急性胆管炎は、その名の通り、胆管に炎症が起こる病気で、大変怖い疾患とも言われています。
胆管は、肝内胆管→肝門部胆管→上部・中部・下部胆管と続き、十二指腸乳頭から、消化管へと流れていきます。
その途中で、閉塞をきたし、胆汁がうまく流れなくなり、細菌感染などを起こして胆管炎を起こします。
今回は胆管炎(英語表記で「Cholangitis」)について
- 原因
- 症状
- 検査
- 怖い理由
- 治療
- 食事
- 看護
など、徹底的にまとめましたので、参考にされてください。
胆管炎とは?
胆管は上のように、緑の胆道と言われるところから胆嚢を除いた部位で、肝内胆管→肝門部胆管→上部・中部・下部胆管と続きます。
そのどこかで狭くなったり、閉塞機転をきたした場合、胆汁は鬱滞して、感染をきたし胆管炎を起こすことになります。
胆管炎の原因は?
胆管炎は、上記で説明したように、閉塞機転をきたすものが原因ということになります。
その原因には、
- 総胆管結石(50〜80%)
- 腫瘍(15〜50%)
の大きく2種類があります1)。
総胆管結石は、胆嚢でできたいわゆる胆石が落ちてきたものである場合が多いです。
その他、
- 良性胆道狭窄
- 胆道の吻合部狭窄
なども原因になります。
総胆管結石はどうやってできる?
一次性胆管結石
胆汁鬱滞や細菌感染により総胆管内で生成された結石の事で、胆石の中で約14%を占めます2)。
二次性胆管結石
二次性というのは他所で作られた結石が、落ちてくる結石の事です。
つまり胆嚢や肝内胆管で作られた結石が落ちてくるもので、こちらが大半を占めます。
胆管炎の原因菌は?どうやって感染する?
胆管炎の原因は感染によるのですが、その原因菌としては、
- グラム陰性桿菌
が多く、特に大腸菌が多いとされます。ついでクレブシエラが原因となります。
そして、これらの細菌はどうやって胆管にたどり着くかというと、腸管から上行性感染をすることが最多です。
胆管炎の症状は?
- 発熱
- 腹痛
- 黄疸
これら3つを合わせて、Charcot(シャルコー)の3徴と言います。
ただし、必ずしも3つ揃うわけではないので注意が必要です3)。
胆管炎の検査所見は?
臨床症状の他、血液検査や画像検査をおこない、診断されます。
血液検査
白血球や炎症反応であるCRPが上昇するほか、胆道系酵素であるALPやγ-GTPが上昇します。
また肝酵素やビリルビンも上昇します。
画像検査
画像では、エコー(腹部超音波検査)やCT検査、MRI検査で、胆管が拡張する様子が見える場合があります。
また閉塞機転となっている総胆管結石や胆道の腫瘍を同定できることもあります。
胆管炎はなぜ怖い?
最悪、死に至る病気であるためです。
胆汁が鬱滞すると、胆道内圧が上昇し、結果、感染を伴いやすくなります。
感染を伴った状態が、胆管炎です。
胆道内圧が上がると、細菌やエンドトキシンが血液中に移行しやすくなります。
血液が細菌に感染している状態で、これを敗血症と言います。
胆管炎から敗血症へ至った状態を、急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC:acute obstructive supprative cholangitis)と言います。
これは非常に恐ろしい状態で、
- ショック
- 意識障害
- 播種性血管内凝固(DIC)
- 急性腎不全
へと陥り、多臓器不全で、最悪命を落とすことになります。
急性胆管炎のうち、1割強が重症化し、適切に治療をしても2.7〜10%が死亡します4)。
これは同じ胆道系の感染症である胆嚢炎に比べても重症化する割合も死亡率も高いのです。
ちなみに、上のCharcot(シャルコー)の3徴に加えて、
- 意識障害
- ショック
を入れた5つを、Reynolds(レイノルド)の5徴と言います。
これを満たしたものを、急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)と言います。
ただし重症であっても、このReynolds(レイノルド)の5徴が全て揃うのはごくわずかと言われています5)。
症状が揃わないから重症ではないと勘違いしないことが重要です。
再発性化膿性胆管炎とは?
胆管炎の中でも特殊なタイプで、文字通り胆管炎の再発を繰り返します。
肝内結石により生じるのが特徴で、この結石があるために、なかなかスッキリと治りきらずに、治っても再び胆管炎を再発することが多いと言われています。
肝臓の中でも左葉に好発し、繰り返すことにより、肝臓の萎縮や、肝内膿瘍、肝内門脈血栓症を引き起こすことが知られています。
急性胆管炎の治療は?
治療は、原則として、細菌感染している胆汁を速やかに抜いて(ドレナージ)しまうことです。
重症胆管炎に対して適切なドレナージ処置を行わない場合、100%に近い死亡率が報告されています6)。
ドレナージが救命のためには、非常に重要となります。
初期治療として、絶食・点滴・抗生物質の投与をします。
胆道ドレナージ
引き続き、詰まっている胆汁を解放するために、ドレナージをおこないます。
基本は内視鏡を用いたアプローチです。
内視鏡的ドレナージ(EBD)
内視鏡で、十二指腸乳頭からアプローチをします。
内視鏡的にドレナージ(EBD)を行います。
鼻からドレナージチューブを出してくる内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)や腫瘍などの場合は胆管にステントを留置することもあります。
詳細はこちらを参考にしてください→ENBDとERBDの違いは?目的は?
経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD(PTCD))
「経皮」とは皮膚を経由して、「経肝」とは肝臓を経由して、それで胆道をドレナージする(外へ解放する)というものです。
つまり、皮膚から肝臓を串刺しにして、胆道へアプローチして、そこへチューブを入れて、皮膚から胆汁を排泄するという手技です。
詳細はこちらを参考にしてください→PTCD(PTBD)とは?PTGBDとの違いは?わかりやすく解説!
胆管炎の食事は?
症状が落ち着いて、回復に向かってからの食事になりますが、流動食から始まり→お粥→ご飯へとなります。
その、通常食になってからの注意ですが
- 低脂肪食にする(但し、1日に植物油1杯程度の量は摂る)
- バランスのとれた食事(野菜を中心に、バランスよく)
- 規則正しく食べる(1日3食、決まった時間に)
- 嗜好品・刺激物を控える(アルコール・カフェイン・炭酸・香辛料など)
などが重要です。
胆管炎の看護は?
高齢者の場合、急激に悪化することもあります。
そのため、
- 自覚症状
- 他覚症状
- バイタルサイン
など、よく観察し、変化を見逃さないことが重要です。
参考文献:
1)内科診断学 第2版 P896・897
2)3)病気がみえる vol.1:消化器 P361・372〜375
5)新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P260・261
病気・症状別 よく効く 食事療法P108・109
パッと引けてしっかり使える 消化器看護ポケット事典[第2版] P149
参考サイト:
4)厚生労働省委託事業 公益財団法人日本医療機能評価機構
6)急性閉塞性化膿性胆管炎に対する胆道ドレナージ法の検討
まとめ
胆管炎は、敗血症に陥る可能性があり、その場合は命に関わる病気です。
胆石がリスクとなるため、上記の腹痛・発熱・黄疸といった症状があれば、すぐに病院を受診しなければいけません。
未処置ならばあっという間に重篤な状態へと至ってしまいます。
早期受診・早期治療が重要です。
去年の11月頃に救急車で運ばれ総胆管性胆管炎と言われて2週間入院しました。今月の初めに検査が必要で、若しくは、胆嚢の外科手術が、予定されています。何とか胆嚢の温存したいと思っていましたが、自分の考えの甘さを実感しました。これで、素直に手術を受け入れることが出来ます。ありがとうござます。