健康診断や病院で血圧を測ると正常なのに、家で測ると高い。あるいは、職場で緊張する場面が続くと数値が上がる。そんな人は、本当に高血圧ではないのかと不安になるだろう。

結論からいうと、診察室(健診会場)の血圧が140/90mmHg未満でも、家庭で測った血圧が135/85mmHg以上なら「仮面高血圧」にあたる。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、仮面高血圧の心血管病のリスクは、診察室でも高い「持続性高血圧」と同程度とされている。健診で血圧が正常でも、安心しきらないことが大切である。

この記事では、仮面高血圧の定義、家庭や職場で高くなるタイプ、考えられる原因、見つけ方、受診の目安、自分でできることを整理する。

健診の血圧はいつも正常なのに、家で測ると140を超える日があります。気のせいでしょうか?

気のせいではない可能性があります。診察室より家庭の血圧のほうが、その人の普段の血圧をよく表すと考えられています。まずは家庭血圧を数日続けて記録し、その結果を持って医療機関に相談してみましょう。
この記事のポイント

  • 仮面高血圧は、診察室血圧が140/90mmHg未満なのに、診察室の外で測ると高い状態である。
  • 家庭血圧が135/85mmHg以上、または24時間血圧の平均が130/80mmHg以上で該当する。
  • 早朝・夜間・昼間(職場など)のどの時間帯で高いかによって、タイプが分かれる。
  • 診断はまず家庭血圧で行い、必要なら24時間血圧計で確かめる。

仮面高血圧とは

仮面高血圧は、病院や健診会場で測る血圧(診察室血圧)は高血圧の範囲ではないのに、診察室の外で測る血圧が高血圧の範囲にある状態である。日本高血圧学会のガイドライン(2019)では、診察室血圧が140/90mmHg未満で、家庭血圧が135/85mmHg以上、または24時間自由行動下血圧(ABPM)の平均が130/80mmHg以上の場合と定義されている。

反対に、診察室では高いのに診察室の外では正常な状態は「白衣高血圧」とよばれる。診察室の血圧と診察室の外の血圧の組み合わせで、血圧の状態は次の4つに分けられる。
診察室血圧と診察室外の血圧の組み合わせによる4つのタイプ(正常・白衣高血圧・仮面高血圧・持続性高血圧)
ガイドラインによると、仮面高血圧は高血圧のない人の10〜15%にみられ、降圧薬で診察室血圧を140/90mmHg未満にしている人の9〜23%にもみられるとされる。決してまれな状態ではない。

基準値と判定の区分

診察室の外で測った血圧について、ガイドラインは高血圧とみなす値を次のように示している。

  • 家庭血圧:135/85mmHg以上
  • 24時間血圧(ABPM)の平均:130/80mmHg以上
  • 昼間の血圧(ABPM):135/85mmHg以上
  • 夜間の血圧(ABPM):120/70mmHg以上

診察室血圧では140/90mmHg以上が高血圧の目安だが、家庭で測る値のほうが低めに設定されている点に注意してほしい。なお、これらは高血圧と診断するための値であり、治療でめざす血圧の目標は年齢や持病によって異なる。詳しくは高血圧の基準と降圧目標を解説した記事を参照してほしい。

仮面高血圧には、血圧が高くなる時間帯によって次のタイプがある。

  • 早朝高血圧:朝に測った家庭血圧が135/85mmHg以上。くわしくは早朝高血圧の原因と予防の記事を参照
  • 夜間高血圧:夜間の血圧が120/70mmHg以上。眠っている間に高い
  • 昼間高血圧:仕事中や家事中など、ストレスのかかる昼間の血圧が135/85mmHg以上

職場で測った血圧が高い「職場高血圧」は、健診や診察室では正常なのに職場のストレスのもとで高くなるもので、肥満の人や高血圧の家族歴がある人に多いとガイドラインに書かれている。

仮面高血圧のタイプ別の目安の表

仮面高血圧が高くなる原因と放置のリスク

仮面高血圧は、血圧が上がる時間帯や背景がひとつではない。ガイドラインや関連する記述から、次のような場面が考えられる。

  • 仕事や家庭でのストレス、睡眠不足:昼間の血圧が高くなる。交感神経が緊張した状態が続くと、夜も血圧が下がりにくい
  • 肥満・飲酒・喫煙:生活習慣の乱れは血圧全体を押し上げる。受動喫煙の人で、24時間血圧が高く仮面高血圧の頻度も高いという報告がある
  • 睡眠時無呼吸症候群:眠っている間や早朝の血圧が高くなりやすい。くわしくは睡眠時無呼吸症候群の検査の記事を参照
  • 降圧薬を飲んでいる人:診察室では血圧が下がっていても、薬の効果が切れる早朝などに高くなることがある

リスクについては、診察室の外の血圧が高いまま放置すると、臓器の障害や心血管病が起こる危険が、高血圧のない人や白衣高血圧の人より高くなる。ガイドラインでは、仮面高血圧の人は代謝異常(血糖や脂質の異常など)を伴うことも多く、高血圧による臓器障害が進みやすいとされている。症状がほとんどないため、気づかないまま進むことが問題である。

頭痛やめまいなど、何か症状はありますか?

高血圧は多くの場合、症状がありません。だからこそ、症状がなくても家庭血圧を測ることが見つけるきっかけになります。

血圧が急に上がる原因は、急な血圧の上昇の原因は?自覚症状はあるの?で解説しています。

見つけ方と数値がずれる場合

仮面高血圧は診察室の血圧だけでは見つからないため、診察室の外で測る必要がある。ガイドラインでは、次の順で調べる流れが示されている。

  • 家庭血圧測定:まず家庭で血圧を測り、記録する
  • 24時間血圧計(ABPM):家庭血圧だけでは判断しにくいときや、夜間の血圧を調べたいときに追加する。家庭血圧とABPMで結果が食い違うこともある

診察室血圧と家庭血圧の判断が食い違う場合、ガイドラインは家庭血圧にもとづく診断を優先するとしている。家庭血圧のほうが、将来の心血管病を予測する力が高いからである。家庭血圧の測り方は家庭血圧の正しい測り方の記事で確認してほしい。

数値がずれる原因も知っておきたい。

  • 腕の太さに合わないカフを使っているなど、測り方の問題(診察室でも、太い腕に細いカフを使うと実際より高く出る)
  • 1回だけの値は変動が大きいため、複数日の平均で見る必要がある
  • 運動、入浴、飲酒、喫煙の直後は一時的に高くなる

仕事の合間に血圧を測る男性のイラスト

受診の目安と何科にかかるか

次のような場合は、内科(かかりつけ医)や、高血圧を診る医療機関に相談してほしい。

  • 家庭血圧を数日測って、平均が135/85mmHg以上だった
  • 健診の血圧は正常でも、肥満・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・腎臓の病気など、高血圧のリスクが重なっている
  • 降圧薬を飲んでいるのに、家庭血圧が高い日が続く
  • 朝のうちに頭が重い、いびきや呼吸の停止を指摘されているなどの気になる症状がある

降圧薬を飲んでいる人の仮面高血圧では、ガイドラインは、見逃されている二次性高血圧がないかの確認と、生活習慣の改善点の確認もあわせて必要としている。二次性高血圧については二次性高血圧の原因や検査方法の記事が参考になる。薬を始めるかどうかや種類は、血圧の記録や臓器の状態を見て医師が判断するものであり、自己判断で薬を調整してはならない。

自分でできること

  • 家庭血圧を記録する:朝と夜など、決めた時間に測って、手帳やアプリに残す
  • 塩分を控える:生活習慣の見直しで血圧は下がることが示されており、減塩は中心となる対策である
  • 体重を整える:肥満がある人は、減量で血圧が下がることが報告されている
  • 飲酒を控え、禁煙する:受動喫煙も避ける
  • 睡眠をしっかりとる:睡眠不足や、いびきの指摘がある場合は受診を考える
  • ストレスをためこまない:仕事中に血圧が高くなる自覚があれば、休憩のとり方を工夫する

喫煙と血圧の関係は、【まとめ】タバコと血圧の関係は?高血圧の原因になる?で解説しています。

減塩とあわせて取り入れたいカリウムは、高血圧の食事でカリウムを摂る効果は?1日の目安・多い食品・腎臓病の注意で解説しています。

よくある疑問

Q. 健診の血圧が正常なら、仮面高血圧の心配はいりませんか。
A. 心配がなくなるとはいえない。診察室血圧が正常でも、家庭や職場で高ければ仮面高血圧のことがある。肥満、糖尿病、睡眠の問題などがある人は、一度家庭血圧を確かめてみるとよい。

Q. 白衣高血圧とは何がちがいますか。
A. 白衣高血圧は、診察室で高く、診察室の外では正常な状態である。仮面高血圧はその逆で、診察室では正常でも診察室の外で高い。リスクは、仮面高血圧のほうが高いとされる。

Q. 家庭血圧はどのくらい続けて測ればよいですか。
A. 1日だけで判断せず、複数日の記録をそろえて医療機関に見せるのがよい。具体的な測定方法は家庭血圧の測り方の記事を参照してほしい。

参考文献

  • 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019). Umemura S, et al. Hypertens Res. 2019;42:1235-1481. PubMed

気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してほしい。