大腸がんはここ30年でなんと5倍に増えており、10人ちょっとに1人が大腸癌になる時代です。
大腸がんの治療の一つに手術療法があります。
日本の大腸がんの手術後の5年生存率は15年間で14%も上がっています。これは世界の中でもトップレベルであり、確実に進歩しているということができます。
内視鏡治療の適応になる程早期ではないけれど、遠隔転移などはきたしておらず、手術で取り切ることができる状態の場合に手術の適応になります。一般的にはステージⅢBまでは手術の適応となります。(ただし、肝臓などに転移がある場合でも積極的に手術をしていくのが大腸がんの特徴でもあります。)
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この大腸がんの手術の方法ですが、
- 開腹手術
- 腹腔鏡手術
の2種類があります。前者の方が傷口が大きくなり、退院までの期間も長くなります。それならば、腹腔鏡手術を受けたいと思うかもしれませんが、話はそこまで単純ではありません。
そこで今回は、大腸がんの手術療法について2者の違い、手術後の生活の注意点についてまとめました。
開腹手術と腹腔鏡手術、治療成績が良いのはどっち?
実は、開腹手術と腹腔鏡手術において治療後の5年生存率には有意な差がありません。つまり、どちらも同じような成績だったという報告があります。
それならば傷口が小さくて、早く退院できる腹腔鏡手術の方が良いと思われると思います。
ただし、実際は、人によっては腹腔鏡手術よりも開腹手術の方が適しているというケースもあります。手術というのは技術でもあるため、どちらが得意不得意というのは医師や病院にもよります。
腹腔鏡手術のデメリットは?
そこで考えなくてはならないのが、この腹腔鏡手術のデメリットについてです。
デメリットは
- 視野が狭くなりがち。
- 外科医は腹腔鏡を使いこなすためには、ある程度のトレーニングが必要。
- 肥満であったり、がんの場所により(横行結腸や直腸)困難なことがある。
- 手術の既往歴があれば癒着などがあり困難なことがある。
- 手術時間が開腹手術よりも長くなる。
- 医療費が高くなる。
と言ったことが挙げられます。
傷口が小さいからといって、視野が狭くなってがんを取りきれなかったりしては意味がありません。また、施設や医師によっては、腹腔鏡手術ではなく開腹手術のみを施行する場合もあります。
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手術の後の生活で注意することは?術前と何が変わる?
- 排便
- 食事
- 排尿・性機能
- ストーマ
排便はどう変わる?
切除する場所により症状は若干異なります。大腸の中でも上行結腸や横行結腸などより口側に近い大腸を切除した場合は、1回に出る便の量や、回数に変化はほとんどないと言われます。若干回数が増加する程度です。
一方で、肛門に近いところで切除した場合は、1回に出る便の量が減少して、回数が増加するのが一般的です。
食事はどう変わる?
原則として食事の制限はありませんので、食事の内容を変える必要もありません。
大腸を切除すると、栄養の吸収が落ちるのではないかと思われがちですが、その影響はありません。
ただし、手術後早期には繊維の極端に多い食物や刺激物は避けるようにしましょう。
排尿や性機能は?
直腸の周りには自律神経のネットワークが存在します。この神経は、膀胱や尿道、前立腺や膣にも分布していますがんの状態によってはこの神経をやむなく切除することがあります。
その場合、
- 排尿障害
- 尿意が鈍くなる。
- 性機能(勃起・射精)障害
が起こることがあります。
人工肛門(ストーマ)保有することになったら?
ストーマには永久の場合と一時的な場合があります。ストーマの管理(これをストーマケアと言います)を身につけると、もとどおりの生活がほぼでき、術前の職場にも通常復帰することができます。
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最後に
大腸がんの手術療法には開腹手術と腹腔鏡手術の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
また手術後には、術前と生活が変わる点と変わらない点があります。
今回はこれらの点についてまとめました。特にストーマを保有することになったら元の生活に戻れないと考える人もいますが決してそんなことはないということです。