
顔の片側が引きつった感じがする・・・「顔面神経麻痺かもしれない」と感じることはありませんか?
顔面神経麻痺を顔面麻痺と呼ぶことも多いと思います。
病名としては認知度が高く、よく耳にすることがある顔面神経麻痺。
しかし、病名は知ってても詳しく知らない人は多いのではないでしょうか?
今回は顔面神経麻痺(英語表記で「Facial palsy」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
をイラストや画像とともに分かりやすくご説明したいと思います。
先に結論
- 顔の片側が急に動かしにくくなる顔面神経麻痺で最も多いのは、原因がはっきりしないBell麻痺(ベル麻痺)です。
- 耳の水ぶくれや耳の痛み・難聴・めまいを伴うときは、帯状疱疹ウイルスによるRamsay Hunt症候群の可能性があります。
- 治療の中心は副腎皮質ステロイドで、発症後できるだけ早く(72時間以内が望ましい)始めます。
- 手足のまひ、ろれつが回らない、激しい頭痛を伴うときは脳卒中の可能性があり、すぐに救急受診が必要です。
- 顔のまひに気づいたら、耳鼻咽喉科・神経内科(脳神経内科)・脳神経外科を早めに受診しましょう。
顔面神経麻痺とは?
顔面神経麻痺とは、脳神経の1つである顔面神経が何らかの原因によって障害された病態の総称です。
顔面神経とは、下のイラストのように文字どおり顔面の中を走行し、顔面筋の運動を支配する神経です。
ですので、この神経が麻痺を起こすと、後で症状のところで詳しくお話ししますが、思うように顔面の筋肉が動かなくなります。

そんな顔面神経麻痺ですが、原因により
- 原因不明な特発性顔面神経麻痺
- 原因が分かってる症候性顔面神経麻痺
とに分けられます。

顔面神経麻痺はどうしてなる?原因は?
- 原因不明な特発性顔面神経麻痺の場合は、Bell麻痺(ベル麻痺)
- 症候性顔面神経麻痺の場合は、Ramsay Hunt症候群(ラムゼイハント)が代表的
に分けられます。

Bell麻痺(ベル麻痺)の原因
このBell麻痺(ベル麻痺)、以前は原因不明とされてきました。
現在は、次のようなことが関わると考えられています。
- 単純ヘルペスウイルス(HSV)などのウイルスの再活性化
- 顔面神経の炎症・むくみ(浮腫)
- 神経の血流障害
HSVは、口唇ヘルペスの原因にもなるヘルペスウイルスで、神経に潜んでいたウイルスが、疲れなどで免疫が落ちたときに再び活動すると考えられています(Kim 2025)。
Ramsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の原因
- 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化
顔面神経の根もとにある膝神経節に潜伏感染していたVZV(水ぼうそう・帯状疱疹のウイルス)が再び活動して起こります。
ただ、帯状疱疹よりも先に顔面神経麻痺が出ることがあり、その場合原因の解明が困難です。
VZVは、疲れやストレスなどで免疫や抵抗力が落ちたときに再び活動しやすくなります。
Ramsay Hunt症候群以外にも、骨折などの外傷、腫瘍、中耳炎、糖尿病などの代謝疾患が顔面神経麻痺の原因となることがあります。
ヘルペスウイルスが脳に感染する病気については、単純ヘルペス脳炎とは?症状・原因・診断・治療法と早期受診の大切さで解説しています。
耳の病気が顔面神経に影響する場合については、外耳道真珠腫の症状は?原因・CT所見・保存的治療と手術をわかりやすく解説で解説しています。
Ramsay Hunt症候群の原因となるウイルスは水ぼうそうと同じです。大人が水ぼうそうにかかったときの症状については、水疱瘡に大人が感染したら?症状・潜伏期間・水痘肺炎と2回目の感染で解説しています。
顔面神経麻痺の症状はどのようなものがある?
顔面神経麻痺は顔の筋肉の片側のみに異変が出て、動かなくなる病気ですが、症状としては以下のようなものがあります。
Bell麻痺(ベル麻痺)の症状

- 眼が閉じれない
- 額のシワを寄せられない
- 口角が片側だけ下がる
- 食べ物やよだれがこぼれる
- 片側の耳の聞こえがおかしい(過敏になる)
- 顔がしびれる
- 顔が痛む
- 味覚の低下
- 涙腺の分泌低下で涙が出ないため眼が乾燥する
片側がピクピクとひくつく症状もこの中にあります。
Ramsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の症状
上記のBell麻痺同様の症状に加え
- 難聴
- 耳鳴り
- めまい
- 眼振
などがあり、耳介や外耳道に痛みを伴う水ぶくれ(帯状疱疹)が現れます。
水ぶくれは口の中やのどの粘膜、顔の皮膚に出ることもあり、麻痺より後から出る場合もあります。
顔面神経麻痺が出たら何科を受診すればいい?
上で述べたように顔面神経は脳神経の1つです。
専門は神経内科、脳神経外科、また耳に症状が出ることがあり、耳鼻咽喉科といった科となります。
これらの科を掲げている病院やクリニックを受診しましょう。
顔面神経麻痺の診断方法は?
見た目からも分かりやすい顔面神経麻痺ですが、Bell麻痺(ベル麻痺)とRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の鑑別は、水痘・帯状疱疹の有無でもあります。
しかし悪性腫瘍などが原因のこともあるため、原因が明らかでない場合や、繰り返す場合等には画像診断も行われます。
症例:32歳男性
(出典:医師国家試験対策102A44)
右顔面麻痺を訴え来院。
右耳痛、難聴、右口角の水漏れや右眼が閉じにくいといった症状を伴い、右耳介に水疱症状ありのためRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群と診断。
症例:78歳女性
左耳の痛みと難聴、耳鳴りや回転性めまいを訴え来院。
(出典:歯科医師国家試験106I72)
口腔内に発疹も確認でき、Ramsay Hunt症候群と診断できます。

顔面神経麻痺の治療法は?手術をすることもある?
薬物療法、ブロック注射、外科的治療という方法があります。
- 副腎皮質ステロイド療法
- 抗ウイルス薬
- ブロック注射
- 手術
- ビタミンB12・ビタミンE
- マッサージ
薬物療法
薬物療法の中心は副腎皮質ステロイドです。日本顔面神経学会のBell麻痺ガイドライン(2023年版)では、標準量の全身(内服)ステロイドが強く推奨されており、抗ウイルス薬を含むその他の治療は、エビデンスが十分でないため弱い推奨とされています。どの治療を選ぶかは重症度をふまえて決めます(Fujiwara 2024)。治療は発症後72時間以内に始めるのが望ましいとされます(Kim 2025)。Ramsay Hunt症候群では、ステロイドに抗ウイルス薬を併用することがあります。
副腎皮質ステロイド療法は、神経浮腫・神経内圧軽減・血流改善などに効果的ですが、糖尿病や感染症などの持病がある方には注意が必要です。
ブロック注射
星状神経節という首奥にある部分に注射をし、麻酔作用により痛みをブロックする方法も治療として行われます。
血流をよくする目的などで行われることがありますが、上記のガイドラインの主な検討項目には含まれておらず、麻痺を改善する効果は確立していません。
外科的治療
顔面神経減圧術は、麻痺が重い場合などに検討されることがありますが、ガイドラインでも弱い推奨で、行うかどうか・時期は専門医が重症度をみて判断します(Fujiwara 2024)。
また、顔面は人の目に最も触れる部なので、日常生活を再び送れるようにするため麻痺が残っている場合には、顔面運動筋の機能を再建としてボツリヌス毒素療法や形成外科的治療が行われます。
ビタミンB12などが補助的に使われることもありますが、効果の根拠は十分ではありません。
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P248.249
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル P320.321
マッサージにより麻痺の出た顔面を回復する治療もありますが、医師の指導下で行う必要があり、悪化してしまうこともあるので注意が必要です。
顔面神経麻痺と同様、顔に現れる病気は他にもありますので、合わせてご覧ください。→三叉神経痛の原因や症状は?MRI画像でわかりやすく解説!
よくある疑問
Q. ストレスで顔面神経麻痺になりますか。
A. 疲れやストレスで免疫が落ちたときに、神経に潜んでいたウイルスが再び活動して麻痺が起こると考えられています。ただし、ストレスが直接の原因だと証明されたわけではありません。
Q. 治りますか。
A. 軽症で早めに治療できれば、後遺症なく回復する人も多くいます。重症の場合や治療が遅れた場合は後遺症が残ることがあり、回復には時間がかかります。
Q. どのくらいの人がなりますか。
A. Bell麻痺は年間10万人あたり20〜30人程度とされています(Kim 2025)。
参考文献(追加):Fujiwara 2024(日本顔面神経学会 Bell麻痺診療ガイドライン2023年版の要約) PubMed
Kim 2025 PubMed
最後に
- 顔面麻痺には、Bell麻痺(ベル麻痺)とRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群とがある
- Bell麻痺とRamsay Hunt症候群との鑑別は、水痘・帯状疱疹の有無
- Bell麻痺は、以前は原因不明とされていたが、HSVなどのウイルスの再活性化が関わると考えられている
- Ramsay Hunt症候群は、帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化が原因
- 顔面の片側麻痺や難聴、耳鳴り、めまいなどの症状がある
- 治療の中心はステロイドで、早め(72時間以内が望ましい)に始める
顔面神経麻痺は早期に治療をすることが大切です。
重症例や治療開始が遅れた場合等、後遺症が残ることもありますが、軽症例で早期に治療ができれば、後遺症なく回復する人も多くいます。
回復には時間がかかりますが、早期に治療を開始するほど回復しやすいとされているので、症状を放置せず耳鼻咽喉科・脳神経外科・形成外科・神経内科のいずれかを受診しましょう。
※ちなみに顔面神経は12個ある脳神経の7番目であり、第Ⅶ神経と呼ばれます。



