顔の片側が引きつった感じがする・・・「顔面神経麻痺かもしれない」と感じることはありませんか?
顔面神経麻痺を顔面麻痺と呼ぶことも多いと思います。
病名としては認知度が高く、よく耳にすることがある顔面神経麻痺。
しかし、病名は知ってても詳しく知らない人は多いのではないでしょうか?
今回は顔面神経麻痺(英語表記で「Facial palsy」)について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
をイラストや画像とともに分かりやすくご説明したいと思います。
顔面神経麻痺とは?
顔面神経麻痺とは、脳神経の1つである顔面神経が何らかの原因によって障害された病態の総称です。
顔面神経とは、下のイラストのように文字どおり顔面の中を走行し、顔面筋の運動を支配する神経です。
ですので、この神経が麻痺を起こすと、後で症状のところで詳しくお話ししますが、思うように顔面の筋肉が動かなくなります。
そんな顔面神経麻痺ですが、原因により
- 原因不明な特発性顔面神経麻痺
- 原因が分かってる症候性顔面神経麻痺
とに分けられます。
顔面神経麻痺はどうしてなる?原因は?
- 原因不明な特発性顔面神経麻痺の場合は、Bell麻痺(ベル麻痺)
- 症候性顔面神経麻痺の場合は、Ramsay Hunt症候群(ラムゼイハント)
と呼ばれます。
Bell麻痺(ベル麻痺)の原因
このBell麻痺(ベル麻痺)、原因不明なことが多いとされてきました。
しかし、最近ではいくつかの原因が考えられるようになりました。
- HSV
- アレルギー
- 寒冷曝露
- 浮腫
HSVウイルスとは、ヘルペスウイルス感染症のことで、よくある口の端に出来たりする口唇ヘルペスを患ったことが原因となることも考えられています。
Ramsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の原因
- VZVが原因
- 外傷
- 腫瘍
- 代謝疾患
膝神経節に潜伏感染していたVZVが原因として多く、VZVウイルスとは水痘、帯状疱疹のことです。
ただ、帯状疱疹よりも先に顔面神経麻痺が出ることがあり、その場合原因の解明が困難です。
VZVウイルス自体が精神的にストレスを感じたり、肉体的ストレスを感じたりといった免疫や抵抗力が落ちた時に起こります。
その他、骨折などの外傷や悪性腫瘍、代謝疾患が原因となることもあります。
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顔面神経麻痺の症状はどのようなものがある?
顔面神経麻痺は顔の筋肉の片側のみに異変が出て、動かなくなる病気ですが、症状としては以下のようなものがあります。
Bell麻痺(ベル麻痺)の症状
- 眼が閉じれない
- 額のシワを寄せられない
- 口角が片側だけ下がる
- 食べ物やよだれがこぼれる
- 片側の耳の聞こえがおかしい(過敏になる)
- 顔がしびれる
- 顔が痛む
- 味覚の低下
- 涙腺の分泌低下で涙が出ないため眼が乾燥する
片側がピクピクとひくつく症状もこの中にあります。
Ramsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の症状
上記のBell麻痺同様の症状に加え
- 難聴
- 耳鳴り
- めまい
- 眼振
などがあり、水痘や帯状疱疹も同時に現れます。
水痘は耳介や外耳道に痛みを伴う水疱として現れ、帯状疱疹は口腔咽頭粘膜や顔の皮膚にも認めることがあります。
顔面神経麻痺が出たら何科を受診すればいい?
上で述べたように顔面神経は脳神経の1つです。
専門は神経内科、脳神経外科、また耳に症状が出ることがあり、耳鼻咽喉科といった科となります。
これらの科を掲げている病院やクリニックを受診しましょう。
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顔面神経麻痺の診断方法は?
見た目からも分かりやすい顔面神経麻痺ですが、Bell麻痺(ベル麻痺)とRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群の鑑別は、水痘・帯状疱疹の有無でもあります。
しかし悪性腫瘍などが原因のこともあるため、原因が明らかでない場合や、繰り返す場合等には画像診断も行われます。
症例:32歳男性
(出典:医師国家試験対策102A44)
右顔面麻痺を訴え来院。
右耳痛、難聴、右口角の水漏れや右眼が閉じにくいといった症状を伴い、右耳介に水疱症状ありのためRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群と診断。
症例:78歳女性
左耳の痛みと難聴、耳鳴りや回転性めまいを訴え来院。
(出典:歯科医師国家試験106I72)
口腔内に発疹も確認でき、Ramsay Hunt症候群と診断できます。
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顔面神経麻痺の治療法は?手術をすることもある?
薬物療法、ブロック注射、外科的治療という方法があります。
- 副賢皮質ステロイド療法
- 抗ウイルス薬
- ブロック注射
- 手術
- ビタミンB12・ビタミンE
- マッサージ
薬物療法
薬物療法として副賢皮質ステロイドや抗ウイルス薬が有効です。
副賢皮質ステロイド療法は、神経浮腫・神経内圧軽減・血流改善などに効果的ですが、糖尿病や感染症などの持病がある方には注意が必要です。
ブロック注射
星状神経節という首奥にある部分に注射をし、麻酔作用により痛みをブロックする方法も治療として行われます。
それにより、痛みをとるだけでなく、血流改善や浮腫や炎症を抑える効果があり、麻痺の改善も促します。
外科的治療
手術となる判断基準は、薬物療法やブロック注射で効果が見られなかった場合、麻痺がひどい場合等、1カ月以内に顔面減圧術が行われます。
また、顔面は人の目に最も触れる部なので、日常生活を再び送れるようにするため麻痺が残っている場合には、顔面運動筋の機能を再建としてボツリヌス毒素療法や形成外科的治療が行われます。
その他、神経再生の効果があるビタミンの投与も効果的で、症状が軽度の場合にはビタミン投与のみで済む場合もあります。
参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P248.249
参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P320.321
マッサージにより麻痺の出た顔面を回復する治療もありますが、医師の指導下で行う必要があり、悪化してしまうこともあるので注意が必要です。
顔面神経麻痺と同様、顔に現れる病気は他にもありますので、合わせてご覧ください。→三叉神経痛の原因や症状は?MRI画像でわかりやすく解説!
最後に
- 顔面麻痺には、Bell麻痺(ベル麻痺)とRamsay Hunt(ラムゼイハント)症候群とがある
- Bell麻痺とRamsay Hunt症候群との鑑別は、水痘・帯状疱疹の有無
- Bell麻痺は、原因不明とされていたが、HSVウイルスが原因であることが分かってきた
- Ramsay Hunt症候群は、VZV、外傷、腫瘍などが原因となる
- 顔面の片側麻痺や難聴、耳鳴り、めまいなどの症状がある
- 薬物療法、ブロック注射、外科的治療という方法がある
顔面神経麻痺は早期に治療をすることが大切です。
重症例や治療開始が遅れた場合等、後遺症が残ることもありますが、軽症例で早期に治療ができれば完全回復もします。
完全回復には時間がかかりますが、早期に治療を開始すればそれだけ完治も早いので、症状を放置せず耳鼻咽喉科・脳神経外科・形成外科・神経内科のいずれかを受診しましょう。
※ちなみに顔面神経は12個ある脳神経の7番目であり、第Ⅶ神経と呼ばれます。