腫瘍マーカーといってもさまざまな項目がありますが、その中のひとつであるpivka2はどのような癌で数値が上昇するのでしょう?
今回は、腫瘍マーカーのpivka2について
- 正常値
- 高値の場合の病気
- 注意点
を説明したいと思います。
pivka2とは?
pivka2の読み方は「ピブカ・ツー」です。
肝臓で合成される凝固活性を持たない異常なプロトロンビン(血液凝固第Ⅱ因子)でありprotein induced by vitamin K absence or antagonistⅡの略称で、頭文字をとってpivka2と呼ばれています。
肝細胞癌の腫瘍マーカーとして知られていますが、他の肝細胞癌の腫瘍マーカーである、AFPやAFP-L3%と相関関係はありません。
つまり、pivka2単独で高値を示しているよりも、AFPやAFP-L3%も高値を示している場合、より肝細胞癌の可能性は高くなるといえます。
感度、特異度ともに高く、腫瘍マーカーとしての信頼性は高いのが特徴です。
また、このpivka2は、ビタミンK欠乏や肝実質障害を機転に血中に現れるため、出血の傾向がビタミンKによるものかどうかの鑑別にも用いられます。
pivka2の正常値は?
pivka2の正常値は、40mAU/ml未満です1)。
これ以上となれば、異常(病気)の可能性があります。
pivka2が高値だと考えられる病気は?
pivka2が高値の場合には、
などの病気が挙げられます。
上記で説明しましたように、まずはビタミンK欠乏症だと高値になることもあり、ビタミンK欠乏症を否定できれば、肝細胞癌を疑います。
癌などの腫瘍では、圧倒的に肝細胞癌が多い傾向にあります。
慢性肝炎など良性疾患でもこの数値が上がることがありますが、陽性率は数%と低く、AFPのようになんでも上がるというものではなく、この数値が高い場合は肝細胞癌である可能性がより高いといえます2)。
また、胃癌や盲腸癌といった癌でも上がることがありますが、稀です。
それ以外では、プロトロンビンがビタミンKを必要とする酵素であることから、ビタミンKが欠乏する状態にあれば必然的にこの値が上がります。
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- ビタミンKの摂取不足
- ビタミンK拮抗薬=ワルファリン使用時
- ビタミンKの腸管吸収が妨げられる=閉塞性黄疸
- ビタミンKのサイクルを阻害=セフェム系抗生物質
- ビタミンKの取り込み、利用障害を起こす=アルコール性肝障害
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といった場合にこの値が上昇します。
これらの薬を飲んでいたり、病態を把握できていれば肝細胞癌と誤診する可能性は低いといえそうです。
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pivka2の評価の注意点
pivka2は非常に感度・特異度が高く、高値を認めた時に画像診断をして、肝細胞癌がなくても、その後肝細胞癌が発症することがあるのでフォローが重要です。
ただし、上記のようなビタミンKが欠乏する病態はもちろんのこと、いくら感度・特異度が高いといっても、100%信頼できるわけではありません。
肝細胞癌の他の腫瘍マーカーである、AFPおよびAFP-L3%と組み合わせた測定が重要なのです。
参考文献:
1)今日の臨床検査2011 2012 P489
2)最新 健康診断と検査がすべてわかる本 P99
検査結果なんでも早わかり事典 P35
最後に
pivka2について、ポイントをまとめます。
- 肝で合成される凝固活性を持たない異常なプロトロンビン
- ビタミンK欠乏や肝実質障害を機転に血中に現れる
- pivka2の正常値は40mAU/ml未満
- 癌などの腫瘍では、圧倒的に肝細胞癌が多い
- AFPおよびAFP-L3%と組み合わせた測定が重要
pivka2は、とくに肝臓癌だけに高値を示すため、肝臓癌の診断や再発・転移の早期発見に非常に有用です。