前頭葉は、脳の前方部分に位置しており、大事な神経が密集した部位です。
ですが顔の上、前方部にあるということは転んだ、ぶつかった・・・などの場合、衝撃を受けやすい場所にもあります。
では、事故や病気などでその前頭葉が障害を受けた場合、どういう症状が起こるのでしょうか?
今回は、前頭葉(英語表記で「Frontal lobe」)について
- 部位の説明
- 機能
- 症状
を詳しくお話ししたいと思います。
前頭葉とは?
前頭葉は、ヒトが人であるために必要な大事な人間性(人間らしさ)を司る部位です。
下のイラストのように、前頭葉は大脳の中心溝よりも前の部分に位置します。
前頭葉は、大きく前頭連合野・高次運動野・一次運動野の3つに分けられます。
さらに前頭連合野に位置するBroca(ブローカ)野・高次運動野に位置する補足運動野・運動前野・前頭眼野に分類されます。
ご覧の通り、この前頭連合野は大脳の30%も占める大きな部位です。
前頭葉の機能は?
前頭連合野
前頭連合野は前頭前野とも呼ばれます。
- 判断
- 思考
- 計画
- 企画
- 創造
- 注意
- 抑制
- コミュニケーション
などの高次脳機能(精神「心理」機能)に関与します。
また、前頭連合野の中でも外側溝にほど近いBroca(ブローカ)野では、発語・書字などの運動性言語に関連します。
高次運動野
運動前野と補足運動野に分けられます。
- 運動前野では・・・視覚野聴覚などからの情報に合わせ、一連の運動を準備する
- 補足運動野では・・・順序正しく体を動かすなど一連の運動をプログラムする
というような働きをします。
一次運動野
運動の実行を指令する働き(こう行動すると決めること)があります。
前頭葉が障害を受けた場合に起こる症状とは?
前頭連合野
高次性機能障害が起こり、以下のような症状が出現します。
- 意欲の低下
- 発動性の低下
- 創造性の低下
- 思考・判断力の低下
- 注意障害
- 脱抑制
- 他人への興味の喪失
- 易怒性
- 人格荒廃
最も、人間らしさを司る部位です。
本人に意識はなくとも、上記のような症状があると、正確な判断が出来ず、人間性を疑われることにもつながります。
また、Broca野が障害されると、運動性失語(Broca野)症状と行って、音の一部を誤った話し方になります。
高次運動野
運動前野が障害されると、熟練した運動の障害(日頃から慣れた高度な運動)が、補足運動野が障害されると、自発的な運動の開始や発語が不能となります。
つまりは、今まで出来ていた運動ができなくなり、自分から率先して行おうという意欲もなくなるのです。
一次運動野
錐体路徴候(上位の運動ニューロン「運動神経線維」障害)といった、痙性麻痺(筋肉がつっぱり動かなくなる)や筋トーヌス亢進(骨格筋の緊張状態)、腱反射亢進(人体の生理的な腱反射の消失)などが現れます。
運動野からの指令が錐体路(運動神経の1つ)を通り、骨格筋に伝わることで、随意運動が実行(意思ある運動を行うこと)されます。
運動野のニューロンは、支配する体の部位ごとに局在しています。
顔面部や手や指といった精緻な運動(読み方は「せいちな運動」意味は「細かな注意が行き届いた運動」)がある部位ほど運動野に占める面積の割合は大きいものです。
体の各部位と運動野や感覚野の対応を示すのに、このような小人(ホムンクルス)が逆立ちしているような図が用いられます。
- 参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P20〜23
- 参考文献:全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P42
また、前頭葉を障害されると起こる上記のような症状を画像診断と合わせ、「前頭葉機能検査」を受けると、障害によってどれくらい機能が低下しているのかが分かります。
最後に
- 前頭葉は大脳の中心溝よりも前の部分
- 前頭連合野・高次運動野・一次運動野の3つに分けられる
- ヒトが人であるために必要な大事な人間性(人間らしさ)を保てるのは、前頭葉の機能があってこそ
- 障害されると、異常行動や異常発言が目立つ、人間らしさを失った人格荒廃といった症状が起こることも
中には、事故で前頭葉に損傷を負い、奇跡的に一命を取り止め、社会復帰出来たものの、別人のように穏やかだった人格が攻撃的になってしまうことも・・・
今まで積み上げてきた信頼を全て失い、社会生活まで送れなくなるほどの後遺症が残るこったなどという症例も報告されています。
悪いことを悪いと判断出来ない、良い方向に物事を計画したり、理解することが出来なくなったなどということが起こり、元々あった習慣的な癖などにまで変化が起きるのです。
こうなると、周りはもう別人格になったようにさえ感じてしまいます。
気遣う声や心配する、そういう周りの声にさえ耳を傾けられなくなり、周りが離れていくという悲しい症例ですね。