お酒が原因となる肝臓の病気に、アルコール性肝炎という疾患があります。
この病気は、進行すると肝硬変へと移行し、命に関わる事もある大変怖いものです。
その様な事になる前に!
お酒の摂り方に十分に気をつけ、早期に発見出来れば、治療で回復する事も可能ですので、病気の症状を見逃さない事も重要です。
そこで、今回はアルコール性肝炎(英語表記で「Alcoholic hepatitis」)について
- 症状
- 診断
- 治療法
などをまとめました。
参考になさってください。
アルコール性肝炎とは?
アルコール性肝障害の一つで、1日3合以上を5年以上続けている常習的な大酒家が、飲酒量を増やすことで生じる疾患で、炎症反応が強く現れます。
組織学的には中心静脈周辺の炎症性細胞浸潤が、血液検査では末梢血の好中球増加が特徴となります。
アルコール性肝炎の症状は?
アルコール性肝炎になると、肝細胞が壊されてしまい炎症が起こるため
- 全身の倦怠感
- 腹痛
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- 意識障害
- 黄疸
などが現れます。
また、体の表面から腫大した肝臓を触れることもあります。
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アルコール性肝炎の診断は?
基本的な事ですが、重要とされるのは、問診により正確な飲酒歴を確認することです。
また、アルコール性肝炎のガイドラインによると、肝臓の生検(肝臓を針で刺して肝臓の組織を採取し病理診断します。)により、
- 肝組織病変の主体が、肝細胞の変性・壊死
- 小葉中心部を主体とした肝細胞の著明な膨化(風船化、ballooning)
- 種々の程度の肝細胞壊死
- Mallory体(アルコール硝子体)、および多核白血球の浸潤
の有無を確認し、
- 1と4のすべてを認める、もしくは3または4のいずれかを欠くもの→定型的なアルコール性肝炎
- 3と4の両者を欠くもの→非定型的なアルコール性肝炎
と診断します。
背景肝が脂肪肝、肝線維症あるいは肝硬変であっても、上記のようなアルコール性肝炎の病理組織学的特徴を満たせば、アルコール性肝炎と診断します。1)
また、ウイルス性肝炎・自己免疫性肝炎・薬剤性肝障害など、他の肝機能障害を除外することも重要です。
アルコール性肝炎の重症度スコア(JAS)
アルコール性肝炎は以下の項目でそれぞれ点数をつけてそれらの合計点で重症度を分類します。
これらの結果により、
- 軽症→7点以下
- 中等症→8~9点
- 重症→10以上
と、各項目の合計点数から重症度が決まります。
そして10点以上の重症の場合は、積極的な治療を行うことが必要となります。
アルコール性肝炎の治療は?
- 禁酒
- 栄養療法
- 肝庇護療法(かんひごりょうほう)
などが治療法としてあります。
何よりも大切な事は、禁酒する事です。
初期の状態では、禁酒に加えて食事療法を合わせる事で症状が改善する事もあります。
また、入院が必要と診断された場合には、点滴でビタミンB1を補給し、食事療法で肝臓の機能の回復をさせる事になります。
そのほか、肝庇護療法として、グリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸などが選択されます。
しかし、中には禁酒しても炎症が続き、脳症・肺炎・腎不全・消化管出血などの合併症を伴うこともあります。
そのような重症例(重症度10点以上)では
- 副腎皮質ステロイド療法(サイトカイン産生を抑制)
- 血漿交換や血液透析濾過(正常血漿を投与し、アンモニアなどの毒性物質を除去)
などが選択されます。
関連記事)【保存版】肝臓の病気や症状を徹底まとめ!
参考:
1)肝炎情報センター
新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P225〜227
消化器疾患ビジュアルブック P180・181
病気がみえる vol.1:消化器 P308・309
最後に
- アルコール性肝障害の一つで、常習的な大酒家が、飲酒量を増やすことで生じる疾患
- 肝細胞が壊されてしまい炎症が起こるため、様々な症状が現れる
- 正確な飲酒量の確認や、他の肝障害を除外し、重症度判定を行う
- 禁酒・栄養療法・肝庇護療法などの治療法がある
- 重症例では、副腎皮質ステロイド療法・血漿交換や血液透析濾過を選択する
何よりも重要なのは、禁酒、そして早期に診断治療を開始することです。
毎日楽しみにしているお酒が飲めないとなると、症状を無視し、飲酒を続ける方も多々いらっしゃいますが、重要化するとその分治療も大変なものとなります。
気になる症状がある方は、早期に受診することをオススメします。