人間ドックの血液検査で「AFPが高い」「腫瘍マーカーに印がついている」と言われると、肝臓がんなどの重い病気を想像して不安になる人は多い。
結論からいうと、AFP(アルファ・フェトプロテイン)は主に肝細胞がんの診断の補助や経過をみるための腫瘍マーカーで、高いことだけでがんと決まるわけではない。肝炎や肝硬変、妊娠でも値は上がる。一方で、B型・C型肝炎や肝硬変がある人にとっては、定期的に測ることが勧められている検査でもある。
この記事では、AFPの意味、基準値の考え方、高くなる原因、受診の目安、がん検診としての位置づけを整理する。
- AFPは胎児の肝臓などで作られるたんぱく質で、成人では血液中にごく少量しかない。
- 肝細胞がんや、卵巣・精巣などの胚細胞腫瘍で上がるが、肝炎・肝硬変・妊娠でも上がる。
- 基準値は検査機関や測定法で異なるため、結果票に書かれた基準値を見る。
- 腫瘍マーカーは、がんの早期発見のための検診としては勧められていない。
AFP(アルファ・フェトプロテイン)とは
AFPは、胎児の肝臓や卵黄嚢(らんおうのう)で作られる血液中のたんぱく質である。生まれた直後の血液中にはたくさんあるが、その後は速やかに減り、健康な小児や成人では10ng/mL以下のごく低い濃度になる(和歌山県立医科大学附属病院 検査マニュアル)。
大人になって血液中のAFPが増えるのは、肝臓の細胞ががん化したときなどである。そのため、AFPは腫瘍マーカー(がんの種類によって特徴的に作られる物質)の一つとして使われている。国立がん研究センターの「がん情報サービス」では、肝細胞がんの腫瘍マーカーとして、AFP、PIVKA-II、AFP-L3分画の3つが挙げられている。AFPは、肝臓がん、卵巣がん、胚細胞腫瘍の診断の補助や、治療の効果をみるために使われる(米国国立がん研究所)。
腫瘍マーカーは「がんの診断の補助」や「診断後の経過・治療効果の確認」が主な目的であり、数値だけでがんの有無を決める検査ではない(国立がん研究センター)。
胚細胞腫瘍などで測られるhCGについては、hCGが高値のとき考えられる病気は?腫瘍マーカーの基準値と再検査の目安で解説しています。
基準値と数値の見方
AFPの基準値は、検査に使う試薬や測定法によって異なる。たとえば、和歌山県立医科大学附属病院では7.0ng/mL以下、国立病院機構南和歌山医療センターでは10ng/mL以下(「~10」)とされている。数値そのものを他の施設の基準と比べるのではなく、受け取った結果票の基準値と見比べることが大切である。
日本肝臓学会の肝癌診療ガイドライン(2017年版)では、肝細胞がんの診断の研究で、AFPのカットオフ値として20ng/mLや200ng/mLがよく用いられている。5cm以下の肝細胞がんを対象とした研究のまとめでは、20ng/mLでの感度は49〜71%、特異度は49〜86%と幅があった。同じ研究で、200ng/mLでは感度が8〜32%に下がる一方、特異度は76〜100%に上がっていた。つまり、値を高く区切るほど「がんでない人を間違って拾う」ことは減るが、「がんを見逃す」ことは増える。

ガイドラインでは、定期検査でAFPが持続的に上がっていく場合や、200ng/mL以上に上がった場合は、超音波検査で腫瘍が見つからなくても、造影CTや造影MRIを撮ることを考えるとされている。慢性肝炎の人ではAFPが上がりやすいため、判断の区切りを高めに置く必要があるとも書かれている。
AFPが高いときに考えられる原因
AFPが高いときは、次のような状態が考えられる。
- 肝細胞がん:代表的な原因である。
- 卵巣・精巣などの胚細胞腫瘍:診断の補助や治療効果の確認に使われる(米国国立がん研究所)。
- 慢性肝炎・肝硬変・ウイルス性肝炎:がんがなくても上がる。軽度から中等度(約400ng/mLまで)の上昇では、肝細胞がんかどうかを区別しにくいとされる(和歌山県立医科大学附属病院 検査マニュアル)。
- 妊娠:胎児が作るAFPが母体の血液にも出るため、妊娠中は週数にあわせた別の見方をする(国立公衆衛生院 1988)。
過去の臨床検査の報告でも、AFPが20ng/mLを超えた人の背景には、肝細胞がんや胚細胞腫瘍のほか、ウイルス性肝炎や肝硬変があった(Brummund 1980)。ガイドラインでも、C型肝炎への感染や肝臓の線維化が進むことで、AFPが軽く上がることがあると説明されている。

肝炎の種類や症状の違いは、急性肝炎の症状や原因は?人にうつる?A型・B型・C型の違いと受診の目安で解説しています。
数値がずれる・変わる場合
- 肝炎の状態で変わる:肝臓の炎症が強い時期は、がんがなくても上がることがある。値が1回だけ高いのか、少しずつ上がり続けているのかが重要になる。
- がんがあっても上がらない:肝細胞がんがあっても、AFPが上がらない人がいる。国立がん研究センターでは、腫瘍マーカーがいずれも陰性のこともあるため、診断には画像検査もあわせて行うとしている。
- ウイルス治療を受けている場合:B型肝炎の核酸アナログ治療中や、C型肝炎のウイルスが消えた人では、AFPの診断能が変わる可能性が報告されている。適した区切りの値は今後の検討課題とされているため、主治医に確認してほしい(日本肝臓学会 2017)。
腫瘍が小さいときは、AFPに加えてPIVKA-IIやAFP-L3分画など2種類以上を測ることが勧められている(国立がん研究センター)。PIVKA-IIの記事も参考にしてほしい。
再検査・受診の目安
次のような場合は、内科、特に消化器内科や肝臓内科(肝臓外来)を受診してほしい。
- AFPが基準値を超え、B型・C型肝炎や肝硬変があるとわかっている、または肝炎ウイルス検査を受けたことがない
- 前回の検査より、AFPが明らかに上がってきている
- AFPが高く、AST・ALTなどの肝機能の項目にも異常がある
- 以前から肝炎や肝硬変で通院していて、定期検査の時期になっている
肝臓の検査では、まず血液検査と腹部超音波検査を受け、必要に応じてCTやMRIで詳しく調べるのが一般的である(国立がん研究センター)。肝機能の見方はAST・ALTの記事、肝臓がんの症状や治療は肝臓がん(肝細胞がん)の記事で解説している。
妊娠中の人は、AFPの数値が妊娠週数で変わるため、産婦人科の医師に結果を伝えて判断してもらうとよい。

肝臓の検査の種類については、肝臓の検査の種類と方法は?血液検査の基準値・画像検査・何科を受診するかもあわせてご覧ください。
がんの早期発見のための検診としてはどうか
国立がん研究センターは、腫瘍マーカーについて、がんがないのに高くなったり、がんがあっても高くならなかったりするため、がんをより早く発見するために有効とは限らないと説明している。健康診断のオプションや人間ドックで行われる腫瘍マーカー検査は、国が推奨するがん検診には含まれない。
人間ドックで腫瘍マーカーが高く精密検査を勧められた場合は、身近な医療機関を受診し、医師が必要と判断すれば精密検査を受ける。腫瘍マーカーが高いだけで、がんと診断されたわけではない。
どの腫瘍マーカーを調べるかの考え方は、人間ドックの腫瘍マーカーの選び方で整理している。
自分でできること
- 肝炎ウイルス検査の結果を確認する:B型・C型肝炎や肝硬変がある人は、3〜6か月ごとの超音波検査と腫瘍マーカー検査が勧められている。
- 結果票を保管して持参する:AFPは1回の値よりも、前回との比較や推移が役に立つ。過去の肝機能の値と検査日も伝える。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある場合は、検査前に伝える
よくある疑問
Q. AFPが高ければ、肝臓がんが見つかるのか。
A. 高いだけではわからない。肝炎や肝硬変、妊娠でも上がる。逆に、肝細胞がんがあってもAFPが上がらないことがある。画像検査とあわせて調べる。
Q. AFPが基準値内なら、肝臓がんはないといえるのか。
A. いえない。腫瘍マーカーがいずれも陰性のこともあるため、肝臓の病気がある人は、AFPが正常でも超音波検査などの定期検査を続ける必要がある。
まとめ
- AFPは、肝細胞がんや胚細胞腫瘍の診断の補助、経過をみるために使われる腫瘍マーカーである
- 肝炎・肝硬変・妊娠でも上がり、がんがあっても上がらないことがある
- 基準値は施設や測定法で異なる。結果票の基準を見て、推移を確認する
- 肝炎・肝硬変の人は定期検査が勧められ、健康な人の早期発見目的の検査は勧められていない
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」 https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/marker.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん)検査」 https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/diagnosis.html
- 日本肝臓学会「肝癌診療ガイドライン 2017年版(第4版) 第1章 診断およびサーベイランス」 https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/medical/2017_v4_chap01.pdf
- 和歌山県立医科大学附属病院 一次サンプル採取マニュアル「AFP」 https://www.wakayama-med.ac.jp/hospital/shinryo/inspection/files/2142000.pdf
- 同「AFP-L3(%)」 https://www.wakayama-med.ac.jp/hospital/shinryo/inspection/files/2143000.pdf
- 国立病院機構 南和歌山医療センター「臨床検査基準値一覧(2025年9月25日更新)」 https://minamiwakayama.hosp.go.jp/pdf/Reference_range_list_20250925.pdf
- 米国国立がん研究所「Tumor Markers Used in Cancer Treatment(腫瘍マーカー一覧)」 https://www.cancer.gov/about-cancer/diagnosis-staging/diagnosis/tumor-markers-list
- Brummund W, et al. Clin Chim Acta 1980 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6156781/
- 国立公衆衛生院「母体血AFPを指標としたトリソミースクリーニングの基礎的検討」1988 https://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1988/s631258.pdf
気になる症状や結果があれば、医療機関に相談してほしい。





