GIST(読み方はジスト)とは、消化管間質腫瘍のことで、Gastrointestinal stromal tumorの略です。
実はこの病気、なかなか気付きにくく、この腫瘍があっても症状が出にくく発見が遅れてしまいがちなんです。
GISTと診断されて初めて「この病気はなんだ?」と調べる方の方が多いでしょう。
そこで今回は、GIST(消化管間質腫瘍)について
- 症状
- 診断方法
- 原因
- 治療法
を画像とともに、分かりやすく説明したいと思います。
GISTとは?意味は?
GISTとは、消化管間質腫瘍のことで、正式名称を「Gastrointestinal stromal tumor」といい、GISTはこの頭文字をとった略語です。
胃粘膜より下層に主な病変が存在する腫瘤性病変の総称を、胃粘膜下腫瘍といいます。
GISTは、その胃粘膜下腫瘍の代表です。
GISTは、その中でも消化管に生じる間葉系腫瘍のうち、カハールの介在細胞が由来の腫瘍です。
英語表記で「interstitial cells of Cajal」といい、略語で「ICC」という。
消化管内にあり、平滑筋(消化物を筋収縮により運ぶ役割をする)のペースメーカー細胞として働くもの。
GIST(消化管間質腫瘍)はどんな症状が出る?
50〜60歳代に好発し、基本的には無症状なことが多いです。
ですが、これぞGISTというような代表的な症状ではないものの、他の疾患とも間違えられやすい以下のような症状が出ることもあります。
- 吐き気
- 吐血
- 下血
- 胸の痛み
- 腹痛
- 黒色便
- お腹の張り
- 貧血
十分に色々症状出てるじゃない!って思われるかもしれませんが、このような症状が出る病気は、胃炎・胃癌・潰瘍・虫垂炎・腹膜炎・膵炎・胆石・胆嚢炎などなど・・・
他の病気でもよく現れるものなので、この症状が出たからといっていきなりGISTを疑うことはほとんどありません。
しかも、症状としてはごく軽度なことが多く、まさかGISTが隠れているとは思いもしないというのが現状です。
また、上記のような症状が現れるようになるのは、症状が進んでからであって、初期にはほとんど無症状です。
GIST(消化管間質腫瘍)の診断方法って?
たまたま検診等で、見つかることが多いのが現状です。
GISTは、胃や小腸の粘膜の下の層から発生する腫瘍ですが、中には、大腸や食道にできるものもあります。
消化管の壁にできるから、この名前が付けられたんですが、癌と異なる点は、粘膜からではなくその下の層からという点です。
腫瘍が5cmを越えると悪性腫瘍で肉腫となる可能性が高くなり、再発や転移の可能性もあります。
GISTの臓器別の発生頻度は?
- 胃が60~70%と最多
- 小腸20~ 30%
- 大腸5%
- 食道5%
下血や吐血を伴う場合は、貧血症状にもなるため、血液検査をすることもありますし、腫れを触って腫瘍を確認できることもあります。
50歳代男性 胃の不快感を主訴に来院
出典:医師国家試験100I29
検査や診断の方法は?
まず粘膜下腫瘍が存在することの診断として
- 胃X線検査(胃バリウム検査)
- 内視鏡検査
- CT検査
- MRI検査
- PET検査
などがあります。
50歳代男性 胃GIST術前検査
胃のGISTを疑う所見です。
続いて胃X線検査(胃バリウム検査)です。
こちらでも、胃底部に隆起性病変を認めていることが確認できます。
最後に造影CT検査です。造影CTでは、GISTそのものの描出の他に、リンパ節転移や肝臓への転移の有無などを広くチェックします。
60歳代男性 胃GIST疑いのフォロー
出典:医師国家試験108A43
胃GISTを疑う所見です。
粘膜下に腫瘍があることがわかれば、最終的にGISTと診断するには、組織を採ってきて病理検査を行う必要があります。
特に免疫組織化学染色でKIT(c-kit遺伝子産物)陽性が特徴です。
組織を採ってくる方法としては、
- エコー下やCT下での生検
- 手術による腫瘍の摘出
などにより行われることが一般的です。
GIST(消化管間質腫瘍)の原因は?
発生頻度は?
発症頻度は、人口100万人あたり年間20人といわれています。
男女どちらが多いという差はなく、40歳代以降の中高年に好発し、その中でも特に50~60歳代が最も多く、子供が発症するのは非常に稀です。
原因は?
GISTの原因は定かではなく、突然変異によるもです。
これは事故にでもあうような確率で、生活習慣や喫煙や飲酒、遺伝性のものではなく、偶然で起こるとも言われています。
GIST(消化管間質腫瘍)の治療法は?
まずは、治療法として外科的手術で腫瘍を取り除くことを考えます。
ですが、
- 腫瘍が大きすぎる
- 周囲の臓器をも巻き込んで手術が不可能
- 手術をしても完全に腫瘍を取りきれない
などの場合には、薬物療法として、分子標的薬を使用し治療することになります。
そして、完全に手術で取りきれた場合も、転移や再発はないか?定期的にみていく必要もあります。
- 参考文献:内科診断学 第2版 P853
- 参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P78
- 参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P112~115
最後に
- GISTの症状は他の病気にも似ているため、気づきにくい
- 症状が出てくるのは腫瘍が大きくなって
- 腫瘍の大きさが5cmを超えると悪性の場合もある
- 原因は不明、突然変異によるものと言われている
- 手術で腫瘍を取り除くことが一般的
- 手術で取り残しがあったり、手術不可能な場合には分子標的薬を用いる
癌とは異なり、遺伝も関係ないと言われると、なんで自分が?どうして?と思いつめてしまいがちです。
腫瘍が小さい場合は、経過観察となることもありますが、基本的には手術で取り除くことが第一です。
周りの人間が患者の精神的フォローをすることも大切でしょう。