健康診断や人間ドックで行われるバリウム検査は、胃の状態を調べるための代表的な検査である。一方で、「検査後に腹痛がある」「便秘になった」「下痢が続く」「頭痛やめまいがある」と不安になる人も少なくない。

結論からいうと、バリウム検査後の軽い腹部不快感、便秘、下痢、吐き気などは一時的にみられることがある。

しかし、強い腹痛、嘔吐、発熱、お腹の強い張り、便やガスが出ない、息苦しさ、蕁麻疹、意識がぼんやりするといった症状がある場合は、単なる副作用と決めつけず、早めに医療機関へ相談すべきである。

また、バリウム検査後の頭痛やめまいは、バリウムそのものではなく、検査前に使用されることがある胃腸の動きを抑える注射、脱水、緊張、空腹などが関係していることもある。

この記事では、バリウム検査で起こりうる副作用、症状別の考え方、重い合併症のサイン、検査後に気をつけることを整理する。

この記事のポイント

  • バリウム検査後は、便秘・下痢・腹部不快感・吐き気が一時的に出ることがある。
  • 白い便が出ることは、バリウムが排出されている目安になる。
  • 検査後は、水分摂取、下剤の服用、排便確認が重要である。
  • 強い腹痛、嘔吐、発熱、便やガスが出ない場合は医療機関へ相談する。
  • 蕁麻疹、息苦しさ、顔や喉の腫れはアレルギー反応として注意が必要である。

バリウム検査の副作用には何があるか

バリウム検査の副作用は、バリウムそのものによる症状、検査前の薬剤による症状、検査中の体位変換や緊張による症状に分けて考えるとわかりやすい。

バリウムは体内で吸収されるものではなく、便として排出される。したがって、検査後の問題として多いのは、バリウムの排出に関連する便秘、白い便、下痢、腹部膨満感などである。

また、施設によっては検査前に胃腸の動きを抑える注射を使用することがある。この薬剤により、口渇、動悸、目のかすみ、排尿しにくさ、めまいなどが出ることがある。

症状 考えられる原因
便秘 バリウムが腸内に残り、水分が抜けて硬くなるため。
下痢・軟便 検査後の下剤、バリウム排出、腸の反応による。
腹部不快感 発泡剤、体位変換、下剤、腸の動きによる。
吐き気 バリウムの飲みにくさ、検査中の体位変換、発泡剤など。
頭痛・めまい 緊張、空腹、脱水、検査前注射、体位変換など。
蕁麻疹・息苦しさ 過敏症、アレルギー反応、アナフィラキシー様症状の可能性。

多くは一時的であるが、症状の強さと経過によっては受診が必要である。

バリウム検査後の便秘

バリウム検査後に最も注意したい症状の一つが便秘である。

バリウムは白い造影剤であり、腸の中に残ったまま時間がたつと水分が抜けて硬くなり、排出されにくくなることがある。そのため、検査後には下剤を渡されることが多い。

便秘を防ぐためには、処方された下剤を指示通りに飲むこと、水分をこまめにとること、白い便が出たか確認することが重要である。

便秘予防で大切なこと

  • 下剤を指示通りに服用する。
  • 水やお茶などでこまめに水分をとる。
  • 白い便が出たか確認する。
  • 便の色が通常に戻るまで数回は確認する。
  • 普段から便秘が強い人は特に注意する。

数日たっても白い便が出ない、便やガスが出ない、腹痛や吐き気がある場合は、医療機関へ相談すべきである。

バリウム検査後の下痢

バリウム検査後の下痢は、検査後に飲む下剤の影響で起こることが多い。

白っぽい下痢や軟便が出る場合、バリウムが排出されている途中であることが多い。下剤の効き方には個人差があり、検査後数時間で出る人もいれば、翌日に出る人もいる。

白い便や白っぽい水様便が出ると驚くかもしれないが、検査後であればバリウムが出ているサインとして考えられる。

ただし、下痢が何日も続く、発熱や血便がある、強い腹痛を伴う場合は、下剤の影響だけではない可能性がある。

下痢で注意する症状

  • 下痢が数日続く。
  • 強い腹痛がある。
  • 発熱がある。
  • 血便がある。
  • 脱水症状がある。

バリウム検査後の腹痛

軽いお腹の張りや軽い腹部不快感は、バリウム検査後にみられることがある。

バリウム検査では、発泡剤で胃を膨らませ、検査台の上で体の向きを何度も変えながら撮影する。そのため、げっぷ、腹部膨満感、軽い気分不快を感じることがある。

また、下剤によって腸が動くことで、軽い腹痛やゴロゴロ感が出ることもある。

しかし、強い腹痛、徐々に悪化する腹痛、吐き気や嘔吐、お腹の強い張り、便やガスが出ない症状がある場合は注意が必要である。

上部消化管バリウム検査後の下部消化管穿孔はまれであるが、症例報告がある。特に、便秘、大腸憩室、消化器疾患の既往がある人が検査後に強い腹痛を訴える場合には、下部消化管穿孔の可能性に注意すべきと報告されている。

バリウム検査後の吐き気・嘔吐

バリウム検査後に軽い吐き気が出ることはあるが、強い嘔吐を伴う場合は注意が必要である。

バリウムは飲みにくく、発泡剤で胃が膨らむため、検査中から気分不快を感じる人がいる。また、検査台の上で体を回転させることも吐き気の原因になる。

一方で、嘔吐が続く、腹痛が強い、お腹が張っている、便やガスが出ない場合は、腸閉塞などの可能性も考える必要がある。

吐き気・嘔吐で相談すべき症状

  • 嘔吐を繰り返す。
  • 水分がとれない。
  • 強い腹痛がある。
  • お腹が強く張る。
  • 便やガスが出ない。

バリウム検査後の頭痛・めまい

バリウム検査後の頭痛やめまいは、バリウムそのものだけでなく、空腹、脱水、緊張、体位変換、検査前の注射などが関係していることがある。

胃の検査では、検査前に食事を控える必要がある。そのため、空腹や脱水気味の状態で検査を受け、検査後に頭痛やふらつきを感じることがある。

また、施設によっては胃腸の動きを抑える注射を使う。この薬により、口渇、動悸、目のかすみ、排尿しにくさ、めまいなどが起こることがある。

ふらつきがある場合は、無理にすぐ歩いたり車を運転したりせず、医療スタッフへ伝えて休むことが大切である。

検査前の注射による副作用

バリウム検査では、施設によって胃腸の動きを抑える注射が使われることがある。

代表的な薬剤にブチルスコポラミン臭化物がある。胃や腸の動きを一時的に抑えることで、検査画像を見やすくする目的で用いられることがある。

この薬剤では、以下のような副作用が起こることがある。

  • 口の渇き
  • 目のかすみ、ピントが合いにくい
  • 動悸
  • 排尿しにくい
  • 頭痛、めまい
  • 眠気、ふらつき

また、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、重い心疾患などがある場合は、使用に注意が必要なことがある。

緑内障、前立腺肥大、排尿障害、心臓病、不整脈、過去の薬剤アレルギーがある人は、検査前に必ず申告すべきである。

バリウムアレルギー・アナフィラキシー

バリウム検査では、まれにアレルギー反応やショック・アナフィラキシー様症状が起こることがある。

症状としては、蕁麻疹、かゆみ、顔や唇の腫れ、喉の違和感、息苦しさ、血圧低下、冷や汗、意識がぼんやりするなどがある。

アレルギーで注意すべき症状

  • 全身の蕁麻疹
  • 顔、まぶた、唇、喉の腫れ
  • 息苦しさ、呼吸困難
  • 冷や汗、顔面蒼白
  • 血圧低下、ふらつき
  • 意識がぼんやりする

これらの症状が検査中に出た場合は、すぐに医療スタッフへ伝える必要がある。帰宅後に出た場合も、検査を受けた医療機関または救急外来へ相談する。

重い副作用:消化管穿孔・腸閉塞・腹膜炎

バリウム検査後の重い副作用として、消化管穿孔、腸閉塞、腹膜炎がまれに報告されている。

バリウムが腸内に長く残り、硬くなった場合、便秘や腸閉塞の原因になることがある。また、非常にまれではあるが、腸管に穴が開く消化管穿孔を起こし、腹膜炎に至ることがある。

J-STAGE掲載の症例集積では、上部消化管バリウム検査後の下部消化管穿孔はまれであるが、バリウム腹膜炎として重篤な経過をたどることがあるとされている。

検査後に強い腹痛がある場合、特に便秘や消化器疾患の既往がある人では、早めに医療機関へ相談することが重要である。

すぐ医療機関へ相談すべき症状

次の症状がある場合は、バリウム検査後の一般的な不快感として様子を見るのではなく、早めに医療機関へ相談する。

受診を考えるべき症状

  • 強い腹痛がある。
  • 腹痛が徐々に悪化している。
  • 嘔吐を繰り返す。
  • 発熱がある。
  • お腹が強く張っている。
  • 便もガスも出ない。
  • 数日たっても白い便が出ない。
  • 蕁麻疹、息苦しさ、顔や喉の腫れがある。
  • ふらつき、冷や汗、意識がぼんやりする。

特に「強い腹痛」「嘔吐」「便やガスが出ない」「息苦しさ」は、早めに相談すべき重要なサインである。

バリウム検査後に気をつけること

バリウム検査後に最も大切なのは、バリウムを早く体外へ出すことである。

そのためには、下剤、水分、排便確認が基本になる。

  1. 医療機関から渡された下剤を指示通りに飲む。
  2. 水分をこまめにとる。
  3. 白い便が出たか確認する。
  4. 便の色が通常に戻るまで排便状況を確認する。
  5. 腹痛、嘔吐、便秘が続く場合は相談する。

検査当日の飲酒は避けるのが無難である。アルコールには利尿作用があり、水分不足から便が硬くなり、バリウムの排出が遅れる可能性があるためである。

バリウム検査を受ける前に伝えるべきこと

バリウム検査を安全に受けるためには、検査前の問診で正確に伝えることが重要である。

伝えるべきこと 理由
過去のバリウムアレルギー 再度の過敏症反応を避けるため。
喘息・アトピー・薬剤アレルギー アレルギー反応に注意が必要なため。
強い便秘 バリウム排出遅延や腸閉塞リスクに関わるため。
腸閉塞・腹部手術歴 検査適応や検査後の管理に関係するため。
緑内障・前立腺肥大・排尿障害 検査前注射の使用可否に関わることがあるため。
妊娠の可能性 X線検査であるため、事前確認が必要である。

「関係ないかもしれない」と思う病歴でも、問診票に書き、検査前にスタッフへ伝えることが安全につながる。

よくある質問

バリウム検査後に腹痛があるのは普通か?

軽い腹部不快感やお腹の張りは一時的に起こることがある。ただし、強い腹痛、悪化する腹痛、嘔吐、発熱、便やガスが出ない場合は医療機関へ相談する。

バリウム検査後に下痢が出たら大丈夫か?

白っぽい下痢や軟便は、下剤の影響でバリウムが排出されている可能性がある。ただし、下痢が数日続く、発熱や血便がある場合は相談が必要である。

頭痛やめまいはバリウムの副作用か?

頭痛やめまいは、空腹、脱水、緊張、検査前注射、体位変換などが関係することがある。強いふらつきがある場合は無理に動かず、医療スタッフへ伝える。

白い便が出たらもう安心か?

白い便が出ることはバリウム排出の目安であるが、1回で完全に出切ったとは限らない。便の色が通常に戻るまで、数回は排便状況を確認する。

バリウム検査後に市販の下痢止めを飲んでもよいか?

自己判断で下痢止めを使うのは避けた方がよい。バリウム排出を妨げる可能性があるため、症状が強い場合は医療機関へ相談する。

まとめ

バリウム検査後には、便秘、下痢、腹部不快感、吐き気、頭痛、めまいなどが一時的にみられることがある。

多くは軽い症状で自然に落ち着くが、強い腹痛、嘔吐、発熱、お腹の強い張り、便やガスが出ない、数日たっても白い便が出ない場合は、医療機関へ相談すべきである。

蕁麻疹、息苦しさ、顔や喉の腫れ、冷や汗、意識がぼんやりする場合は、アレルギー反応やアナフィラキシー様症状の可能性があり、すぐに相談が必要である。

検査後は、下剤を指示通りに飲むこと、水分をとること、白い便が出たか確認することが重要である。普段から便秘が強い人、高齢者、腹部手術歴や腸閉塞の既往がある人は特に注意が必要である。

バリウム検査の副作用を怖がりすぎる必要はないが、受診すべきサインを知っておくことが安全につながる。

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出典

  • 庄司良平, 青山克幸, 實金悠, ほか. 上部消化管バリウム造影検査後に下部消化管穿孔をきたした8例. 日本腹部救急医学会雑誌. 2019;39(5):979-982.
  • 角掛純一, 藤尾淳, 臼田昌広, ほか. バリウム服用による上部消化管造影検査を契機とした下部消化管穿孔の8例. 日本臨床外科学会雑誌. 2021;82(1):120-126.
  • PMDA. 医薬品・医療機器等安全性情報 No.219. 硫酸バリウム製剤に関する使用上の注意.
  • ブチルスコポラミン臭化物注射液 添付文書.