腫瘍マーカーのひとつにAFPと(読み方はそのまま「エーエフピー」もしくは「アルファフェトプロテイン」)というものがあります。
ですが、これがどういったもので、異常な場合はどのような病気が考えられるのか、わからないことも多いですよね?
そこで今回は、腫瘍マーカーのAFPについて
- 基準値
- 異常な場合に考えられる病名
- 高値となる腫瘍
などを解説したいと思います。
AFPとは?
AFPは、胎児期に肝臓で作られるタンパク質であり、出生後にはほとんど作られません。
しかし、肝細胞癌をはじめ、悪性腫瘍がある場合に高値となることがあります。
そのため、AFPが基準値を超えて異常に増加している場合、体のどこかに癌があることが推測できるのです。
そういうわけではありません
あくまでも、癌がある可能性が推測されるだけで、中には癌があっても高値を示さないこともありますし、他の病気の可能性もあります。
そのため、腫瘍マーカーは絶対ではなく、疑いを持ってさらなる検査が必要なものだとお考えいただければいいでしょう。
生理的にAFPが高い場合がある
胎児ではAFPの数値が高く、生後1年以内で成人と同じくらいの濃度になりますので、胎児で高くても慌てる必要ありません。
また、妊婦は胎児から移行したAFPにより妊娠3ヶ月から増加し始め、8ヶ月をピークにAFPが上昇しますが、胎児同様妊婦の場合もこの値が高くても慌てる必要はありません1)。
AFPの基準値は?
AFPの基準値は、10ng/ml以下です2)。
臨床的には通常、20ng/mlをカットオフ値としています。
AFPが異常値の場合に考えられる病名は?
AFPが正常値よりも高い場合は、
などの病気が原因として挙げられます。
ご覧のように、必ずしも癌などの悪性腫瘍だけではなく、肝炎などの良性疾患でもこの腫瘍マーカーは上がるということです。
どの腫瘍マーカーにもいえることですが、腫瘍マーカーの上昇=癌というわけではないので、その解釈には注意が必要です。
AFPが上がる腫瘍について詳しく
上に挙げた悪性腫瘍は、
- 肝細胞癌
- 胃癌
- 精巣腫瘍
- 肝芽腫
です。
このうち肝芽腫は子供の腫瘍ですので、大人の場合は、肝細胞癌・胃癌・精巣腫瘍ということになります。
一般的に、AFPが上昇する癌といえば、肝細胞癌を意味するくらい(陽性率が高い)です。
ただし、慢性肝疾患患者においてはこの値だけではなく、AFP-L3%やPIVKAⅡという別の腫瘍マーカーと相補的な関係にあり、これらの値を交互に測定するのが大事だとされます。
AFPが上昇しており、慢性肝疾患のある人は、必ずCTやMRIの画像検査を行い肝細胞癌がないかをチェックしていくことが重要です。
胃癌の中でもこのAFPが上昇するのは、特殊な組織型であるAFP産生胃癌と呼ばれ、稀です。
精巣腫瘍には、セミノーマと非セミノーマに分けられ、このうち非セミノーマでこのAFPが上昇します。またこの非セミノーマでは、hCGという値も上昇をし、これらの2つの値の程度により予後が異なるとされます。
参考文献:
1)2)今日の臨床検査2011 2012 P488
最新 健康診断と検査がすべてわかる本 P98
検査結果なんでも早わかり事典 P34・35
よくわかる検査数値の基本としくみ P138・139
最後に
AFPについて、ポイントをまとめます。
- AFPは、胎児期に肝臓で作られるタンパク質
- 癌などの悪性腫瘍がある場合に現れて、高値となる(あくまでも推測で、他の病気の可能性もある)
- 胎児や妊婦では高くなる
- AFPの基準値は、10ng/ml以下
- とくに肝細胞癌の指標として有用
AFPが高値ならば癌という確定診断には向きませんが、血液を採取するだけでできる簡便な検査です。
しかし、病気を特定するには、肝機能検査や画像診断なども必要になります。