うつ病の治療として、最初に処方された抗うつ薬が効かないとき、次にどうすればよいのでしょうか?他の抗うつ薬に変えることは問題ないのでしょうか?
また、周産期の女性や高齢者などの特殊なうつ病患者への注意点は?
今回は、うつ病についてこの様な疑問を中心にまとめました。
うつ病 最初の抗うつ薬が効かなかったら?
うつ病の治療では、抗うつ薬を使用する場合は新規抗うつ薬から始めるのが原則になっています。この新規抗うつ薬には、SSRI・SNRI・NaSSAの三種類があります。
新規抗うつ薬から使用する理由は、副作用が少ないからです。薬剤は安全性が高いものから使うのが鉄則であり、病気治療のために薬を使用したのに、副作用で別の病気になってしまっては意味がありません。
SSRI
モノアミンのうち特にセロトニンだけを選択的に増やす作用があり、効果と副作用のバランスにも優れ、現在のうつ病治療においての第一選択となっています。
SNRI
セロトニンだけでなくノルアドレナリンも増やし、その作用機序はセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することです。
こちらも効果と副作用のバランスに優れており、SSRIと同じくうつ病治療の第一選択となっています。
NaSSA
これはSSRIやSNRIと違い、再取り込みを阻害するわけではなくセロトニンとノルアドレナリンの分泌を増やすことで抗うつ作用を働かせます。
SSRIやSNRIと作用機序が違うためSSRIやSNRIで効果がなった方でも効く可能性があります。
以上のように、どれも作用機序は似ていますが、全く同じの薬ではありません。そのため、最初の抗うつ薬が効かない場合は、どれか別のタイプの抗うつ薬に変えるのが一般的な方法です。
この「変える」というのは、今まで飲んできた薬をいきなり中断して、新しい薬を開始するのではなく、今まで続けてきた薬を減らしながら、新しい薬を徐々に増やしていくことになります。
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新規抗うつ薬が効かなかったら?
三環系抗うつ薬の使用
この薬には強力な抗うつ作用がある反面、口の渇きや心毒性などの副作用も多く、重篤な副作用が起こることもあります。そのため、現在では安易には処方せず、他の抗うつ剤が効かない場合や難治例に限って使用されています。
オーグメンテーション(増強療法)
治療抵抗性のうつ病に対して気分安定薬を併用することで抗うつ効果が増すことから効力増強療法が用いられます。
- 炭酸リチウムの追加投与により数日から1週間以内に症状の改善がみられる症例もある。
- 甲状腺末→正常範囲でも低値なら使用を検討する。
- 非定型抗精神病薬を少量使用する。
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うつ病の特殊なケースは?
周産期発のうつ病(産後うつ病)
女性は出産に伴ってうつ病になる場合があり、これは、妊娠中に増加していたエストロゲンなどの女性ホルモンが出産と同時に減少するためにホルモンバランスが崩れ、それに加えて子育てのストレスが加わることが原因とされます。
これまで、「産後うつ病」と呼ばれていましたが、産後になるケースもある一方、出産前からうつ状態に陥っている方も多いため「周産期」(出産前後に発症する)のうつ病と呼ばれるようになりました。
- 妊娠初期に抗うつ薬を使用することで、胎児が奇形となる可能性は否定できない。
- 妊娠後期にSSRIを使用すると新生児遷延性肺高血圧症の発症率の増加や離脱症状、新生児適応障害の報告がある。
以上の様にリスクが大きいですので、妊娠中の抗うつ薬の使用は慎重に検討することが重要です。
精神病性うつ病
精神病性うつ病では、以下の様な妄想障害が起こります。
- 貧困妄想→財産がないと確信する妄想
- 罪責妄想→重い罪があると思い込む妄想
- 心気妄想→健康を害したと思い込む妄想
治療法としては、以下の方法があります。
- 抗精神病薬を使用する→20%の効果
- 抗うつ薬を使用する→40%の効果
- 抗精神病薬+抗うつ薬→80%の効果
季節性うつ病
季節性うつ病は、季節の変化に起因する季節性情動障害の一つで、主に、10月から12月頃にかけてうつ症状が現れ、春先の3月頃になると回復するため冬季うつ病」とも呼ばれます。
このうつ病は季節性のもので、精神的に問題があるわけではなく、一般のうつ病とはかなり状況も違い、症状として、食欲増加と睡眠増加があり、治療法として、光療法が用いられます。
高齢者のうつ病
高齢者のうつ病は、しばしば認知症と関連しています。そのため、高齢発症のうつ病は認知症の初期を疑い、逆に認知症ならうつ病を疑う事が大切です。
関連記事)認知症とは?症状は?検査は?
まとめ
- うつ病の治療では、抗うつ剤を使用する場合は新規抗うつ剤から始めるのが原則。
- 新規抗うつ剤には、SSRI・SNRI・NaSSAの三種類がある。
- 最初の抗うつ薬が効かない場合は、どれか別のタイプの抗うつ薬に変える。
- 新規抗うつ薬が効かなかったら、三環系抗うつ薬や増強療法が用いられる。
- うつ病の特殊なケースとして、周産期発のうつ病や精神病性うつ病、季節性うつ病、高齢者のうつ病がある。