「なんとなくいつもより尿の量が少ない気がする・・・」
「今日は全然トイレに行っていないけど大丈夫だろうか・・・」
他人の尿量などチェックしたことがないため、なかなか自分の尿量の異変に気づかない方も多くいます。
尿量が基準よりも少ない場合、乏尿・閉尿・無尿などが考えられます。
しかし、これらの基準・定義はどのくらいなのでしょうか?
そこで今回は、尿量の異常について
- 正常の尿量
- 乏尿
- 閉尿
- 無尿
などを説明したいと思います。
正常な場合の尿量とは?
- 健康な成人の尿量は1日800〜1,500mL
食事や運動量、体質などによって個人差はありますが、このような基準値があります。
摂取量を
- 飲料水として1,000mL
- 食物中の水分として1,000mL
- 代謝水(物質を燃焼する時に出る水)を200mL
とした場合、排泄される量の基準は、
- 尿として1,300mL
- 不感蒸泄(呼吸による息や汗などの水分損失)として800mL
- 大便として100mL
くらいとされています。
尿が少ない原因は?
そもそも尿が作られているのか、作られていないのかに分けることができます。
尿が作られているの出ない場合
尿が膀胱内にあるにもかかわらず、そこから排出できない状態を尿閉と言います。
膀胱から尿を出すには尿道を経る必要がありますが、この部位に狭窄などがあって尿を出せない場合や、排尿を司る神経に異常がある場合があります。
後者を神経因性膀胱といいます。
そもそも尿が作られていない(少ない)場合
尿道に問題ないのに、尿が出ないのは、膀胱にそもそも尿が溜まっていないためです。
つまり、尿が作られていない、あるいはその量が少ないということです。
1日の尿量により乏尿と無尿に分類・定義されます。
- 乏尿:1日の尿量が400ml以下の時
- 無尿:1日の尿量が100ml以下で、膀胱に尿が来ない状態
と定義されます。
閉尿の原因は?
尿閉を起こす原因は以下のような病気の可能性ああります。
- 前立腺肥大
- 前立腺癌
- 前立腺炎
- 尿道狭窄
- 尿道結石・異物
- 尿道外傷
- 子宮筋腫
- 激しい尿道痛
- 神経障害
- 全身衰弱による腹圧の減弱
- 小児の尿閉:夜間の大量水分摂取・神経因性膀胱(二分脊椎症による)・後部尿道弁
このうち、もっとも有名なのは前立腺肥大症です。
乏尿・無尿の原因は?
腎臓での尿生成が低下・上部尿路の閉鎖などが原因として考えられます。
尿を作る腎臓そのものに原因があるのか、それ以前に問題があるのか、それ以降に問題があるのかの3つにさらに分けられます。
- 腎臓そのものに原因がある:腎性無尿
- 腎臓よりも前の段階に原因がある:腎前性無尿
- 腎臓よりも後ろの段階に原因がある:腎後性無尿
ということです。
腎性無尿の原因
腎性とは腎臓そのものに異常があり、尿が作れない、作りにくい状態です。
以下の原因が挙げられます。
- 急性糸球体腎炎
- 膠原病性腎症
- 腎硬化症
- 急性尿細管壊死:腎毒性薬剤、薬剤アレルギーなど。
腎前性無尿の原因
腎前性とは、腎臓よりも前の状態に原因があるということです。
尿を作る腎臓は元気なのに・・・という状態です。
リングの上にさえ立たせてもらえないボクサーのようなものです。
- そもそも尿を作るような血液がない状態:脱水・ショック状態
- 腎への血液の入り口で障壁がある状態:腎動脈閉塞・狭窄
腎後性無尿の原因
腎後性とは、腎は働いて尿を作ったのに、その後の輸送経路に問題があるという状態です。
以下の障壁が腎臓の成果を邪魔することになります。
- 両側尿管結石
- 片腎の尿管結石
- 腎出血による凝血
- 尿路の腫瘍
- 外部からの尿管圧迫
尿が出ない場合の治療は?
尿閉の場合
膀胱までは尿が来ているのにその後の尿道以降に尿を排泄できない状態ですので、膀胱まで管を入れることで尿を出します。
これを導尿といいます。
尿閉なのにそれでも出ないときは、エコーを見ながらお腹の上から針を膀胱へ直接針を刺すこともあります。
これを膀胱穿刺といいます。
膀胱痛などの症状を伴うこともあり、苦痛緩和のために緊急に処置がなされることもあります。
まずは、排尿が必要となり、合併症を予防することが重要です。
- 尿路性器感染症
- 膀胱結石
- 膀胱壁の肥厚
- 膀胱憩室
- 水腎症
- 膀胱尿管逆流症(上部尿路障害)
- 腎後性腎不全
- 尿溢流(膀胱の自然破裂)
尿閉以外の場合
単純に道がふさがっているだけの尿閉と比較して厄介なのが、尿閉以外の場合、無尿や乏尿の場合です。
というのは、原因が大きく3つに分けられ、どれに該当するのかがすぐにわからない場合もあるからです。
腎前性なのか腎性なのか区別ができないときには、尿を促す利尿薬(ラシックス®)を注射して様子を見ることをすることもあります。
尿閉と同じく、道をふさいでしまう腎後性の場合は、尿管にカテーテルを入れたり、超音波ガイド下に腎瘻といって腎臓と皮膚を結ぶルートを作ることもあります。
また最悪な場合、状態がよくなければ腎移植も検討されます。
参考文献:病気がみえる vol.8 腎・泌尿器P44・45
参考文献:最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P18
最後に
今回説明しました、尿が少ない問題とは別に、逆に尿量が多い「多量」というものもあります。
多量の場合は、尿量が1日に2,500mL以上という基準があり、その場合もなんらかの原因が考えられます。
このような尿の問題は、専門科としては泌尿器科です。
頻度としては前立腺肥大による尿閉が多く、導尿で済むこともありますが、そうでない病気が隠れていることもありますので、安易な判断は禁物です。
まずは、1日の自分の尿量はどれくらいなのか?
回数や1回に出る量など、気をつけて観察してみましょう。