腹部エコー検査(腹部超音波検査)で
「腎臓に影があります。」
「腎臓に異常な所見があります。」
と言われると誰だって不安になります。
ですがここで必要以上に不安にならず、落ち着いて次の検査を受けることが重要です。
そんな方の為に、腹部エコーで腎臓に影があると実際どんな病気が考えられるのか、実際のエコーの画像を用いてまとめました。
それでは始めます!
腹部エコーで腎臓は正常の場合どのように見える?
超音波検査(エコー検査)では、強い反射で白く映るものを高エコー、弱い反射でできる黒く映るものを低エコーと言います。
腎の超音波像は実質(皮質と髄質)と腎洞(じんどう)からなっているのですが、腎洞は白っぽく(高エコー)映ります。
正常の腎臓のエコーの画像は次のようになります。
腎臓の中心部である腎洞が白っぽいことがわかりますね。
→【CT画像あり】腎臓の場所を図で解説!腎結石で痛みが出るのはどこ?
腹部エコーで腎臓に影!考えられる病気は?
- 腎盂拡張(じんうかくちょう)
- 腎結石(じんけっせき)
- 腎腫瘤(じんしゅりゅう)
- 腎嚢胞性腫瘤(じんのうほうせいしゅりゅう)
- 腎腫瘍(じんしゅよう)
- 腎血管筋脂肪腫(じんけっかんきんしぼうしゅ)
- 腎石灰化(じんせっかいか)
- 嚢胞性腎疾患(のうほうせいじんしっかん)
- ウィルムス腫瘍(うぃるむすしゅよう)
- 水腎症(すいじんしょう)
では、それぞれについて説明しますね。
腎盂拡張
腎盂拡張とは、腎盂の中に尿がたまって大きくなった状態です。
軽度の場合は、とくに心配はありませんが、中等度から高度な拡張の場合は、尿路結石や腫瘍(尿管がんなど)が原因で閉塞機転になっている可能性があります。1)
症例
腎盂が高度拡張しています。
腎結石
腎結石は腎臓の中にカルシウムが主成分である石ができる疾患です。
腎結石は高エコーで白く映るため、通常は超音波での結石は見つかりにくいのです。
しかし大きな結石の場合は、その影が黒く映ることもあるため、超音波でわかる腎結石は、大きな場合が多くなっています。2)
症例
(左)腎臓に2箇所腎結石を疑う高エコー域を認めています。
この症例のCT画像です。
左の腎臓に腎結石を疑う高吸収域(白い)を認めています。
腎腫瘤(じんしゅりゅう)
腫瘍の可能性が低い結節像(類円形の影)が見られます。
悪性・良性を見分けるための精密検査が必要です。1)
腎腫瘍(じんしゅよう)
腎腫瘍には、良性と悪性があり、超音波で腎腫瘍が疑われた場合、造影CT検査を行います。3)
造影CT(ダイナミック)で診断される悪性の実質性腎腫瘍の大半は、腎細胞癌です。4)
※腎実質とは腎皮膜・腎血管系・尿路系を除いた糸球体・尿細管・間質のことです。
症例
右腎臓から突出する腫瘤を認めています。
手術の結果、腎腫瘍(腎細胞癌)と診断されました。
腎血管筋脂肪腫(AML)
腎血管筋脂肪腫とは、脂肪組織・平滑筋・壁の厚い血管で構成された良性腫瘍です。
無症状で腫瘍が小さい場合は、経過観察を行います。
脇腹の痛みや血尿などの自覚症状があったり、腫瘍が大きい場合は治療が必要です。
結節性硬化症の40〜80%の方が腎血管筋脂肪腫を合併します。
30代の女性に両側性・多発性で発症することが多いのが特徴です。
結節性硬化症以外では50歳以上の女性に多く発症します。5)
症例
腎臓に2cm大の高エコー腫瘤を認めています。
腎血管筋脂肪腫(AML)を疑う所見であり、腎血管筋脂肪腫(AML)としてフォローされています。
腎石灰化
腎石灰化とは、腎実質にカルシウムが沈着した状態です。
ほとんどが良性で、治療の必要がない場合が多くなっています。1)
症例
腎臓に高エコー(白い)である石灰化を認めています。
腎石灰化と診断されました。
嚢胞性腎疾患
- 単純性嚢胞
- 多発性嚢胞腎
- 傍腎盂嚢胞
単純性嚢胞
この中で最もよく起こるのが単純性嚢胞です。
単純性嚢胞は、腎皮質に生じる後天性の嚢胞で、片側の腎臓に1〜数個できることが多くなっています。
この場合は、無症状で治療の必要はありません。6)
症例
黒く抜けているように見えるのが、腎のう胞です。
多発性嚢胞腎(PKD)
多発性嚢胞腎とは、多数の嚢胞が両側の腎臓に生じ、腎機能が低下し、腎不全に至る遺伝性の疾患です。
多発性嚢胞腎には、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体劣勢多発嚢胞腎(ARPKD)があります。
ADPKDは、40歳前後に多く発症するのに対し、ARPKDは胎児から新生児期に発症するのが特徴です。
どちらも遺伝性になります。7)
症例
多発腎のう胞を認めています。
この症例のCT画像です。
両側腎臓は腫大し、多数の腎のう胞を認めていることがわかります。
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の症例です。
傍腎盂嚢胞
傍腎盂嚢胞(ぼうじんうのうほう)は腎盂周囲か腎洞に存在する嚢胞のことです。8)
無症状であることが多く、水腎症と間違えやすいのが特徴です。
正常変異と考えられえています。
症例
腎洞においてのう胞様所見を認めています。
傍腎盂のう胞と診断されました。
腎嚢胞性腫瘤
腎嚢胞の内部に隔壁(かくへき)と呼ばれる仕切りがあったり、石灰化がある場合は腎嚢胞性腫瘤の可能性があります。
隔壁が薄い場合は、定期的に経過観察を受けるだけでよいでしょう。
症例
(左の)腎臓の上極に粗大なのう胞を認めています。
エコーでは隔壁ははっきりしませんが、CTでは隔壁構造を認めています。
腎のう胞性腫瘤としてフォローされています。
ウィルムス腫瘍(Wilms腫瘍)
ウィルムス腫瘍は、小児腎腫瘍の中でももっとも頻度が高い疾患です。
悪性腫瘍ですが、予後は比較的良好であることが多くなっています。4)
水腎症
水腎症とは、腎盂・腎杯が拡張している状態のことです。
尿路結石などによって、尿路通過障害が起こることで、腎盂・腎杯に尿がたまることで生じます。
進行が遅い場合は無症状であることが多く、急性の水腎症の場合は、腰背部痛があります。9)
腹部エコーで所見があった場合はCTなどの精密検査を!
腹部エコーで要精密検査という所見があった場合、怖い病気だったらどうしよう・・・とうろたえてしまうかもしれませんが、異常がない場合も多いです。
もし異常があった場合でも、早期発見・早期治療によって完治することがほとんどです。
超音波検査だけでは、わからないことも多いため、もし異常があった場合には、CTやMRIなどによる精密検査を受けましょう。
その際に腎臓の腫瘍が疑われる場合には、造影剤を用いたダイナミックCT、ダイナミックMRIなどが行われます。
参考
1)日本人間ドック学会HP 腹部超音波
2)腹部エコー入門 p159
3)病気がみえるvol8 腎・泌尿器 p259
4)内科診断学 p1005-1006
5)腎血管筋脂肪腫 p263
6)病気がみえるvol8 腎・泌尿器 p319
7)病気がみえるvol8 腎・泌尿器 p318
8)腹部エコー入門 p155
9)病気がみえるvol8 腎・泌尿器 p243
まとめ
- 腹部エコーで腎臓に影があった場合に考えられる疾患
- 腎盂拡張
- 腎結石
- 腎腫瘤
- 腎嚢胞性腫瘤
- 腎腫瘍
- 腎血管脂肪腫
- 腎石灰化
- 嚢胞性腎疾患
- ウィルムス腫瘍
- 腎嚢胞性腫瘤
- 水腎症
- 腹部エコーで所見があった場合はCT検査などで精密検査を
いかがでしたか?
今回は腎臓の疾患についてのお話しでした。
腹部エコーで要精密検査という所見があった場合、怖い病気だったらどうしよう・・・とうろたえてしまうかもしれませんが、異常がない場合も多くなっています。
もし異常があった場合でも、早期発見・早期治療によって完治することがほとんどです。
超音波検査だけでは、わからないことも多いため、もし異常があった場合には、CTなどによる精密検査を速やかに行って医師の判断を仰ぎましょう。