
自分の身体をチェックし、安心を得るための人間ドック。
しかし、元々持病がある方は、心配も多いと思います。
そんな心配の中で、当日の薬服用。
飲んでしまったがために、検査に影響してもいけませんもんね。
そこで今回は、人間ドック当日の薬服用について
- 基本方針
- 影響を受けやすい検査
- 注意すべき薬
などを、わかりやすく解説したいと思います。
- 薬を飲むか休むかは、主治医と受診する施設の指示に従うのが基本です(自己判断で飲んだり、やめたりしません)。
- 飲む場合は、施設の案内に沿って朝早い時間に少量の水で飲むと、検査への影響は少ないとされています。
- 特に確認が必要なのは糖尿病の薬(インスリンを含む)と血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)です。
- 造影CTを受ける場合は、飲んでいる糖尿病の薬によって事前の休薬が必要になることがあります。
- 服用中の薬は、当日の受付や問診で忘れずに申告します。
人間ドック前の当日朝の常用薬、服用はどうしたらいい?

持病などの治療中で薬の服用をしている場合は、前もってかかりつけの担当医に
「人間ドックを予定しているので、当日の薬服用はどうしたらいいですか?」
と、質問しておくのがよいでしょう。
しかし、もし聞けなかった場合どうすればいいでしょうか。
基本的に早朝から人間ドックを行うことは少ないため、当日の朝早い時間に少量の水で服用すれば、その数時間後に行われる検査への影響は少ないものです。
それは、通常検査前には絶飲食となるためです。
そのため、影響を少なくさせるために、少量の水(量は施設の案内に従います)を条件とします。
施設から案内された時刻までに飲むのが基本です(時刻や水の量は施設により異なります)。
検査が始まるまでに時間をあけておくことで、検査への影響は少なく(もしくはあっても軽微)済む1)と考えられています。

人間ドック当日の薬服用で影響が出うる検査とは?

一般的に、薬の内服が検査結果に影響するかもしれないと考えられる検査は以下の通りです。
- 胃バリウム検査(上部消化管X線検査)
- 胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)
- 腹部エコー(超音波)検査
薬を水で飲むとまず胃に溜まりますので、胃バリウム検査、胃カメラ検査の際にそれらが残っている可能性があります。
ただしそれが診断に影響する可能性は低いと考えられます。
また、腹部エコーでは、薬の内服により胆嚢が収縮して見えにくくなることも考えられますが、これも早朝内服することでその影響はほぼないと考えられます。
つまり、いずれも早朝に少量の水で内服することにより、ほぼ検査に影響はないと考えられます。
腹部エコーの前の水分のとり方は、腹部エコー前は絶食が必要?水やお茶はいつまで飲める?で部位別に解説しています。
人間ドック前、注意すべき薬の種類は?
薬の服用を一回休むことでリスクが懸念される薬剤として
- 抗血栓薬
- 降圧薬
- 抗不整脈薬
- 抗てんかん薬
- ステロイド
- 免疫抑制薬
- 抗がん薬
など1)があります。
これらは、服用を休止するとどうという明確な基準はないため、やはり担当医に事前に確認するのが安心です。
また、とくに注意をする必要がある薬剤として、
- 糖尿病治療薬
- 抗血栓薬
があります。

糖尿病治療薬
検査前に糖尿病治療薬を内服することにより2つのリスクが考えられます。
- 血糖値が下がってしまい低血糖になるリスク
- 乳酸アシドーシスを起こすリスク
低血糖になるリスク
人間ドック当日朝は食事を摂らないため、血糖値を下げる薬の服用やインスリン注射によって血糖値が下がる(低血糖の)リスクがあります。
これはその人の糖尿病重症度によっても異なるため、一概には言えません。
とくにインスリン注射については、休止することで血糖への大きな変動(高血糖になってしまうリスク)が予想されます。
事前にかかりつけ医(担当医)に確認しましょう。
かかりつけ医(担当医)に確認できない場合は、検査を受ける施設に問い合わせましょう。
基本的に、(インスリンではなく)内服薬に限っては、朝の分を休止するだけだと大きな影響はないと考えられます。
ただし、造影CTを撮影する場合は、あらかじめ休薬しなければならない内服薬があります。
乳酸アシドーシスを起こすリスク
それがビグアナイド系の内服薬(経口血糖降下薬)でグリコラン®︎、メルビン®︎などがあります。
これらの薬剤は乳酸アシドーシスを起こすリスクがあるため、造影剤を用いたCT検査では前後の休薬を求められることがあります。休薬するかどうか、いつからいつまでかは、薬の種類・腎機能・施設の方針で異なりますので、主治医・施設の指示に従ってください。
造影剤を用いないCTでは、この心配はありません。
人間ドックで造影CTを撮影することは多くありませんが、撮影する場合には事前の確認が必要です。
抗血栓薬
抗血栓薬とは、血が固まりにくくなる(血栓を作りにくくする)薬であり、いわゆる血液をサラサラにする薬です。
- 内服することにより、出血した場合に止まりにくいリスク
- 休薬することにより、血液が固まりやすくなる(血栓ができやすくなる)リスク
があります。
この影響を受ける検査が、消化管内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)です。
そのガイドライン(2012年版)によると、
- 観察のみの場合は、休薬不要
- 生検を行う場合は、アスピリン・アスピリン以外の抗血小板薬・抗凝固薬のいずれか1剤を服用している場合は、休薬不要
- 生検を行う場合、ワルファリンやNOACを使用している場合・2剤以上を服用している場合は、慎重に対応する
となっています。
なお、このガイドラインには2017年に直接経口抗凝固薬(DOAC)を含む抗凝固薬の追補が出ており4)、実際の対応は検査の内容や薬の種類、病気の状態で変わります。人間ドックでも自己判断で変えず、主治医と施設に確認してください。
新規経口抗凝固薬(Novel Oral AntiCoagulants; NOAC)のこと(現在は直接経口抗凝固薬=DOACとも呼ばれます)。以下の4種類3)がある。
- ダビガトラン(プラザキサ®)
- リバーロキサバン(イグザレルト®)
- アピキサバン(エリキュース®)
- エドキサバン(リクシアナ®)

薬の飲み合わせや副作用については、薬の副作用、飲み合わせに注意!でも解説しています。
参考文献/サイト:
1)人間ドック健診の実際P33・34
2)抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン,日本消化器内視鏡学会誌54:2075-2102;2012
3)新規経口抗凝固薬(NOAC)とは-ワルファリンとの比較
4)日本消化器内視鏡学会,Dig Endosc 2018(抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン2017年追補・直接経口抗凝固薬を含む抗凝固薬)PubMed
当日、薬で迷ったときの流れ
| 場面 | 基本の対応 |
|---|---|
| 事前に主治医へ聞けた | 指示どおりにする(メモして当日も持参) |
| 聞けなかった | 受診する施設に電話などで問い合わせる |
| 当日になっても分からない | 受付・問診で薬の名前と飲んだ時刻を伝え、検査スタッフの指示に従う |
| 糖尿病の薬を使っている | 低血糖の症状(冷や汗、ふるえ、強い空腹感)が出たらすぐスタッフに伝える |
受付や問診で聞かれる内容は、人間ドックの問診票では何を聞かれる?で紹介しています。
よくある疑問
Q. 薬を飲まずに人間ドックを受けてもいいですか?
自己判断で休むのはおすすめできません。降圧薬や抗てんかん薬など、一回休むだけでもリスクが心配される薬があります(本文参照)。休むかどうかは主治医か施設に確認してください。
Q. 当日、施設には何を伝えればいいですか?
飲んでいる薬の名前(お薬手帳があれば持参)と、当日の服用の有無・時刻です。市販薬やサプリメントも伝えておくと安心です。
Q. ふだん薬を飲んでいなければ心配ありませんか?
定期的に飲んでいる薬がなければ、この記事の内容は基本的に当てはまりません。ただし、検査前の飲食の決まりは施設の案内に従ってください。
気になる症状や持病がある方は、事前に主治医または医療機関へご相談ください。
最後に
人間ドック当日の薬の服用について、ポイントをまとめます。
- 事前に、かかりつけ病院の担当医に、質問しておくのがベスト!
- 施設の案内どおり、早朝に少量の水で服用しておくと、問題ない、もしくはあっても軽微
- 胃バリウム検査や胃カメラで、薬や飲料の影響が出ることがあるがほぼ影響はない
- 抗血栓薬・降圧薬・抗不整脈薬・抗てんかん薬・ステロイド・免疫抑制薬・抗がん薬は事前に確認を
- とくに、糖尿病治療薬や抗血栓薬は注意が必要
自己判断で薬を服用したり、休止したりは危険です。
事前にかかりつけ担当医に問い合わせできたらよいのですが、当日検査前に受診する検査機関でも申告する必要があります。





