動脈の下内側部の海綿状脈洞部(carotid sulcus venous component)に進入してる
ことなどで分かります。
その他、画像と腫瘍の相関で報告されていること
- 成長ホルモン産生腫瘍はT2強調像で低信号を示す傾向にある。
- 男性のプロラクチン産生腫瘍は頭蓋底進展が強い傾向にある。
下垂体腺腫が見つかったらその後の画像のフォローはどうなる?
米国内分泌学会のガイドライン(2011年)は、下垂体偶発腫が見つかった場合、問診・診察に加えて、ホルモンの出すぎ・不足を調べる血液検査を行い、視神経や視交叉に接している場合は視野検査も行うよう勧めています(Freda ら 2011)。CTなどでたまたまトルコ鞍内(※トルコ鞍内とは下垂体が存在する場所です)の病変が見つかった場合は、下垂体を詳しく評価できるMRIで性状を確認します。
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CTで下垂体部に腫瘍がたまたま見つかった。→MRIでさらに詳しく検査。
また、腫瘍が視神経や視交叉に接している場合(10mmを超えるmacroadenomaで多い)は、視野が欠けることがあるので
- 視野検査(眼科)を行う。
とされています。(この際に視野異常が見つかれば外科的手術を考慮します。)
また、見つかった腫瘍が機能性の下垂体腺腫でないかどうかを調べるために
- 下垂体ホルモンなどの内分泌的検査
を行います。特にプロラクチンを産生する下垂体腺腫(プロラクチノーマ)は、薬物療法が中心になるため、血中のプロラクチン測定が大切です。プロラクチノーマ以外のホルモンを出す腫瘍では、手術が勧められます(Freda ら 2011)。
手術の対象にならない場合は、MRIで経過をみます。同じガイドラインでは、大きい腫瘍(macroincidentaloma)は6か月後、小さい腫瘍(microincidentaloma)は1年後にMRIを行い、大きさが変わらなければ、その後は徐々に間隔をあけていくとされています。視神経に接する場合は視野検査と内分泌検査を6か月後と、その後は年1回行います(Freda ら 2011)。
健診や脳ドックのMRIで偶然見つかる所見には、正常変異もあります。たとえば、錐体尖部骨髄の左右差とは?脳MRIで見つかる正常変異と腫瘍の見分け方で取り上げています。
どんな治療方法がある?
下垂体腺腫だからといって全てが治療の対象というわけではありません(小さくて症状がなければ経過観察のことも多くあります)が、治療を必要とする場合は以下のような治療法があります。
- 薬物療法
- 手術療法
- 放射線治療

薬物療法
プロラクチンや成長ホルモンが多く作られている場合には、薬物療法が効果的です。特にプロラクチンを産生する腫瘍(プロラクチノーマ)は、薬物療法が中心になります。ですが、この薬物療法の場合、飲んでいる間だけに効果が現れるため、服用を中止すると症状が再び出てくるので長期間続ける必要があります。
- ブロモクリプチン(パーロデル)
- テルグリド(テルロン)
- カベルゴリン(カバサール)
- オクトレオチド(サンドスタチン)
- ペグビソマント(ソマバート)
などといった薬が使われます。薬の種類や量は、病型や症状、年齢などで医師が決めます。
手術療法
鼻の中から手術をすることが可能で、顕微鏡や内視鏡が使われます。腫瘍をきれいに取り除くことが出来れば完治するものですが、海綿静脈洞に腫瘍が入り込んでしまっていると、手術で全部は取り除けない場合もあります。
また、鼻からは取り出せない大きな腫瘍になると、頭から切開して行うこともあります。
放射線療法
放射線療法は、薬が効きにくい腫瘍や、手術で全部腫瘍を取り除けなかった場合には放射線療法を行います。放射線療法は、患部だけに放射線を当てるものですが、時間がたってから下垂体のホルモン分泌が低下するなどの副作用もあるため、慎重に進める必要があります。
最後に
- 下垂体腺腫は良性の腫瘍ですが原因は不明
- 健診で偶然見つかったときは、MRI・ホルモン検査・必要なら視野検査で評価する
- 1cm以下のものを微小腺腫(microadenoma)、それ以上の大きさのものを大腺腫(macroadenoma)という
- 機能性のものの場合は、ホルモン異常などもあり症状が出る
- 非機能性の場合は腫瘍のみで症状は出ない
- それぞれのホルモン異常の種類により症状が異なる
- 薬物療法、手術療法、放射線療法という治療法がある
- たまたま見つかった下垂体腺腫の場合サイズやホルモン値によりフォローが異なる
下垂体腺腫の場合、まさか脳に腫瘍があるなんて、症状からは夢にも思わなかったという人も多いと思います。特に、生理不順や不妊の原因が脳にあるなんて・・・まさか!?ですよね。
でも、このことからも分かるように、症状を放置してはいけないということです。体の異変や不調には何かしらの原因がありますから、気になる症状が続くときは医療機関で相談してくださいね。
よくある疑問
Q. 健診で「下垂体に影がある」と言われました。すぐ手術ですか?
小さくて症状もホルモンの異常もない場合は、手術ではなくMRIでの経過観察になることが多くあります。まずは脳神経外科や内分泌内科で、MRIとホルモンの血液検査を受けてください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
脳神経外科や内分泌内科(ホルモンの専門)が中心です。視野の異常から眼科で気づかれることもあります。生理不順や不妊が続くときは、婦人科から紹介されることもあります。
Q. 手術後に後遺症は残りますか?
腫瘍の大きさや広がりによります。手術のあとに、不足したホルモンを薬で補う必要が出ることがあります。具体的な見通しは、手術前に主治医に確認してください。
参考文献
- Freda PU, et al. Pituitary incidentaloma: an endocrine society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 2011. PubMed
- Ezzat S, et al. The prevalence of pituitary adenomas: a systematic review. Cancer 2004. PubMed
- Melmed S, et al. Diagnosis and treatment of hyperprolactinemia: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 2011. PubMed





