頭部外傷を受けた場合、様々な影響が考えられます。
その診断のためにも頭部CTを撮ることがありますが・・・それが小児の場合、被曝等の問題から出来る限り受けさせたくないという考えをお持ちのご両親も多いと思います。
そこで今回は、小児が頭部外傷を受けた後の頭部CTについて
- 頭部CTの適応基準
- 頭部CTで分かること
以上のことをお話ししたいと思います。
小児の頭部CTの適応基準は?
頭に外傷を受けたんだから頭部CTをしっかり撮ってもらわないと安心出来ないということありませんか?
「頭は大事な部位だから」「詳しい検査といえば頭部CT」「頭部CTを受けていたら安心」様々な思いがあると思います。
しかし、CT検査には被曝の問題があります。
CTを受けた小児は、受けなかった小児と比較して発がんが多いという報告がされています。(BMJ,346:f2360,2013)
何でもかんでもとりあえず頭部CTというのは、おすすめしません。
では、本当に頭部CTが必要なのはどんな時なのでしょう?
小児の頭部CT検査の適応を判断するのに、役に立つのが次のNICE(National Institute for Health and Clinical Health Excellence)のガイドラインです。
16歳以下の小児の頭部単独外傷について、次の12項目のうち1つでも当てはまればCTを撮影するべきと定めています。
- 5分以上の意識消失
- 5分以上の健忘
- 嗜眠傾向
- 連続しない3回以上の嘔吐
- 虐待の疑い
- 外傷後の痙攣
- GCS14未満、1歳未満はGCS15未満
- 開放骨折、陥没骨折の疑い。大泉門の膨隆
- 頭蓋底骨折の疑い
- 神経学的所見がある。
- 1歳以下で頭部に5cm以上の打撲痕、腫脹、挫創
- 危険な受傷機転:高エネルギー外傷、3m以上の転落など
(NICE clinical guideline 56.)
これを1つ1つチェックして行き、当てはまるものがあれば頭部CTの撮影の適応があると判断します。
逆に言えば、ここのいずれにも当てはまらない場合は、頭部CTを撮影する必要はないということです。
どうしてもご両親がご希望された場合は例外で撮影することはありますが、CTによる被曝で発がんのリスクが増えることは覚えておかなくてはいけません。
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頭部CTをするとどんなことが分かる?
では、頭部CTを撮影するとどのようなことがわかるのでしょうか?
一番大事なのは、外傷により、頭蓋内に出血をしているかがわかるということです。
その出血(頭蓋内出血)の大きさや、場所、脳ヘルニアの有無などを頭部CTを撮影することにより評価することができます。
出血と一口で言っても以下のような様々な種類があります。
このうち特に頭部CTで重要となるのは、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷と言ったところです。
その他、頭蓋骨の骨折の有無もCTを撮影することにより診断することができます。
最後に
- 小児に安易にCT検査を行ってはいけない。発がんのリスクが増える。
- 小児の頭部CTを撮影する基準にはNICEのガイドラインが有用である。
- 頭部CTによって頭部外傷後の血腫や様々な疾患を発見できる
日本は他の先進国と比較して、CTを撮影しすぎる傾向にあります。
またそれによる発がんも他国よりも高いことが指摘されています。
近年、小児期のCT被曝により、発がんのリスクが高くなるというデータが各国から発表されています。
「とりあえずCT」ではなく、本当に必要な時にだけCT検査を行うことが重要です。