大腸内視鏡治療の特徴としては
- 手術と異なりお腹に傷が残らない。
- 身体への負担が少なく、外来や短い期間の入院で行うことができる。
- 大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、大腸がんの切除によって痛みを感じることはない。
というメリットがあります。
そんなメリットがあるなら、手術よりも是非内視鏡治療を受けたい!
と誰しもが思うはずです。
ただし、注意点として全ての大腸がんが内視鏡治療を受けられるわけではなく、早期のものに限定されます。
そこで今回は大腸がんの内視鏡治療の
- 適応
- 方法
- リスク、合併症
- 受ける際の注意点
- 治療後に追加で手術が必要に成るケース
についてまとめました。
大腸がんの内視鏡治療の適応は?
- がんが粘膜内にとどまっている、あるいは粘膜下層の浅い部分までにとどまっていると予想される場合。
- 無理なく1回で切除できる大きさのもの。
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大腸がんの内視鏡治療の治療方法は?
肛門から大腸内視鏡を挿入して、内視鏡の先端の穴から専用の器具を出してがんを切り取るのが基本となります。
その際に以下の3つの方法があります。
- ポリペクトミー:茎のある形のがんに用いられる。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR):平たい形のがんに用いられる。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):平たい形のがんに用いられる。
ポリペクトミーとは?
茎のある形のがんに対して、
- 内視鏡の先端からスネアという金属製の輪っかをかけて、
- スネアを縮めて
- 高周波の電波をスネアに流して焼き切る。
という方法です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)とは?
平たい形のがんに対して、
- まず生理食塩水などを注射針を用いて腫瘍のある部位の下に注入します。これにより病変部分を持ち上げることができます。
- 続いて病変の周りの盛り上がった部分にスネアをかけます。
- そして高周波の電波を流して焼き切ります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とは?
ここ数年~10年で進歩した治療です。EMRと同じように平たい形のがんに対して
- まず生理食塩水やヒアルロン酸などを注射針を用いて腫瘍のある部位の下に注入します。これにより病変部分を持ち上げることができます。
- そこにナイフ状の電気メスで周りの粘膜をぐるりと切っていきます。
- めくってははがすように病変部分を切り取ります。
この治療が粘膜下層まで一番深くまでがんを取り切ることが可能と言われますが、その分時間がかかります。
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大腸がんの内視鏡治療のリスク・合併症は?
頻度は1%程度ですが、
- 出血
- 穿孔(大腸に穴が開いてしまうこと)
が起こることがあります。
合併症が起こった場合は、穿孔部位や出血部位を止めるために、手術が必要になったり、入院が長くなることもあるので注意が必要です。
大腸がんの内視鏡治療を受ける場合の注意点は?
- 受ける前の注意点
- 受けた後の注意点
に分けて説明しますね。
受ける前の注意点は?
- 事前に常用薬を主治医に伝えるようにしてください。
特に抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している場合は、出血のリスクが高くなりますので、内視鏡前に薬の調節が必要になります。内視鏡治療の日程を決める際にお薬手帳を持参するのがベストです。
治療後の注意点は?
- 1〜2週間は出血の可能性などもあるため、海外出張や旅行は控えてください。
- また約1週間激しい運動は避けるようにしてください。
内視鏡治療後に手術が必要にある場合は?
以下の3つの場合には、内視鏡治療を受けた後にも追加で手術治療が必要となります。
- がんを切除した切り口(断端)にがんが露出している場合。
- がんが粘膜下層の深部まで到達している場合。
- 血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる場合。(その場合、リンパ節転移の可能性が約10%程度存在するため追加手術(腸管切除+リンパ節郭清)が必要。)
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最後に
年々増加の一途をたどる大腸がんですが、早期で見つけられれば治癒の可能性がより高くなります。
早期で発見された場合の治療は内視鏡治療です。
今回はこの内視鏡治療について、適応、方法、合併症やリスク、受ける際の注意点、治療後に手術が必要となるケースについてお話ししました。
繰り返しになりますが、この内視鏡治療を受けられるのはあくまで大腸がんの早期のみです。
また大腸がんは症状が出にくい(大腸がんの自覚症状は? )がんですので、症状が出てからでは進行していることが多く、この内視鏡治療の対象とはなりません。
早期発見には便潜血検査が必要です。
40歳以上方は特にこの大腸がん検診を受けるようにしましょう。