脳ドックなど脳のMRI検査で見つかる正常変異の一つに錐体骨尖部の骨髄の左右差があります。
左右差が強い場合は、MRI画像で見ると腫瘤のように見えてしまい、びっくりしてしまいがちです。
もちろんこの部位に腫瘍ができることはあるのですが、放っておいて良い正常変異を腫瘍として手術されたら大変です。
そこで今回は、錐体骨尖部の骨髄の左右差について実際のCT画像、MRI画像を用いながら解説しました。
脳MRIで認める正常変異!錐体尖部骨髄の左右差
頭蓋底を形成する骨の1つに側頭骨があります。
側頭骨の中でも頸動脈管の内側は錐体尖(すいたいせん)や錐体骨尖部(すいたいこつせんぶ)と呼ばれています。
この部位は通常、骨髄を認めますが、30-35%で空気を含む蜂の巣状の構造を認めることがあります。
さらに、約5%でその含気に左右差があると報告されています。
錐体尖部骨髄の左右差のMRI画像所見は?
錐体尖が含気化されている場合、ここに液体が貯留することがあり、この場合MRIのT2強調像で高信号を示します。
また、錐体尖が含気化されていない場合でも、T1強調像での骨髄を示す高信号に左右差を認めることがあります。
この場合、異常所見ではありませんので、
- “leave me alone” lesion(ほっといてくれ。1人にしといてくれ。=手術など治療しないでくれ。という意味)
と呼ばれます。
ただし、稀にこの部位に真珠腫やコレステリン肉芽腫、腫瘍病変などができることもあり、鑑別が問題となることがあります。
この場合は、含気のある蜂の巣状の構造が保たれているかどうかが鑑別に重要です。
蜂の巣状の構造が保たれている場合は正常変異である、錐体尖の含気化ということになります。
症例 30歳代 男性 コレステリン肉芽腫疑いとして他院より紹介
MRIのT1強調像及びT2強調像で左の錐体尖部に高信号を認めています。
一方で右側はこのような高信号は認めていません。
側頭骨CT検査では、右側は蜂巣状の含気を認めていますが、左側は認めておらず骨髄となっています。
骨破壊性病変は認めておらず、骨髄の構造は保たれています。
つまり、左側は骨髄(成人の場合脂肪髄)ですので、T1強調像及びT2強調像で高信号となっていたということです。
右側の錐体尖部の含気化と診断されました。
この症例を動画解説しました。
この症例を実際の画像で見てみる→錐体尖部骨髄の左右差のCT、MRI画像(正常変異)
最後に
錐体骨尖部に認める正常変異についてまとめました。
一見腫瘍のように見えますが、骨髄の左右差や含気化を見ているというものでした。
脳のMRIやCTを撮影するとこのように時に正常変異と呼ばれる構造に出くわすこととがあります。
代表的な正常変異には以下のようなものがあります。
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参考文献)
頭頸部画像診断に必要不可欠な臨床・画像解剖P015
よくわかる脳MRI第3版P38