血管芽腫とは?原因・症状・画像診断と手術・放射線治療をCT・MRI画像で解説

脳腫瘍の中でも比較的まれな疾患に血管芽腫(読み方は「けっかんがしゅ」英語表記で「hemangioblastoma(ヘマンジオブラストーマ)」)というものがあります。今回はこの血管芽腫について

  • 原因
  • 症状
  • 診断
  • 治療法

について実際の画像を見ながら解説したいと思います。

血管芽腫って、どこにできるの?

小脳にできることが多い良性の腫瘍です。フォン・ヒッペル・リンドウ病という遺伝性の病気にともなうこともありますよ。
先に結論

  • 血管芽腫は小脳に多くできる良性の腫瘍で、嚢胞(水ぶくれのような部分)と、そこに付着する結節(壁在結節)が特徴です。
  • 孤発例(遺伝と関係しないもの)が半数以上ですが、遺伝性のフォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL病)に合併するものもあります。
  • 症状は頭痛・嘔吐・ふらつき・めまいなどで、進行はゆっくりなことが多いです。
  • 診断はMRIが中心で、治療は手術で摘出するのが基本です。手術が難しい場合は定位放射線治療を検討します。

血管芽腫とは?

成人に多く発生する良性腫瘍で、毛細血管に富み、腫瘍内に嚢胞を有します。半数以上は孤発例ですが、一部はフォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL)の合併症として見られます。割合は報告によって異なり、ある施設の報告では孤発例が62%、VHL病が38%でした(Conway 2001)。VHL病に伴う場合は、より若い年齢で発症しやすく、複数できやすいとされます。

医師
腫瘍が発生することが多い好発部位についてご説明します。

好発部位

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上のように小脳半球に好発し、たいていは小脳に1つということが多いですが、延髄や脊髄に発生することもあります。

成人に発生する小脳半球の腫瘍は、この血管芽腫のほか、転移性腫瘍が多いです。

腫瘍が多くできる小脳の働きは、小脳とは?場所・働きと、障害されたときの症状(ふらつき・失調)を解説でわかりやすくまとめています。

血管芽腫の原因は?

血管内皮細胞由来と考えられてきました。しかし、組織由来や起源は不明で、病理学的に血管が目立つ腫瘍であるので、血管外皮腫などと共に血管系腫瘍とまとめられることもあります。

医師
聞きなれない血管外皮腫について付属説明致します。

 

血管外皮腫とは?
「血管周囲細胞腫」や「血管周皮腫」などと呼ばれることもあります。発生頻度は低いものの、画像所見では髄膜腫と類似しているため、鑑別診断が必要です。なお、近年の分類では孤立性線維性腫瘍と同じグループとして扱われることがあります。

 

血管芽腫の症状は?

  • 頭蓋内圧亢進症状(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)
  • 小脳失調症状(吐き気・目眩)
  • 局部症状(眼振)

などが症状としてあります。頭蓋内圧亢進症状は水頭症を起こした結果の症状でもあります。

症状の進行は遅い特徴があり、頭蓋内圧亢進症状による頭痛で発症することが多くあります。また、腫瘍が産生するエリスロポエチンによる赤血球増加症(多血症)を伴うこともあります。

ふらつきで頭に手をあてる女性のイラスト

腫瘍で髄液の流れが妨げられて起こる水頭症については、水頭症とは?原因・症状・診断(CT・MRI)・治療法をわかりやすく解説で解説しています。

血管芽腫の診断は?

  • CT検査
  • MRI検査
  • 脳血管造影検査

などを行い診断します。

医師
それぞれについてご説明します。

CT検査

嚢胞は低吸収で、壁在結節は等吸収です。

MRI検査

嚢胞はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示します。また、造影剤で均一に増強されます。軟膜に接する壁在結節を有する嚢胞性病変が最も特徴的な所見ともなります。

症例:30歳代女性 頭痛で救急外来を受診。

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左側:頭部CTにおいて、30歳代にしては脳室拡大が目立ちます。水頭症を疑う所見です。

右側:左小脳半球に嚢胞性腫瘤を認めており、それが第4脳室を圧排しています。つまり、小脳半球の嚢胞性腫瘤による閉塞性水頭症を生じている状態です。

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右側:MRI検査では、T2強調像で著明な高信号を認めており、やはり嚢胞を疑う所見です。

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造影MRIの横断像(左)及び矢状断像(右)です。小脳半球に嚢胞+壁在結節のパターンを示す腫瘤あり。壁在結節には造影効果を認めています。

血管芽腫を疑う所見です。手術の結果、血管芽腫と診断されました。

脳血管造影検査

顕著な腫瘍濃染像と、太くなった腫瘍の栄養動脈が特徴です。画像検査では、小脳星細胞腫や嚢胞性転移性腫瘍と類似した所見なため、血管造影を行い鑑別をすることが大切です。

のう胞と壁在結節をもつ別の小脳の腫瘍は、毛様細胞性星細胞腫とは?症状・MRI画像の特徴と治療、悪性度のまとめで紹介しています。

血管芽腫の治療法は?

外科的治療による腫瘍全摘出が目標となります。しかし、脳幹部や多発例では全摘出が困難となることも多く、その場合は放射線療法により定位照射を行います。(取りきれなかった残存腫瘍に対しても)

全摘出できれば治癒が期待できます。しかし、多発例や再発例の場合は注意が必要です。特にVHL病では新しい病変ができやすいため、定期的に画像検査で経過をみます。症状が出る前の段階で新しい病変の多くが見つかったという報告があります(Conway 2001)。

血管芽腫の画像検査と治療をまとめた表

最後に

  • 成人に多く発生する良性腫瘍
  • 半数以上は孤発例で、一部はフォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL)の合併症として見られる
  • 小脳半球に好発
  • 組織由来や起源は不明
  • 頭蓋内圧亢進症状・小脳失調症状・局所症状が見られる
  • 嚢胞とその内側に付着する壁在結節が特徴
  • 腫瘍全摘出を目標とする

 

摘出可能なものは、全摘出できれば治癒が期待できるため、手術が基本とされます。手術が難しい場合に放射線治療(定位放射線治療)を選ぶことがあります。

放射線治療は、腫瘍が縮小したり大きくなるのを抑えたりできることが多い一方、腫瘍をすぐになくす治療法ではありません。28の研究・627人をまとめた解析では、腫瘍が大きくならずに抑えられた割合(局所制御率)は全体で89%、5年で87%、10年で80%と報告されています。VHL病に伴う病変のほうが孤発例より5年の制御率が高い(94%と82%)ことも示されています(Zare 2025)。

よくある疑問

Q. 血管芽腫は悪性ですか?
A. 良性の腫瘍に分類されますが、小脳や脳幹・脊髄にできると頭痛やふらつきなどの症状が出るため、治療が必要になることがあります。多発や再発する場合もあります。

Q. フォン・ヒッペル・リンダウ病(VHL病)とは何ですか?
A. 血管芽腫や腎臓などの腫瘍ができやすくなる遺伝性の病気です。血管芽腫が見つかった場合、VHL病かどうかを調べることがあります。

Q. どんなときに受診すればよいですか?
A. 頭痛や吐き気、ふらつきが続く、歩きにくい、といった症状があるときは、脳神経外科や神経内科などの医療機関に相談してください。

参考文献

  • Conway JE, et al. Hemangioblastomas of the central nervous system in von Hippel-Lindau syndrome and sporadic disease. Neurosurgery 2001. PubMed
  • Zare A, et al. Stereotactic radiosurgery in the management of central nervous system hemangioblastomas: a systematic review and meta-analysis. Neurosurg Rev 2025. PubMed