自分の身体をチェックし、安心を得るための人間ドック。

しかし、元々持病がある方は、心配も多いと思います。

そんな心配の中で、当日の薬服用。

飲んでしまったがために、検査に影響してもいけませんもんね。

そこで今回は、人間ドック当日の薬服用について

  • 基本方針
  • 影響を受けやすい検査
  • 注意すべき薬

などを、わかりやすく解説したいと思います。


人間ドック前の当日朝の常用薬、服用はどうしたらいい?

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持病などの治療中で薬の服用をしている場合は、前もってかかりつけの担当医に

「人間ドックを予定しているので、当日の薬服用はどうしたらいいですか?」

と、質問しておくのがよいでしょう。

しかし、もし聞けなかった場合どうすればいいでしょうか。

基本的に早朝から人間ドックを行うことは少ないため、当日の朝早い時間に少量の水で服用すれば、その数時間後に行われる検査への影響は少ないものです。

少量の水というには、訳があるんですか?

それは、通常検査前には絶飲食となるためです。

そのため、影響を少なくさせるために、少量の水(80mlほどで)を条件とします。

早朝というのは、だいたい何時くらいまでがよいのでしょう?

朝6時までがよいでしょう。

人間ドックが朝一番の8時に始まるとしても、2時間は経過していることになるため、検査への影響は少なく(もしくはあっても軽微)済む1)のです。

    では、どんな検査だと影響が出ることもあるのでしょう?

    人間ドック当日の薬服用で影響が出うる検査とは?

    stop medication pre medicalcheckup

    一般的に、薬の内服が検査結果に影響するかもしれないと考えられる検査は以下の通りです。

    • 胃バリウム検査(上部消化管X線検査)
    • 胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)
    • 腹部エコー(超音波)検査

    薬を水で飲むとまず胃に溜まりますので、胃バリウム検査、胃カメラ検査の際にそれらが残っている可能性があります。

    ただしそれが診断に影響する可能性は低いと考えられます。

    また、腹部エコーでは、薬の内服により胆嚢が収縮して見えにくくなることも考えられますが、これも早朝内服することでその影響はほぼないと考えられます。

    つまり、いずれも早朝に少量の水で内服することにより、ほぼ検査に影響はないと考えられます。

    では、薬の種類で問題となることもあるのでしょうか?

    人間ドック前、注意すべき薬の種類は?

    薬の服用を一回休むことでリスクが懸念される薬剤として

    • 抗血栓薬
    • 降圧薬
    • 抗不整脈薬
    • 抗てんかん薬
    • ステロイド
    • 免疫抑制薬
    • 抗がん薬

    など1)があります。

    これらは、服用を休止するとどうという明確な基準はないため、やはり担当医に事前に確認するべきです。

    また、とくに注意をする必要がある薬剤として、

    • 糖尿病治療薬
    • 抗血栓薬

    があります。

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    詳しく説明しますね。

    糖尿病治療薬

    検査前に糖尿病治療薬を内服することにより2つのリスクが考えられます。

    • 血糖値が下がってしまい低血糖になるリスク
    • 乳酸アシドーシスを起こすリスク
    低血糖になるリスク

    人間ドック当日朝は食事を摂らないため、血糖値を下げる薬の服用やインスリン注射によって血糖値が下がる(低血糖の)リスクがあります。

    これはその人の糖尿病重症度によっても異なるため、一概には言えません。

    とくにインスリン注射については、休止することで血糖への大きな変動(高血糖になってしまうリスク)が予想されます。

    事前にかかりつけ医(担当医)に確認しましょう。

    かかりつけ医(担当医)に確認できない場合は、検査を受ける施設に問い合わせましょう。

    基本的に、(インスリンではなく)内服薬に限っては、朝の分を休止するだけだと大きな影響はないと考えられます。

    ただし、造影CTを撮影する場合は、あらかじめ休薬しなければならない内服薬があります。

    乳酸アシドーシスを起こすリスク

    それがビグアナイド系の内服薬(経口血糖降下薬)でグリコラン®︎、メルビン®︎などがあります。

    これらの薬剤は乳酸アシドーシスを起こすリスクがあるため、造影剤を用いたCT検査を行う前後48時間(2日)の休薬が望まれます。

    造影剤を用いないCTでは問題ありません。

    人間ドックで造影CTを撮影することは稀ですが、撮影する場合には注意が必要です。

    抗血栓薬

    抗血栓薬とは、血が固まりにくくなる(血栓を作りにくくする)薬であり、いわゆる血液をサラサラにする薬です。

    • 内服することにより、出血した場合に止まりにくいリスク
    • 休薬することにより、血液が固まりやすくなる(血栓ができやすくなる)リスク

    があります。

    この影響を受ける検査が、消化管内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)です。

    これは、日本消化器内視鏡学会からガイドラインが出ています。

    そのガイドラインによると、

    • 観察のみの場合は、休薬不要
    • 生検を行う場合は、アスピリン・アスピリン以外の抗血小板薬・抗凝固薬のいずれか1剤を服用している場合は、休薬不要
    • 生検を行う場合、ワルファリンやNOACを使用している場合・2剤以上を服用している場合は、慎重に対応する

    となっています。

     

    こNOACとは?

    新規経口抗凝固薬(Novel Oral AntiCoagulants; NOAC)のこと。以下の4種類3)がある。

    • ダビガトラン(プラザキサ®)
    • リバーロキサバン(イグザレルト®)
    • アピキサバン(エリキュース®)
    • エドキサバン(リクシアナ®)

    参考文献/サイト
    1)人間ドック健診の実際P33・34
    2)抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン,日本消化器内視鏡学会誌54:2075-2102;2012
    3)
    新規経口抗凝固薬(NOAC)とは-ワルファリンとの比較

    最後に

    人間ドック当日の薬の服用について、ポイントをまとめます。

    • 事前に、かかりつけ病院の担当医に、質問しておくのがベスト!
    • 早朝(6時まで)に少量の水で服用しておくと、問題ない、もしくはあっても軽微
    • 胃バリウム検査や胃カメラで、薬や飲料の影響が出ることがあるがほぼ影響はない
    • 抗血栓薬・降圧薬・抗不整脈薬・抗てんかん薬・ステロイド・免疫抑制薬・抗がん薬は事前に確認を
    • とくに、糖尿病治療薬や抗血栓薬は注意が必要

     

    自己判断で薬を服用したり、休止したりは危険です。

    事前にかかりつけ担当医に問い合わせできたらよいのですが、当日検査前に受診する検査機関でも申告する必要があります。




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