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胃もたれや胃痛、食欲不振、吐き気や嘔吐などの症状があらわれる疾患の1つに胃潰瘍があります。

このような症状があらわれる疾患は他にもありますが、よく耳にするメジャーな病気でもあります。

ですが、我慢すればそのうち治ると放置していませんか?

きちんと治療をしないと、重症化し出血性潰瘍となり、多量出血などでショックに至ることもあります。

そこで今回は胃潰瘍(英語で「Gastric ulcer」)について

  • 原因
  • 検査
  • 出血性潰瘍

など、気になるすべてを徹底解説致します。


胃潰瘍とは?

胃粘膜の粘膜筋板を越えて下層にまで損傷が及び、組織が欠損した状態となることを胃潰瘍といいます。

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胃潰瘍になると、以下のような症状があらわれます。

胃潰瘍の症状

  • 胃痛
  • 胃もたれ
  • 悪心
  • 胸焼け
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振

などを繰り返す特徴にあります。

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しかし、初期には無症状のこともあります。

40〜60代に起こりやすく、特に食直後に症状が強くあらわれることがあります。

胃潰瘍の原因は?

  • ストレス
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 刺激物
  • 暴飲暴食
  • ピロリ菌感染
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs「エヌセイド」)

などが原因となり、本来なら胃酸や消化酵素から粘膜を保護している様々な防御因子の働きを阻害し、この防御のバランスが崩れることで起こります。

以前は胃潰瘍といえばストレス病ともいわれていましたが、近年ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬などが関連することが増えています。

特に非ステロイド性抗炎症薬は、消炎鎮痛薬や抗血小板薬として広く使用され、その副作用として胃潰瘍が多くあり、特に高齢者では発生しやすいといわれています。

 

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とは?

解熱・鎮痛・炎症を抑える薬として広く一般的に使用されている薬です。

内服薬タイプと座薬タイプがあり、特に内服薬タイプの方が胃粘膜に刺激を与えやすいといわれています。

元々胃の弱い人は、量を調整したり、空腹時の服用を避けたり、他の薬を選択することも必要です。

 

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胃潰瘍の検査は?

内視鏡検査を行い、胃粘膜の状態を確認します。

また、上部消化管造影によりニッシェ(欠損部へのバリウムの溜まり)やひだ集中像を確認します。

医師
内視鏡所見によって、活動期→治癒期→瘢痕期(はんこんき)とステージ分類されます。

胃潰瘍のステージ

ステージ 内視鏡所見
活動期 A1 doc2-stage1
A2 doc2-stage2
治癒期 H1 doc2-stage3
H2 doc2-stage4
瘢痕期 S1 doc2-5
S2 doc2-6
活動期(Active)

A1・・・周辺に浮腫を認める白苔(はくたい)または黒苔(こくたい)の状態が確認できる。

A2・・・浮腫は軽くなり、白苔で底が覆われた状態が確認できる。

治癒期(Healing)

H1・・・潰瘍が縮小し、潰瘍の辺縁の浮腫は落ち着き、ひだが確認できる。

H2・・・潰瘍はさらに縮小し、辺縁の発赤帯は幅が広くなり、ひだの集中が分かりやすい状態が確認できる。

瘢痕期(Scarring)

S1・・・白苔はなくなり、潰瘍面が赤い再生上皮が確認できる。

S2・・・発赤はなくなり、粘膜にひだの集中のみが確認できる。

症例 60歳代女性 心窩部痛

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造影CTで急性胃炎が疑われ、内視鏡検査をしたところ、潰瘍を胃に2箇所認めました。

症例:62歳男性

心窩部痛を訴え受診。

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(医師国家試験108G67より)

内視鏡検査初見で、上記のような白苔をともなう潰瘍が確認できる。

医師
また、潰瘍の深さによってUI-Ⅰ・UI-Ⅱ・UI-Ⅲ・UI-Ⅳに分けられます。

潰瘍の深さの分類

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UI-Ⅰ

粘膜層のみ欠損した状態。

UI-Ⅱ

粘膜筋板を越えて粘膜下層にまで組織欠損が達した状態。

UI-Ⅲ

固有筋層にまで組織欠損が達した状態。

UI-Ⅳ

固有筋層を断裂し、漿膜下層(しょうまくかそう)または漿膜にまで組織欠損が達した状態。

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胃潰瘍の治療は?どんな薬が使われる?

治療法は、出血をともなう場合と、ともなわない場合で異なります。

医師
まずは、出血をともなわない場合の治療法を説明します。

原因によって治療法が異なります。

非ステロイド性抗炎症薬が原因の場合は、まずは原因となるこの薬の服用を中止します。

ピロリ菌が原因の場合は、ピロリ菌除菌が行われます。

その両方に関連しない場合(それ以外の原因)は、非除菌潰瘍治療薬として、

  • PPI(プロトポンプ阻害薬)
  • H2RA(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)
  • 選択的ムスカン受容体拮抗薬または一部の防御因子増強薬

が選択され、治療後も維持療法としてH2RAや胃粘膜保護薬(スクラルファート)やPPIを用いることになります。

それと同時に、安静や食事療法(禁酒・禁煙)も必要となります。

出血を伴う場合(出血性潰瘍)の治療法は?

医師
続いて、出血を伴う場合の治療についてご説明します。

出血にともないショックなどがあれば輸血が優先されます。

その上で状態が安定するのを待ち、内視鏡治療で出血部位を確認し、止血治療が行われます。

内視鏡的止血術として

  • 止血鉗子
  • クリッピング
  • エタノール局注
  • 高張Na
  • エピネフリン(HSE)局注
  • アルゴンプラズマ凝固法(APC)
  • ヒータープローブ法

などが選択されます。

中には内視鏡治療で止血が行えない場合もあり、その場合には外科的治療が選択されます。

(参考書籍:病気がみえるVol.1消化器・内科診断学 第2版)

最後に

  • 胃粘膜の粘膜筋板を越えて下層にまで損傷が及び、組織が欠損した状態となることを胃潰瘍という
  • ストレス・喫煙・飲酒・刺激物・暴飲暴食・ピロリ菌感染・非ステロイド性抗炎症薬などが原因となる
  • 内視鏡検査や上部消化管造影をおこない検査する
  • 出血をともなわない場合には、原因を解決し、薬による治療が行われる
  • 出血をともなう場合には、ショックがある際は輸血を優先、安定を待って止血する

 

症状から「これは胃潰瘍じゃない?」と自己診断する方が多くいますが、同様の症状をともなう消化管疾患は他にもあるため、自己診断は厳禁です。

特に胃癌や食道癌でも同様の症状が見られることもあるため、気になる症状がある場合、早期に検査をすることをオススメします。




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