糖尿病性腎症とは?尿アルブミンでわかる早期のサインと病期(第1期〜第5期)

糖尿病で通院していて、「尿アルブミンが出ている」「腎症の早期と言われた」と書かれていると、腎臓がもう悪くなっているのか、透析になるのかと不安になる人は多い。

結論からいうと、糖尿病性腎症は、高血糖が続くことで腎臓の細い血管やろ過の仕組みが傷む合併症で、尿アルブミンの量とeGFR(腎臓のろ過の力)で病期が分けられる。尿アルブミンが30mg/gCr以上で「微量アルブミン尿期(第2期)」とされ、この段階で見つけ、治療で尿アルブミンを減らすことが、その後の腎機能の低下を抑えることにつながる。一度低下した腎機能は回復が難しいため、早く見つけることが重要である。

この記事では、糖尿病性腎症とは何か、尿アルブミンの見方、病期、検査、治療と生活の注意点、受診の目安を整理する。

尿アルブミンが45と言われました。すぐに透析になるのでしょうか?

尿アルブミンが30〜299の「微量アルブミン尿」の段階なら、すぐに透析になることはありません。治療の経過で尿アルブミンが減ると、その後の腎機能の低下が抑えられることが報告されています。ただし、測るたびに値が変わるので、複数回測って確かめましょう。
この記事のポイント

  • 糖尿病性腎症は、高血糖による細小血管の合併症で、尿アルブミンの出現と増加のあとに腎機能が低下していくのが典型である。
  • 病期は、尿アルブミン(UACR)とeGFRで決まる。UACR 30〜299が微量アルブミン尿期(第2期)、300以上が顕性アルブミン尿期(第3期)。
  • eGFRが30未満なら、尿アルブミンにかかわらず「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」とされる。
  • 尿アルブミンは測るたびに変わるため、複数回の測定で評価する。

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、長く続く高血糖により、腎臓の細胞や組織が傷み、腎臓の血流にも異常が起きて生じる細小血管の合併症である。典型的には、糸球体(血液をろ過する部分)の障害により、尿にたんぱく(アルブミン)が出はじめ、その増加とともに尿細管の障害が進み、ネフロン(腎臓の働きの単位)の数が減って、少しずつ腎機能が低下していく。一度低下した腎機能の回復は難しいため、腎臓を守るには、早く見つけて早く手を打つことが大切である(日本糖尿病学会 2024)。

近年は、高齢化などに伴い、尿アルブミンが増えないまま腎機能が低下する糖尿病の人も注目されている。そのため、日本糖尿病学会と日本腎臓学会は、典型的な糖尿病性腎症と、アルブミン尿がなくても腎機能が低下する病態の両方を含む概念として、「糖尿病関連腎臓病(DKD:diabetic kidney disease)」という概念を採用し、2023年から日本語訳を定めている(日本糖尿病学会 2024)。

腎臓を気づかい検査結果を見る女性

尿アルブミンと病期(基準値と判定の区分)

現在、尿中アルブミンの測定が、腎症の診断法として確立している。尿中アルブミンは、尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR、mg/gCr)で表し、30〜299 mg/gCrを微量アルブミン尿、300 mg/gCr以上を顕性アルブミン尿とする(日本糖尿病学会 2024)。

糖尿病性腎症の病期は、日本腎臓学会誌に掲載された「糖尿病性腎症病期分類2023」で、次のように分けられている(馬場園ら 2023)。
糖尿病性腎症病期分類2023(尿アルブミンとeGFRによる5つの病期)
この分類では、2014年分類の基準(各病期のUACRとeGFRの値)は変更されず、病期の名前が、CKD重症度分類や国際的な表記に合わせて変更された。旧分類の「腎症前期」は「正常アルブミン尿期」、「早期腎症期」は「微量アルブミン尿期」、「顕性腎症期」は「顕性アルブミン尿期」、「腎不全期」は「GFR高度低下・末期腎不全期」、「透析療法期」は「腎代替療法期」となった(馬場園ら 2023)。

病期の読み方で、特に次の点に注意が必要である(馬場園ら 2023)。

  • 糖尿病性腎症は、第1期から第5期まで順番に進むものとは限らない。
  • 正常アルブミン尿期でも、糖尿病性腎症に特有の組織の変化がみられる場合があり、腎症の存在を否定するものではない。
  • eGFRが60未満(CKDに該当)の場合は、糖尿病性腎症以外の腎臓病が存在することもあるため、ほかのCKDとの区別が必要である。
  • eGFRが30未満の場合は、UACRにかかわらず第4期に分類されるが、正常アルブミン尿・微量アルブミン尿の場合は、とくに糖尿病性腎症以外の腎臓病との区別が必要である。
  • 顕性アルブミン尿の人では、eGFRが60未満から、腎イベント(eGFRの半減、透析導入)が増える。
尿たんぱくが(+)と言われたのと、尿アルブミンは同じものですか?
尿たんぱくの検査は、尿に出ているたんぱく質全体を調べます。尿アルブミンは、そのうちのアルブミンを測る検査で、糖尿病の腎症では、より早い段階の変化をとらえる目的で使われます。健診の尿たんぱくの見方は、別の記事でも説明していますね。

健診での尿たんぱくの見方は、健康診断で尿蛋白が陽性と言われたら?(±)(+)の意味・原因・再検査と受診の目安で解説している。

尿アルブミンの数値がずれる・一時的に変わる場合

尿中アルブミンの排泄量は、採尿の条件によって変動するため、正確に評価するには複数回の測定が必要である。また、糖尿病性腎症以外の慢性腎臓病(CKD)でもアルブミン尿が増えるため、アルブミン尿があるだけで糖尿病性腎症と決めることはできない(日本糖尿病学会 2024)。

微量アルブミン尿が見つかった場合は、「糖尿病性腎症早期診断基準」(糖尿病 2005)にしたがって鑑別診断を行ったうえで、微量アルブミン尿期と診断される(馬場園ら 2023)。

また、血清クレアチニンにもとづくeGFRが低いときは、血清シスタチンCにもとづくeGFRを計算すると、より正確に腎機能を評価できる場合がある(馬場園ら 2023)。eGFRの見方については、健康診断でクレアチニン・eGFRの異常を指摘されたら?基準値・腎臓病の目安・受診の目安をご覧いただきたい。

尿アルブミンが高いときの検査・受診の目安(何科に行くか)

糖尿病で治療を受けている人は、通院している内科・糖尿病内科で、尿アルブミンとeGFRを継続的に調べる。尿中アルブミンの継続的な測定は、腎症の早期診断・早期治療・治療効果の判定に重要とされる(日本糖尿病学会 2024)。

  • 尿アルブミン30〜299(微量アルブミン尿期):血糖・血圧などの管理を見直し、定期的に尿アルブミンとeGFRを確認する。eGFR 60以上でも、微量アルブミン尿の早期発見が重要である(馬場園ら 2023)。
  • 尿アルブミン300以上、またはeGFR 60未満:顕性アルブミン尿の人では、eGFRが60未満から腎イベントが増えるため注意が必要である(馬場園ら 2023)。糖尿病内科・腎臓内科で詳しく評価を受ける。
  • eGFR 30未満:第4期(GFR高度低下・末期腎不全期)にあたり、腎臓内科での評価が必要である。糖尿病性腎症以外の腎臓病との区別も重要である(馬場園ら 2023)。

糖尿病性腎症に対する治療の位置づけ(糖尿病診療ガイドライン2024)

治療と自分でできること

治療の目的は、尿アルブミンを減らし、腎機能の低下を抑えることである。尿アルブミン排泄の減少は、腎機能低下の抑制につながると報告されている(日本糖尿病学会 2024)。

  • 血糖コントロール:合併症予防のためのHbA1cの目標値は7.0%未満とされる。ただし、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性などを考えて個別に設定される(日本糖尿病学会 2024)。HbA1cの見方は健康診断でHbA1cが高いと言われたら?基準値・糖尿病との関係・受診の目安で解説している。
  • 血圧を下げる薬:ACE阻害薬とARB(RAAS阻害薬)は、アルブミン尿のある腎症の進行を抑えるため推奨される(推奨グレードA)。血清カリウム値を定期的に調べる必要がある(日本糖尿病学会 2024)。
  • SGLT2阻害薬:アルブミン尿のある2型糖尿病の人の腎症の進行を抑えるため推奨される(推奨グレードA)(日本糖尿病学会 2024)。
  • たんぱく質の摂取:顕性アルブミン尿期以降で、栄養障害のリスクがない場合に、たんぱく質の摂取制限が有効な可能性があるが、臨床的な根拠は十分ではない(推奨グレードU)(日本糖尿病学会 2024)。自己判断で制限せず、主治医や管理栄養士に相談する。
  • 薬は指示どおりに:薬の種類や量は、腎機能や全身の状態を見て医師が決める。自己判断で飲み方を変えない。

合併症全体の進み方は、糖尿病の合併症が起こる順番は?「しめじ」と「えのき」、放置のリスクと定期検査が参考になる。

よくある疑問

Q1. 正常アルブミン尿期なら、腎臓の心配はいらないか。
正常アルブミン尿期(UACR 30未満)は、糖尿病性腎症の存在を否定するものではない。この時期でも、糖尿病性腎症に特有の組織の変化がみられる場合がある。また、アルブミン尿が増えないまま、eGFRが低下する糖尿病の人もいる(日本糖尿病学会 2024、馬場園ら 2023)。尿アルブミンだけでなく、eGFRも定期的に確認する。

Q2. 尿アルブミンが減れば、病期が戻ることはあるか。
治療の経過で、アルブミン尿が寛解(正常化)または減少すると、その後の腎機能低下の抑制につながることが報告されている(日本糖尿病学会 2024)。ただし、腎機能そのものの回復は難しいとされるため、早い段階での対策が重要である。

Q3. 糖尿病性腎症は、第1期から順番に進むのか。
そうとは限らない。糖尿病性腎症は第1期から第5期まで順番に進行するものとは限らない、と病期分類に明記されている(馬場園ら 2023)。

気になる症状や結果があれば、早めに医療機関に相談してほしい。

まとめ

  • 糖尿病性腎症は、尿アルブミン(UACR)とeGFRで病期が分けられる。UACR 30〜299が第2期、300以上が第3期
  • eGFRが30未満なら、尿アルブミンにかかわらず第4期
  • 尿アルブミンは測るたびに変わるため、複数回測って評価し、eGFRもあわせて確認する
  • HbA1c 7.0%未満を目安にした血糖管理と、アルブミン尿に応じた薬物療法で、腎機能の低下を抑える
尿たんぱくを指摘された人は、健康診断で尿蛋白が陽性と言われたら?(±)(+)の意味・原因・再検査と受診の目安もあわせて読んでほしい。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。検査結果の解釈や治療については、医師に相談してください。

参考文献