
オプションの検査で「血圧脈波検査」を受けて、結果用紙に「ABI」「CAVI」という見慣れない項目が並んでいると、動脈硬化が進んでいるのではないかと不安になる人は多い。
結論からいうと、ABIは足首と腕の血圧の比で、0.90以下なら足の動脈の狭窄や閉塞が疑われ、CAVIは動脈の硬さの目安で、9以上が心血管病のリスクが高い目安として提案されている。ただし、どちらも1回の数値だけで病気が決まるわけではなく、血圧や血液検査の結果とあわせて判断する検査である。
この記事では、血圧脈波検査の内容、ABIとCAVIの見方、検査の流れ、数値が悪かったときの受診先と自分でできることを整理する。
- ABIは「足首の血圧÷腕の血圧」で、正常は1.00〜1.40。0.90以下は足の動脈の狭窄や閉塞が疑われる。
- 1.40より高い場合は、動脈が硬く石灰化している可能性があり、正しく測れていないこともある。
- CAVIは心臓から足首までの動脈の硬さの目安で、9が高リスクの目安として提案されている。
- 検査はあおむけに寝て、両腕と両足首にカフを巻くだけで、5分程度で終わる。
血圧脈波検査(ABI・CAVI)とは
血圧脈波検査は、両腕と両足首に血圧計と同じようなカフ(布)を巻いて、血圧と脈の伝わり方を同時に測る検査である。ここから、動脈硬化の程度を調べるための数値がいくつか計算される。結果用紙でよく見かけるのが、次の2つである。
- ABI(足関節上腕血圧比):足首の血圧を腕の血圧で割った値。足の動脈が狭くなっていないかを調べる
- CAVI(心臓足首血管指数):心臓の出口(大動脈の起始部)から足首までの動脈の硬さを表す値
ABIは「血管が細く詰まっていないか(狭窄・閉塞)」を、CAVIは「血管が硬くなっていないか」を見ている。似た名前だが、見ているものが違うため、結果を読むときは分けて考えるとよい。
なお、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分(2026年4月1日改定)には、ABIやCAVIの区分は載っていない。そのため、結果用紙の「正常」「要注意」などの表示は、検査を行った施設や測定機器の基準による。

ABIの基準と判定の区分

ABIは、足首の収縮期血圧(上の血圧)を、腕の収縮期血圧で割って求める。日本循環器学会・日本血管外科学会の「末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)」では、安静時のABIを次のように評価する。
- 1.00〜1.40:正常
- 0.91〜0.99:ボーダーライン
- 0.90以下:異常低値。足の主幹動脈の狭窄や閉塞が疑われる
- 1.40より高い:異常高値。動脈の高度な石灰化が疑われる
ふつう、足首の血圧は腕と同じか少し高いので、ABIは1前後になる。足の動脈が細くなると足首の血圧が下がり、ABIが低くなる。0.90以下になる病気を、下肢閉塞性動脈疾患(末梢動脈疾患)という。この病気は足だけの問題ではなく、心臓や脳の血管の病気を合併しやすい。同じガイドラインでは、ABIの低下は将来の脳心血管イベントの強い予測因子とされ、ABIが0.90以下の群では、そうでない群より心血管疾患による10年死亡率が高かったと紹介されている。
一方で、ABIが高すぎる場合にも注意が必要である。慢性腎臓病や糖尿病などで動脈の石灰化が強いと、カフで血管をつぶしきれず、足首の血圧が実際より高く出る。その結果、足の血流が悪くてもABIが正常かそれ以上に見えることがある。ガイドラインでは、足の動脈の病気が疑われるのにABIが1.40より高い場合は、足の指の血圧を測るTBIなどの追加検査を行うとしている。
CAVIの目安
CAVIは、2004年に開発された、心臓から足首までの動脈の硬さを表す指標である。大きな特徴は、測定したときの血圧の影響を受けにくいことだとされている。年齢とともに高くなるほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満など、動脈硬化の危険因子がある人で高くなりやすい。
心血管病の予測に使うカットオフ値としては、CAVI 9が最も適した値として複数の追跡研究から提案されている(Saiki 2020、Miyoshi 2021)。つまり、9以上は将来の心血管病のリスクが高い目安、9未満は比較的低い目安という扱いである。ただし、これは研究にもとづく目安で、結果用紙の判定は施設ごとの基準にしたがう。年齢が高いほどCAVIは高くなるため、1回の数値で一喜一憂せず、同じ施設で経過を見ることが大切である。
CAVIは、危険因子の治療や生活習慣の改善によって下がることが報告されている。CAVIが高かったからといって、すぐに病気が決まるわけではなく、血管の状態を見直すきっかけにする検査と考えてよい。
検査の流れ
血圧脈波検査は、痛みのない安全な検査で、所要時間は5分程度とされている(日本循環器学会 2022)。流れは次のとおりである。
- ベッドにあおむけに寝る
- 両方の上腕と両方の足首に、カフを巻く
- カフがふくらんで、血圧と脈波を自動で測る
ABIの計算には、左右の腕のうち高いほうの収縮期血圧が使われる(日本循環器学会 2022)。検査前の注意や服装については、受ける施設の案内にしたがってほしい。
数値が悪い・ずれる場合
数値が悪いときは、動脈硬化そのものだけでなく、次のような点も影響する。
- ABIが低い:足の主幹動脈の狭窄や閉塞が疑われる。糖尿病や腎臓病がある人、高齢の人に多い
- ABIが高い(1.40より上):石灰化が強い場合(糖尿病、腎臓病など)に起こる。見かけ上、正常に見えることもある
- CAVIが高い:加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などで高くなる
歩くとふくらはぎが痛くなり、休むと楽になる(間欠性跛行)症状があるのに、安静時のABIが正常な場合は、運動後にもう一度ABIを測ることがある。ガイドラインでも、この場合は運動後のABI測定が推奨されている。
再検査・受診の目安(何科)
次のような場合は、医療機関で相談してほしい。
- ABIが0.90以下
- ABIが0.91〜0.99のボーダーラインで、足の冷えやしびれ、歩くと足が痛む症状がある
- ABIが1.40より高く、糖尿病や腎臓病がある
- CAVIが9以上で、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの危険因子がある
受診先は、循環器内科または血管外科が目安である。日本循環器学会のガイドラインに添えられた患者向けの説明でも、ABIが異常であれば、循環器科や血管外科を受診し、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善に努めるよう案内されている。CAVIだけが高い場合は、まずかかりつけの内科で、血圧・血糖・コレステロールなどを確認してもらうとよい。
足のしびれ、安静にしていても痛む、傷が治りにくいといった症状がある場合は、検査結果を待たずに早めに受診してほしい。
なお、50歳以上で喫煙歴のある男性、糖尿病や腎臓病がある人、65歳以上の人には、年に1回のABI検査がすすめられている(患者向け説明・日本循環器学会 2022)。
血圧そのものについては高血圧の基準と降圧目標(130/80)、首の動脈の動脈硬化については頸動脈のプラークを改善するには?食事・運動・お酒の注意点と控えめにしたい食品も参考にしてほしい。
自分でできること
- 禁煙する:喫煙は足の動脈の病気の大きな危険因子である
- 血圧・血糖・コレステロールを管理する:高血圧、糖尿病、脂質異常症は動脈硬化の危険因子である
- 歩く習慣をつくる:足の症状がある人は、医師に運動の方法を相談してから行う
- 塩分や脂質をとりすぎない:バランスのよい食事を心がける
- 足を観察する:冷え、色の変化、傷が治りにくいなどに気づいたら早めに受診する
よくある疑問
Q1. ABIが正常なら、動脈硬化はないと考えてよい?
A. 足の動脈の狭窄や閉塞は、可能性が低いといえる。ただし、ABIは「詰まっているか」を見る検査であり、血管の硬さや、心臓・脳の血管の状態を示すものではない。石灰化が強い場合は、実際より高く出ることもある。
Q2. CAVIは年齢で変わる?
A. 年齢とともに動脈は硬くなる傾向がある。9という値は、心血管病のリスクを見る目安として提案されたものなので、同年代の平均や、前回の自分の値と比べながら見るとよい。
Q3. 血圧脈波検査は痛い?危険はある?
A. 日本循環器学会の患者向け説明では、痛くない、安全で簡単な検査とされている。カフが巻かれて締まる感覚はあるが、所要時間は5分程度である。
参考文献
- 日本循環器学会/日本血管外科学会. 2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Azuma.pdf
- Saiki A, et al. New Horizons of Arterial Stiffness Developed Using Cardio-Ankle Vascular Index (CAVI). J Atheroscler Thromb 2020. PubMed 32595186
- Miyoshi T, Ito H. Arterial stiffness in health and disease: The role of cardio-ankle vascular index. J Cardiol 2021. PubMed 34393004
- 日本人間ドック・予防医療学会. 判定区分(2026年4月1日改定). https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2026/02/2026hanteikijun.pdf





