
消化管は、口から咽頭→喉頭を経たあと、食道→胃→十二指腸→小腸(空腸→回腸)→大腸→直腸を経て肛門へと続きます。
吐血(とけつ)とは、このうち食道、胃、十二指腸の上部消化管と呼ばれるところからの出血を口から吐いた場合を指します。
「血を吐いた」となれば、ただ事ではなく、このまま死ぬのでは???
とホント不安になりますよね。
ストレス溜めないようにすれば、大丈夫ですよね?
そうなんです。
「血を吐いたけど、多分ストレスでしょ。ストレス溜めないようにすれば大丈夫!」
なんて思って放置していたら命取りになることも・・・。
気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
そこで今回は、吐血の原因となる病気についてまとめてみました。
先に結論
- 吐血の原因は、ストレスだけで決めつけられません。胃・十二指腸潰瘍、食道静脈瘤、マロリーワイス症候群、胃がんなどがあります
- 胃・十二指腸潰瘍の原因として、ピロリ菌とロキソニンなどのNSAIDsが重要です(日本消化器病学会 2020)
- 原因の診断は内視鏡検査(胃カメラ)で行います
- 大量の吐血、黒い便、ふらつき・冷や汗・意識がぼんやりする場合は、救急車を呼ぶことも考えます
- 受診する科は、消化器内科(なければ内科)です
吐血の主な原因と特徴
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| 胃・十二指腸潰瘍 | 吐血の原因として多い。ピロリ菌、NSAIDs、ストレスなどが関係する |
| 食道静脈瘤の破裂 | 肝硬変の人に多い。大量に出血し、命に関わることがある |
| マロリーワイス症候群 | お酒の飲み過ぎや嘔吐のあとに起こる。止血していることも多い |
| 逆流性食道炎 | 大量の吐血は少ない。長く続くと貧血の原因になることがある |
| 胃がん | 少量の出血が続き、貧血で気づかれることが多い |
吐血の原因はさまざま!
胃十二指腸潰瘍

ストレスは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のきっかけの一つと言われてきました。
そして、この胃十二指腸潰瘍からの出血が、吐血の原因として多いものの一つです。
しかし、「最近ストレスが多いんだよなあ。だからきっと原因はこれだ」と決めてつけてはいけません。本当に胃十二指腸潰瘍からの出血なのかどうかは、内視鏡検査(胃カメラ)を行わないと診断できないからです。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は何もストレスだけではありません。日本消化器病学会の潰瘍診療ガイドラインでは、ピロリ菌感染による潰瘍とNSAIDs(ロキソニンなどの解熱鎮痛薬)による潰瘍を分けて、治療の進め方が示されています(日本消化器病学会 2020)。ストレス以外に重要な原因が、
- ピロリ菌感染
- ロキソニンを常用
が挙げられます。
ピロリ菌による潰瘍
ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍だけでなく、胃癌の原因にもなります。ピロリ菌感染が確認されたら除菌の治療を受けるようにしましょう。
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NSAIDs潰瘍
また、ロキソニンなどを常用している人の胃十二指腸潰瘍も問題となっています。ロキソニンは薬局でも買えるようになった解熱鎮痛薬で、「よく効く痛み止め」として、乱用されていたり、多用している人がいるのも事実です。
ロキソニンはNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛薬で、痛みを和らげる作用とともに、胃粘膜を荒らす作用もあります。そして、このロキソニンが原因での潰瘍を「NSAIDs潰瘍」と呼びます。
ロキソニンなどのNSAIDsは、腎臓に負担がかかることもあります。長く使う必要がある場合は、医師や薬剤師に相談してください。

食道静脈瘤破裂

命に即関わることがあるのが、この食道静脈瘤の破裂です。食道静脈瘤は主に肝硬変の人にできることが多く、肝硬変は
- B型肝炎ウイルスに感染
- C型肝炎ウイルスに感染
- アルコール性肝障害
の人に多く、該当する人は定期的な肝臓のチェックが必要です。
この食道静脈瘤の破裂が、命に関わる理由としては、出血量が非常に多いからです。じわじわと出るのではなく、一度に大量に出血することがあるため、出血性ショックで命に関わります。
診断は、内視鏡(胃カメラ)で行われ破れた静脈瘤から噴出性出血(血が吹き出る)が見られます。

治療は、多くの場合、緊急内視鏡治療(内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL:endoscopic variceal ligation))が行われます。
マロリーワイス症候群

お酒が原因で吐血といえば、多くはこのマロリーワイス症候群です。
暴飲暴食やアルコール多飲後に、嘔気や嘔吐をするとそれが原因で、食道・胃接合部が裂けてしまい、そこから出血します。
動脈性に大量出血することもあるのが恐ろしいですが、多くは、内視鏡(胃カメラ)検査施行時にはわずかな出血〜止血していることが多いのが特徴です。
アルコール性肝硬変などの既往がない人が、お酒を飲んで大量吐血!といえば、大抵この病気です。
内視鏡検査で、出血が止まっていれば、保存的に加療されることが多いです。
逆流性食道炎
胸焼けで知られる有名な病気です。
通常は胸焼けなど症状を呈するのみで出血の原因とはならないことが多いですが、高齢者では症状がないまま進行して、少量持続性に出血していき、貧血の原因となります。
ただし、一度に大量に吐血することは稀であり、内視鏡治療が必要なことはほんどなく、多くはプロトンポンプ阻害薬などの内服で軽快します。緊急性は比較的低いと言えますね。
胃癌
胃癌も吐血の原因になりますが、多くは、じわじわと持続的に少量出血して、貧血が進行してから気づかれることが多いので、吐血といえば胃癌!というと頻度は下がります。
早期胃癌の場合、胃潰瘍と区別がつかずに、胃潰瘍治癒後に癌と診断されることもあるので注意が必要です。

嘔吐のあとの吐血で疑うマロリーワイス症候群については、マロリーワイス症候群とは?嘔吐後の吐血の症状・原因・治療と受診の目安で解説しています。
空腹時のみぞおちの痛みや黒い便がある十二指腸潰瘍は、十二指腸潰瘍とは?症状・原因・検査・治療を解説|空腹時のみぞおちの痛みと黒い便に注意で解説しています。
肝硬変の人に多い食道静脈瘤については、食道静脈瘤とは?症状や治療について解説!で解説しています。
最後に
吐血は上部消化管からの出血で起こります。原因としては、
- 胃十二指腸潰瘍
・ストレス
・ピロリ菌
・ロキソニンなどNSAIDs - 食道静脈瘤
- マロリーワイス症候群
- 逆流性食道炎
- 胃癌
などが挙げられます。
救急受診の目安とよくある疑問
すぐに救急を考えたほうがよいのは?
- 鮮やかな赤い血や、コーヒーのかすのような黒っぽいものを何度も吐く
- 黒いタール状の便が出る
- ふらつき、冷や汗、動悸、意識がぼんやりする
- 肝硬変や肝臓の病気を指摘されている
上のような場合は、出血量が多い可能性があります。時間を置かず、救急対応のできる医療機関へ連絡してください。
Q. 一度だけで、そのあと吐いていません。受診は不要ですか?
出血が一時的に止まっていることもありますが、原因が残っている可能性があります。症状が落ち着いていても、消化器内科で相談してください。
Q. 吐血と喀血はどう違いますか?
吐血は食道・胃・十二指腸などからの出血で、吐き気を伴って暗赤色や黒っぽい血を吐くことが多く、喀血は肺や気道からの出血で、咳とともに泡の混じった鮮やかな血が出ることが多いとされます。見分けがつかない場合は、そのまま受診して状況を伝えましょう。
Q. 検査はどんなことをしますか?
原因の確認には、内視鏡検査(胃カメラ)が中心になります。出血が続いている場合は、診断と同時に止血の処置を行うこともあります。

参考文献:Kamada T, et al. 日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン2020 J Gastroenterol 2021 PubMed





